黄瀬君のその一言で、何故か僕と火神君まで君の家に泊まらせてもらう事になったようで。何故そんな話になったかと言えば、なんでも今日から2日間、青峰君と君の家族が温泉旅行に行っているらしい。けれど青峰君は当然のことながら温泉よりバスケをとって、そしてその姿を見たい君も温泉を選ばなくて。
「大輝、さつき、お疲れ様。今日も楽しかったかい?」
「あ、君!ふふ、ありがとう。テツ君がいたからとっても楽しかったよ!」
「ふふ、良かったね。大輝は?楽しめたかい?」
「おお。そうだな、ちっとは楽しめたか。」
「黄瀬もいたし、テツと火神のとこもいたからな。」 桐皇と海常、そして誠凛の3校が練習試合をした今日、朝からみっちりと行われたその練習が終わったのは夕方だったのだけれど、2階でその様子を飽きることもなくずっと楽しそうに見ていた君が青峰君と僕たちが体育館から出る時、ちょうど下へと降りてきて彼の隣へと足を運んで。
「それは良かった。テツヤ君達も楽しめたかい?」
「もちろんっスよ!青峰っちも黒子っちも火神っちも強くなってたけど、俺も強くなってたでしょ?」
「ふふ、そうだね。涼太君も2人も強くなってたと思うよ。素人目からだから、あまり参考にはならないと思うけど。」
「そんな事ないっスよ!くんから言われるとやっぱり嬉しいもんっス。」
「ね、黒子っちに火神っち!」 本当に嬉しそうな笑顔で僕達に訊ねた黄瀬君へと僕も微笑んで頷いた。確かに、君はバスケを実際にしたことはないけれど、ずっと青峰君の隣にいて、彼のバスケをする姿をずっと見て、バスケに触れて来た人だから、確実に多少なりともバスケを見る目は養われていると思うし、それにやっぱり友達にそう言われると嬉しいものなのだ。火神君も同じように思っているらしい。声には出さなかったけれど、僕と同じように静かに頷いた。
「ふふ、そう言ってもらえると俺としても嬉しいよ。・・・あ、そうだ、大輝。」
「んあ?何だ・・・ああ、今日の晩飯か?」
「ああ。朝に冷蔵庫を見たら何もなくてね、スーパーに寄っても構わないかい?」
「おー、構わねえぞ。今日は鍋にすっか。」
「鍋ね、了解。」
「??何でと青峰が一緒に晩飯決めてんだ?」
「勝手に決めて良いのかよ?」 2人の会話に疑問を持ったらしい火神君はそんな言葉を口にした。僕や黄瀬君、そして桃井さんは中学の頃から聞いていた会話だったから、当たり前のようにそれを聞いていたけれど、そうか、この会話は普通ではなかったな、なんてずいぶんと2人に影響を受けてしまっている事に気付いて、思わず笑みを浮かべてしまった。
「今日から俺と大輝の家族が一緒に温泉旅行に行っててね、だから居残り組の俺と大輝が一緒に夕ご飯を済ませようって訳だよ。」
「大輝は放っておいたらコンビニで済ませてしまうからね。」大輝のお母さんから直に頼まれてるんだ。しっかり食べさせてくれって。 と、苦笑交じりで答えたのは君の方だった。確かにその理由も1つあるだろう、僕達も中学生の頃にその話を聞いたことがある。だけど、もう1つ、理由があるのを僕は知ってる。母親から頼まれたからと、もし君以外がその事を青峰君に言ったとしても彼は絶対言うことを聞かないだろうし、それに、意識をせずに青峰君は言ったんだろうけど、
「のメシの方がうめえって知ってんのに、コンビニなんて行くかよ。」
「そうだよね、くんの作った料理ってほんと美味しいもん。」
「・・・さつきもちったあから学べよ。」
「な、なによっ!これでも頑張ってるんだって!!」
「 ふふ、ほら、喧嘩しない。でも、ありがとう。そう言ってもらえると、作りがいがあるよ。」
なんて、昔からいつもその言葉を紡いでは、練習試合の帰りにコンビニでご飯を買うという事をほとんどしていなかったのだ。確かに僕も食べさせてもらった事があるけれど、君の作るご飯は美味しい。火神君の作る料理がまさに男が作ったものと表現するなら、君のはその真反対なのだ。繊細というか、食べる度に一切料理を手伝わない青峰君にはもったいないなんて失礼な事を思ってしまうくらいに、(まあでも、君に感化されて青峰君も今では手伝うようになったとか、君が嬉しそうに話していたけれど)
「家族で温泉ってことは今日は青峰っちはくんのとこにお泊まりっスか?」
「はあ?メシはともかくとして、何でそこに泊まりって話が出てくんだよ?」
「え?だって、泊まるんっスよね、青峰っち?」
「?当たり前だろ。つうか、何でわざわざ自分ちに帰るって選択肢が浮かんでくんだよ。」
普通の感覚を持っているのは火神君であるはずなのに、残念ながらその感覚を持っていない人ばかりがここには集まってしまっていて。幸い、桃井さんだけは火神君に同意するように苦笑を浮かべていた。昔からこういう時はそれが当たり前だと言うようにお互いがどちらかの家で一緒に過ごしていた2人は不思議そうな顔をした火神君へと同じような顔を向けていた、のだけれど、
「・・・ああ、いつものあれか。」
「昔っからこうなんだろ?」 どうやら、火神君もこの2人にだんだんと毒されてきたらしい。不可解そうにしていた顔には徐々に呆れの色が浮かんで、深い息と同時にその言葉を紡いだ。理解したと言うよりは理解するのを諦めて、こういうものなんだと無理矢理に納得したような感じだ。すると、今度は黄瀬君が独り言のような声で、
「・・・俺も久しぶりにくんのご飯食べたいなー。」
そして、冒頭の台詞になる訳で。もちろん、その言葉を君が拒むなんて事はなく、その上「それなら2人も一緒にどうかな?賑やかだと俺も楽しい。もちろん、さつきも食べにおいで、送り迎えは俺がするから。」とそんな言葉を僕達にまでかけてくれて。運の良いことに、3校とも明日は珍しい休みとなっていたから、僕たちの答えは、
「今日は買い込まないといけないね、大輝。」
「火神がバカみてえに食うからなー。」
「ふふ、自分の作った料理をたくさん食べてもらえるのは嬉しい事じゃないか。」
「へいへい。 あ、そういえば、」
「何鍋にしようとしてんだ?」 なんてまるで夫婦のような会話をする2人の後ろをゆっくりとついていったのでした。
Leggiero
・・・青峰のやつ、ほんとがいると何かまるくなるよな。 なんて火神君の声が横から聞こえてきて、僕は思わず微笑んでしまった。
01/08,2013 加筆修正
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