休日の昼過ぎ、今日もいつもと変わらずバスケの練習をしていて。1日練習のため、12時を少し過ぎた今、休憩をとって昼食をとっているのだが、敦と俺の目の前にいた福井先輩がそんな言葉をぽつりと呟いて。周りの先輩達はそれに納得するように頷いているのだけれど、俺と、そして言われた本人もどうやら何がずるいのか理解できていないらしい。
「・・・何が?」
俺よりも少し大きな弁当を片手に、もう片方に卵焼きを掴んだ箸を口の方へと運びながら、敦は返事をする。・・・まったく、食べながら喋るなと何度も言っているのに。その事を伝えようと口を開こうとするのに、「ん、 の卵焼き、いつ食べても美味いよね。」なんて言われてしまえば、俺は何も言えなくなってしまって。(・・・狙ってやってないって分かってるから、余計に。)
「お前が美味いって言ってるその弁当の事だよ。」
「いつもに作ってもらってんだろ?」 先輩のその言葉に、ようやくずるいと言われた対象がはっきりした、…のだが、何故ずるいのかがよく分からなくて、俺は疑問符を浮かべてしまう。一方で、敦はその意味が分かったのか、何だか嬉しそうな笑みをその顔に浮かべながら、ゆるりと先輩の言葉に頷いた。
「うん、そうだよー。」
「フフ、の作る料理は美味しいもんな。」
「はっ?氷室食ったことあんのっ!?」
「はい、俺は何度か2人のアパートに泊まらせてもらった事があるので。」
「ずりー、俺なんか弁当のおかず食った事あるだけだっつうのに。」
辰也も加わったその会話に、俺はようやく、どうやら俺の料理がその対象になっている事に気が付いて。けれど、そんなに羨ましがられるようなものではないと思うんだが。そんな事を思いながらも、先輩が何だか物欲しげな顔をして俺の弁当へと視線を送っていた気がしたから、「・・・1つ、食べますか?」と言って弁当を差し出せば、「食う!」と即座に頷いて、箸を俺の弁当の方へと持ってきた。
「あー、やっぱ美味い。」
「ありがとうございます、そう言ってもらえると嬉しいです。」
「いつも紫原と自分用に弁当作ってんのか?」
「いつも、ではないですけど、なるべく弁当を作るようにはしているんです。」
「学食とかコンビニにすると、敦は偏ったものしか食べないので。」 好き嫌いはほとんど無いけれど、好きなものを食べて良いと言うと、決まったものしか食べないのだ。お菓子は色々試して買うというのに、食事の事になると、毎日同じでも構わないなんて事になるから、弁当をなるべく作るようにしているのだ。
「の美味い弁当をいつも食べられるとは、羨ましい奴じゃ。」
「・・・何でお前が美味いって知ってんだよ、岡村。」
「ワシがコンビニで買ったパンで済まそうとしていた日にな、ちょうど弁当のおかずを作りすぎたと余分に1つ持ってきていたと鉢合わせたんじゃ。」
「それで、主将に良かったら食べてくれませんかと俺が頼んだんです。あの時は助かりました。」
「ワシも助かったんじゃから、礼なんぞいらんわい。美味かったぞ、あの弁当。」
「・・・ケツアゴリラのくせにずるいアル。」
「・・・ホントだよな。ゴリラのくせに図々しい。」
「だ、誰がゴリラじゃ、お前らっ!!」
話が別の方へと展開していき、会話は賑やかになる中、「んー・・・、」 なんて敦が何かを思い出すような仕草をするから、たぶん、今話題になっている弁当の事を記憶の中で手繰り寄せているのだろう。もぐもぐと、あっという間に最後のご飯を咀嚼して飲み込むと、(・・・よく噛めと何度も言っているのに。)
「作りすぎ・・・あー、室ちんがの弁当を食べたいって言った時の?」
「ああ、あの時の?」
「ああ、その時だ・・・その、つい、勇んで作ってしまったから、」
「、あの時はりきってたもんねー。」
「・・・う、」
そう、敦に言われた通り、主将に渡した弁当は辰也が1度自分にも作ってくれないかと言ってくれた時のものだった。敦以外に弁当を作るのなんて初めてだったから、つい力を入れすぎてしまって、いつもより1人分増やせば良いだけの話だというのに、それよりも多い量を作ってしまったのだ(・・・なんて初歩的な、)
「フフ、あの時の弁当が美味しかったのはそんな理由があったのか。」
「がはりきってる所、俺も見たかったよ。」 なんて恥ずかしいにも程があるミスに、何だか楽しそうに笑みを浮かべてそんな事を言ってくる辰也。そんな彼に、からかうのはよせと口を開こうとすれば、
「えー、違うよ、室ちん。」
何故だか隣にいた敦の方がその言葉に返事をしたものだから、俺はその言葉に顔を緩めることになってしまうのだけれど。
「の料理がまずかった事なんてないよ。いつも美味いし。」
些細な一言に絆される
ありがとう、敦。 どーいたしましてー。お礼はケーキが良い。 ・・・仕方がないな、今日だけだぞ? フフ、はほんとにアツシに甘いな。 ・・・ほんとずるいよなあ、紫原って。
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