「 それでね、その陰から急に、女の人が」
「っ!!!!」
「(・・・何をやっているのかしら、全く。)」
「夏と言ったらかいだんばなしなりー!!」 なんてやたら元気の良い声で楽しそうにそんな言葉を放ったのは八雲であって。そしてその挑発に乗らないなんて、天十郎にそんな器用な事、できる訳もなく。隣に座って私の腕を掴んでいる真奈美さんの反対側には、その話を聞いて健康そうなその肌色を青白くさせて八雲のその話を聞いているのは、「へっ、こ、怖い話なんて、ど、ど、どうってことねぇ!!」なんて啖呵を切ってしまった天十郎がいて。
「(もう、無理ばっかり。)」
「ひっ!」 なんて聞こえないように声をあげたりして、背筋をぴんと伸ばして身体を固めている天十郎に、怖いなら別に聞かなきゃ良いのに、なんて思うのだけれど、それに乗ってしまうのが彼であって。それをまた愛らしいと思ってしまう私も私であって。(「売られた喧嘩は買うってのが、お、男の中の男でぇっ!」なんて震えた声で言う天十郎が、)(ふふ、ちょっと使う場所が違う気がするけれど。)
「 天十郎?」
「っ! な、何でぇ、か。」
それから1時間くらい経っただろうか、部屋に戻ることなくみんなが雑魚寝にすることになったんだけれど、みんなが先程の怪談話を忘れてすっかり寝入っている中、布団の中で寝返りを打っているのは、言わずもがな、彼であって。私が背中をつん、と軽くたたくと過敏に反応した天十郎だったのだけれど、勢いよくこちらを振り返ってそれが私だと分かった瞬間、安堵感ともとれる深い息を吐いて、(ああもう、そんなんだから八雲達にからかわれるのよ。)(私も人の事、言えないけれど。)
「 眠れないの。」
「っ、い、いや別に怖い話を聞いたからだとかじゃ、そんなんじゃなくて、だな!」
「ふふ、違うわ、私が怖くて眠れないの。」
「だから、一緒に寝てくれる?」 隣に布団を敷いていた、私の言葉に妙に慌てて返事をする天十郎の側に寄って笑みを浮かべてそう彼に言葉を紡ぎ出せば、彼は一度、きょとんと目を丸くして驚いた顔をしたけれど、彼から出て来た、その言葉は、
「し、仕方ねぇから、い、一緒に寝てやるっ!!」
「ほらっ、さっさとこっちに来いよっ!!」 そう言って腕を引っ張ってくれる愛しい彼の、その腕の中へと引き込まれた私は、微睡む心地よさの中、「 お、俺様が守ってやっからな、 、」 なんて小さな声で囁かれるその言葉を聞きながら、額に落とされる唇に再度笑みを浮かべて夢の中へと落ちていくのだ。