「・・・ベル、鳴らさなくても良いのか?」
が風邪をひいた、という事をスーパーに買い物に来ていた青峰から聞いて、を見舞いに一緒に行くことにした黒子と俺。ようやくの家に着いたのは良いんだが・・・普通に青峰がん家の合い鍵を持っている事にも驚きながらも、こいつらのそれに1つ1つ突っ込んでいったらキリがない事を覚えてしまった俺は、その事はとりあえず脇に置いて、常識の範囲であるその疑問を青峰に投げかけた。・・・そうすれば、
「ああ? あー、良いんだよ。」
「鳴らしたら、が寝てる体起こして玄関に来る事になんだろ。」・・・という、何つうか、そんな気遣いを青峰が、と考えると納得いかねえんだが、そこにの名前が出てくると、・・・ああ、と妙に納得してしまう言葉が返ってきて。
「青峰君、君は君が来る事を知ってないんですか?」
「ああ、言ってねえよ。言っても来るなの一点張りって分かってるしな。」
「ほら、静かに上がれよ。」 そんな言葉を紡いでくる青峰の後に続いて家に上がり、の部屋へと歩いていく。・・・その途中で、まるで自分の家のように、冷却シートやら体温計やらと、やたらと手際よく青峰はそれらを手に持って行く姿を俺の目はしっかりと捉えていた訳だが。
「ー、生きてっかあ?」
の部屋に着くと、ノックも1つせずそんな言葉を掛けながら青峰はの寝ているベッドの側に行って腰を落とした。俺と黒子はと言えば、部屋に入る前に青峰から「寝起きにテツとお前がいる事知ったら起き上がってそのまま相手しかねねえから、ちょっと様子見させろ。」と言われていたから、部屋の外でに気付かれないように様子を見ていて。
「! ・・・だいき、?」
「おー、大輝だ大輝。・・・ったく、やっぱ寝てただけかよ。」
「朝あれだけ飯と薬はとれっつったのに。」 朝に1度来ていたらしい青峰は朝と何一つ変わっていないとその部屋の様子に、すぐにが今日一日寝ていただけだった事を把握したようで。そんな状況に顔を若干しかめつつ、の額に手を乗せながらもう一方の手でに体温計を手渡した。
「・・・あれだけ、うつるから来てはいけないよと言ったのに、」
「へいへい、小言は後からいくらでも聞くっつの。それより、体はどうなんだ?」
「それは、・・・だいぶ、良くなったと思うよ。」
「・・・そんな嘘が俺に通用すると思ってんのか?」
「・・・、そんなに、変わっていない、です。」
額に乗せていた手の代わりに冷却シートを貼りながら、青峰はとそんな会話をする。表面的には、熱が上がっている所為で赤くなっているその顔以外に、苦しそうに見える箇所は俺達からすればないんだが、青峰はが少しだけ躊躇って空けたその間にすかさず言葉を突っ込んで。・・・何つうか、バスケでもそうだけど、の事になっても、ホントこいつは鋭くなるよな。
「・・・ったく。今から飯作ってくっから、ちゃんと食えよ。」
「、すまない、大輝。 俺も、てつだ、」
「あーもう、良いから、お前は寝てろって。」
「見張りを置いてくからな、大人しくしてろよ。」手伝うと言って起き上がろうとするを制してそんな言葉を放ちながら、青峰は俺達の方へと目配せをした。入ってこい、という事だろう、その視線に黒子と俺は一瞬目を合わせて青峰の視線の意味を確認すると、ゆっくりと部屋の中へと入っていく。
「君、こんにちは。大丈夫ですか?」
「おう、。」
「! 、テツヤ、くんに、火神くん?」
「スーパーで青峰君に会って、君が風邪だという事を聞いたのでお見舞いに来ました。」
「俺が飯作ってる間、見張り頼んだぞー。」
「はい、頼まれました。」
黒子と俺がベッドの側に座ったのを確認すると、青峰はゆっくりと立ち上がり、「良いか、茶とか出そうとして体起こそうとすんなよ。」んな事する必要ねえから、病人は病人らしく寝てろ。と、の赤らんだ頬をゆるりと撫でながらそう言うと、の病人食を作りにキッチンへと向かっていった。
「必要なものは青峰君が買っていたので、僕達は飲み物にしました。」
「このテーブルに置きますね。」 が体を起こす前に紡がれた青峰の言葉が効いたのか、黒子と俺が腰を降ろしても、慌てて体を起こす、なんて事もなかったのだが、「ありがとう、」といつもよりも弱々しくなってしまっている声でそう放ったは、本当に申し訳なさそうな顔をしていて、
「・・・すまない、テツヤ君や火神君にも迷惑をかけてしまって。」
「僕達がお見舞いに行きたいと言ったんですから、気にしないでください。ね、火神君?」
「おう。・・・その気遣いっぷりを青峰にも見習って欲しいとは思うけどな。」
「あ、それは僕も思います。」
「 ふふ、 ありがとう、2人とも。」
「2人がいるだけで、辛さも少し和らぐよ。」 なんて力のない笑みを浮かべながら、は俺達の言葉にそんな言葉を返してくる。そんな時、部屋の中に体温計の音が鳴り響いて、がゆっくりとした動作でそれを取り出した。
「何度でしたか?」
「ええと、38度、ちょうど、かな。」
「・・・その言い方から察するに、朝とそれ程変わっていないんですね。」
「 う、」
の言い方にすかさず黒子が言葉を返す。どうやら図星らしい・・・ホント、こいつは自分に関する事になると無頓着になるつうか。との付き合いがそれほど長い訳じゃねえ俺ですらそう思う事が度々あるんだ、黒子や青峰は尚のこと思っているんだろう。・・・その証拠に、
「・・・青峰君が学校を休んで君の看病をしようとした気持ちが分かります。」
「、・・・大輝も、ひどく渋々した様子で学校に向かったよ。」
「本当は風邪がうつったらいけないから、バスケが終わった後も来てはいけないよと言っていたんだけどね。」 だから、2人にもあまり長居はして欲しくないんだ。風邪がうつったりなんかしたら、申し訳ないから。・・・お見舞いにきてくれて嬉しいと思ってしまっている自分もいるんだけれどね。なんて、今辛いのは自分であるはずなのに、そうやって周りの事ばかり気にして、は困ったような笑みを浮かべて。
・・・なんつうか、もっと、 なんて俺が思っていると、黒子がへと子どもに言い聞かせるように言葉を紡ぎ始めて、
「青峰君が風邪をひくなんて、彼が勉強を好きになる事くらいに可能性は低いですが、」
「(・・・確かに。)」
「それでも、もし、青峰君が風邪をひいたら、君はどうします?」
「それは、もちろん看病するよ。」
「青峰君が、風邪がうつるから来るなと言っても、ですか?」
「、そんなの、・・・あ、」
「 ふふ、そういう事です。」
「君がそうやって青峰君の事を思っているように、青峰君も君の事を大切だと思っているんですよ。」 君はあまり自覚していないのかも知れませんが。 柔らかく微笑みながら、黒子は汗ばんでいたの顔を、青峰がサイドテーブルに用意していた濡れタオルで優しく拭いて、それから、 「 だから、」
「こういう時くらい、青峰君に甘えて良いんですよ。」
やる気のない声を出すかも知れませんが、何だかんだ言いながらも、彼は君のためであれば、きっとしてくれるでしょうから。ああ、もちろん、僕達に甘えてくれても良いんですよ?普段から、君は周りにばかり気を遣ってしまって、僕達を頼ってくれませんから。
「けれど君はそう言ったところで、きっと甘えてはくれないんでしょうから、」
こうやって風邪をひいて弱っている時くらい、僕達じゃなくとも、 青峰君を、
「思う存分、こき使っちゃえば良いんです。」
そんな黒子の声に返事をしたのは、俺でも、そして黒子の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべたでもなく、
「・・・おいテツ、全部聞こえてっぞ。」
おかゆを乗せたお盆を持った、という何ともミスマッチな格好でキッチンから戻ってきた青峰だった。
Rallentando
「けど、その通りでしょう?」という黒子の言葉に、もちろん青峰からは否定のそれが返ってくる事はなかった訳だが。
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title by edona / rallentando(ラレンタンド / だんだん緩やかに)(music)
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