「ああ、きっと辰也だろう。もうそんな時間か。」
「ほら敦、神社に行くから着替えて来い。」 訪問を知らせるベルが鳴り、すぐにそのベルを鳴らした人に行き着いた俺は、えー、と炬燵から出たくなさそうに不満げな声でそう言う敦を立ち上がらせて、部屋へ向かわせる。それから、彼が部屋に向かったのをしっかりと見届けた後、すぐに訪問客を出迎えようと玄関へと向かえば、そこにはやはり彼がいて。「いらっしゃい、辰也。」
「ああ、お邪魔します。それと、夜にメールでも言ったけど、明けましておめでとう、。」
「ふふ、明けましておめでとう、辰也。」
「それから、迎えに来てくれてありがとう。」 新年の挨拶をお互いにしながらゆるりと笑う。良かったら、元旦に一緒に神社へ行かないかと誘ったのは俺の方だった。それに快く返事をしてくれた辰也は誘ったのは俺なんだから俺と敦が迎えに行くと言ったのに、「2人の家の方が神社に行くには近いだろ?」と、辰也の家からもさほど距離は変わらないと言うのに、わざわざこうして俺達のアパートまで迎えに来てくれると言ってくれて。
「敦が着替えているから、もう少し待ってくれるか?」
「ああ、もちろん。フフ、アツシはまだ着替えてなかったんだな。」
「すまない、辰也が来る前に着替えさせておけば良かったんだが、」
「いや、構わないさ。待ってる間はこうしてと話せるし、それに、アツシはいつもこうなんだろ?」
「・・・ああ、そうなんだ。冬休みになると、いつもこうで、」
「中学の頃も、寝た時の格好のままで俺の部屋にベランダ伝いに来たこともあってな。」 その格好じゃみっともないし、何より風邪をひくかもしれないのに、だ。それに、冬のベランダは凍る時もあるから滑る可能性もあって危ないと何度言っても聞かなくて。話が少し脱線したかと思いながらも、冬休みの事を思い返すとその事を思い出さずにはいられなくて、つい深く息を吐き出してしまった。
俺といる時は別段問題はないし、敦が良いのならそれで構わないのだけれど、こうして辰也や他の人達がいる前では少しくらいしっかりしてくれても、なんて思ってしまうのは仕方のないことだと思いたい。・・・まあ、それが叶うことはないのだと分かっているのだけれど。
「フフ、そんな事を考えてるを見ると、ますますがアツシの母親に見えてくるよ。」
「・・・自分でもたまにそんな気分になる時がある。」
「 に室ちん、おまたせー。」
「あ、来たか。明けましておめでとう、アツシ。」
「うん、おめでとー。」
そんな事を辰也と話していると、後ろからのんびりとしたその声が俺達の耳に聞こえてきて。そちらの方へと視線を移せば、もちろんそこにはようやく着替えた敦がいるわけだけれど・・・いくらその上にコートを羽織って、マフラーをすると言ったって、少しばかり薄着過ぎやないだろうか。ちゃんと辰也に挨拶を返している敦へとスタンドからとったコートとマフラーを渡しながら声をかける。
「本当にそれだけで大丈夫か?炬燵に入り込んでも寒いと言ってただろう。」
「んー、まあ、寒いのは寒いけど、耐えられなかったからに抱きついて暖まるから良いし。」
「・・・俺はお前の湯たんぽじゃないんだが。」
マフラーをくるっと巻きながらしれっとそんな事を言う敦へと一瞬間を置いてしまいながらもそう返事をしながら、俺もコートへと腕を通す。というか、俺で暖をとるくらいなら、最初からもう少し暖かい格好をしていった方が効率的だと思うんだが・・・そんな事を言ったところで、ある種の頑固さを持っている敦が聞くはずもない事くらい重々承知だったから、最終的には「風邪はひかないようにするんだぞ。」とそんなありきたりな言葉しかかける事しかできなくて。
「けど、風邪ひいても、が看病してくれんじゃん。」
「そんな事を言っているんじゃない。看病はもちろんするが、それで風邪の苦しさが減るわけじゃないだろう?」
「苦しむのは敦自身なんだ。それを考えて、風邪をひくなと言ってるんだぞ。」 程度の軽い風邪ならまだしも、インフルエンザになんかかかったら、さすがのお前でも苦しむだろうからな。 そう言って注意を促しているというのに、その本人は何故だかゆるりと笑みを浮かべていて、そして隣にいた辰也も同じような顔をし始めたものだから、訳が分からず、「・・・何で2人とも笑ってるんだ?」なんて言葉をかければ、
「 俺のこと、心配してくれてんの?」
「?、当たり前だろう?」
「フフ、アツシはにだいぶ甘やかされて育ったんだな。」
「えー、そんなことないし。」
「??」
俺は頭に疑問符を浮かべているが、2人にはどうも通じているものがあるらしい。理解は至っていないが、それでも2人がなにやら楽しそうな事だけは分かるから、それは決して悪いことではないのだろう。自分の頭の中で勝手にそう結論づけて、俺は外出する格好をした目的を果たすために、ぽん、と軽く2人の肩をたたいて、「 ほら、敦も辰也も、そろそろ神社参りにいくぞ。」 と、そう口にしてから、俺は2人へと視線を合わせて、「 それから、」
「今年も1年、よろしく頼む。」
年が明けようと、結局隣にいるのは
うん、よろしくねー、。 ああ、こちらこそよろしくな、。
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