「 あら?」
ゆるりとドアが開いた音の方へと顔を向けていれば、けれど私の行動は遅かったようで、向けた方向とは別の方向から「 、」 なんて聞き慣れた声が響いてきて。それから私はその声のする方へと再度視線を移動させれば、そこで、ひどく疲れたような表情をしている翼を捉えた。
「・・・あー、翼?」
「何だ、。」
「いや、何だ、じゃなくて。(というかそれは私の台詞だと。)」
会社の手伝いなどで、色々と忙しい翼と学校以外でこうして顔を合わせるのは一週間ぶりくらいだろうか。それにしても、ずいぶんと窶れているように見える。休息をちゃんと取っているのだろうか、と思わせんばかりのその顔を見ながら、私は漸く彼に馬乗りをされている事を理解して。
翼と恋人という関係になって、2日や3日とかそんな短い期間過ごしてきたわけではないから、それなりに彼の事を理解しているつもりである。だから、今のこの状態で、そんな事をする暇があったら、睡眠をとりなさいと言ったところで、この人が退ける訳がないことくらい、重々承知であるけれど、
「疲れているんでしょう。少し眠ったら?」
それでも恋人の身体が心配になる事が消えるはずもないので、彼特有のその色を持った髪をゆるゆると手に絡ませて撫でて、その綺麗な赤い目を見つめながらそう言葉をかければ、彼は私の肩へと顔を埋めてきて、案の定、返ってきた言葉は、
「 それよりも、 お前が足りん。」
短く放たれた、その言葉。けれど彼の今の状況を理解するには十分なそれだった。「 、」承諾を求めるようなその声で私の名前を口にするのだけれど、その震わせた唇はといえば、既に私のそれへと重ねられていて。
「 ふふ、翼ったら。聞いている意味がないと思わない?」
「 1週間、こうしてお前に触れてなかったんだぞ。」
「耐えた俺に、reward 褒美をくれないのか?」 妙に、妖艶に私の耳へと響いてくるその声に、思わず顔を緩めてしまって。額と額が触れ合う距離で、唇が今にも襲撃されそうな、その距離で、「 もう、我慢できんぞ。」 なんて言われてしまえば、(・・・ふふ、全く、)
「あら、1週間我慢してきたのは貴方だけではないと思うけれど?」
「 ふふ、翼。」 自分の腕を彼の首の後ろへと回して、軽く彼の唇へと自らのそれを触れさせて、彼の名前を紡げば、彼の中で何か切れるものがあったのか、何なのか、気が付いた時には彼の唇が、深く、長く、入り込んできていて、
「、」
「ん?なあに、翼?」
「 愛してる、」 間に放たれたそんな言葉に、私はまた笑みを浮かべて。それからまた降ってくるキスを、受け止める。さて、愛おしくて仕方がない貴方に、同じ言葉を返すのはいつになるのかしらね、翼?