「またね、!」
「ふふ、気をつけて帰るのよ?」
「うん!!」
おそらく最後のグループだろう、近所の子ども達にお菓子をあげて、嬉しそうな顔をしている彼らを見送る。それからダイニングへと戻ると、テーブルには散乱している同僚からもらったお菓子。相変わらずカラフルなそのお菓子達の1つを取って口の中へと放り込む。甘くて、けれども少しほろ苦さが含まれているそのチョコレートに舌鼓を打ちながら、部屋の中を見回した。
「(さて、ベッドにシーツをひかなくちゃ。)」
まだ帰ってきていない彼も夕食は仲間と食べるだ何だと話していた気がするし、帰ってきてそのまま寝てしまう可能性も考えられたので、自分の夕食を作る前に終わらせてしまおうと寝室へと向かった。
「 うん、こんな感じかな。」
「 、」
真っ白のシーツを被せて、枕を元の位置に戻す。その仕上がり具合に満足していると寝室のドアの方から私の名前を呼ぶ声がした。この家に住んでいるのは私と彼以外いなし、その声を聞き間違えるはずもない。その声がした方へと身体を向けると、そこにはもちろん、私の愛しい人がいて。
「あら、おかえり、きよはっ、」
彼の名前を呼ぼうとしていたのだけれど、それは彼からの急の抱擁の所為で半端に終わってしまった。それから「どうしたの、」なんて唇を震わせようとすれば、その唇をまたもや突然に彼のそれで塞がれてしまって。
「 ん、」
酸素を取り込む隙間さえも与えてくれないような深いそれに、脳内がぼんやりとしていって。気が付けば、彼の後方に見えたドアが見えなくなっていて、代わりに見えたのが天井であったから、ようやく私は今し方整えたばかりのベッドの上へと押し倒されているのだという事を認識した。
「 ちょっと、清春。」
「何ですかァ?」
「何ですか、はこっちの台詞よ。私、まだ夕飯も食べてないって言うのに。」
顔をしかめながら言う私に対して、目の前にある清春の顔にはひどく楽しそうな、聖帝学園に居た時で言えば、悪戯が成功した時のような、そんな笑みが浮かべられていた。「キシシっ!だってェ、今日はオレ様が大活躍する日ダロ?」 啄むようなキスを私に送りながら、そんな言葉を紡ぐ清春に、私はすぐにその言葉にピンときて。
「チームメイトの奴に散々悪戯してやったぜェ!!」
「・・・ほどほどにしないと、後で怒られるわよ。」
そういえば、練習へと出かける時も同じような笑みを浮かべて「今日は楽しい1日になりそうだなァ?」 なんて私に言っていたような気がする。困った様子で清春を見るチームの人達と嬉しそうに笑う清春の姿が容易に思い浮かんできて、そんな言葉を清春にかけながらため息をつく。お菓子をもらったとしても、彼はきっと悪戯をしたんだろう・・・また後日、謝らないといけないな。(というか、確か彼は「Trick or Treat !」という言葉すらも変えていたような気がするけれど)
そんな事を考えながら彼の瞳を見ていれば、「でもォ、」 なんて放った途端に、彼のその瞳の中に、先程までは見られなかった何か別の色が見え始めたのに気付いて。けれど、その色を見るのが初めてという訳でもない私は、もうこの体勢から逃げられない事をすぐに悟ってしまって。
「オレ様の愛しのには、特別コースで悪戯してやるぜェ?」
「モチロン、断るなんて、ンな事させねーけどなァ?」 彼独特の、それから少し妖艶さが加わったようなその笑みを浮かべたまま、そう言葉を放った清春は、どうやら私の返事なんて聞く気がないらしい。そのまま顔を寄せてきた清春は、再度私の唇へと急襲してきて、
「大人しく、受けとっとけよ。」
「たっぷり愛してやっからなァ、?」 なんていつもよりも低い、悔しいけれど私の大好きなその声で、紡いできたその言葉に、私はもう彼の首の後ろへと腕を伸ばすという選択ししか残っていなくて。・・・どうやら、私の夕食は朝食にまで持ち越されるらしい(明日も仕事だっていうのに、もう。)