「青峰くんとくんってほんと仲良いよね。」


「見かける度に一緒にいるもん。」さつきの隣で友人がぽつりとそう零した。昼休みになり、友人と机を囲んで昼食を楽しんでいれば、廊下を歩いているその2人が目に入ったらしい。言われるままにそちらへと顔を向ければ、いつも通りに笑みを浮かべて青峰に話しかけていると、眠そうに欠伸をしながら相槌を打っている青峰の2人がさつきの視界にも入ってくる。


「うーん、そうだね、確かに仲は良いけど、」


けれど、友人の言葉には曖昧なものでしか返す事ができなかった。仲が良い、という言葉で納まるようなものではない事を、ずっと側で見てきた彼女が一番知っていたからだ。傍若無人な態度で振る舞う青峰、そしてその隣には飽きもせず、怒ることもせず、ただ今のように微笑んでいるがいる。・・・どちらかと言えば、親子のような気がするけれど、


「(親子、もなんか違うような、)」
「2人とも背が高いから、すぐに一緒にいる事が分かるしね。」
「2人を探す時も便利だよね。」


親子、というのも何だか違うように思う。確かにそんな風に思ってしまう一面もある。拗ねる青峰にそれを宥めるの姿なんかを見ると、まさに親子に見えて仕方がないけれど、普段誰に対しても自分勝手に振る舞うくせに、そうすることが当然のように彼の前で見せる、


「そういえば、私、休みの日にも2人が一緒に歩いてるとこ見たよ。」
「へえ、何してたの?」
「それがね、スーパーでちらっと見かけたんだけど、」


くんが袋に全部入れたかと思ったら、それを見てた青峰くんが当たり前のように横から腕を伸ばして袋を持ち上げてさ、そのまま話しながら2人で歩いて行くのを見たの。青峰くんがそんな事すると思わなかったから驚いちゃって。それでさ、そんな2人を見てたらね、なんか、夫婦みたいだなあって思ったんだよね。 

なんて、隣から聞こえてきたその言葉に、すとん、と何かが収まるべき所に収まったような感覚を覚えて、「( ああ、夫婦、か。)」


「 ふふ、そうだね。私もあの2人を見てたら、そう思う時があるよ。」
「あ、やっぱさつきもそう思う?」
「うん、もうね、何十年も連れ添った夫婦みたいな感じ。」
「あはは、一番近くで見てるさつきの言葉だと何か説得力があるなあ。」
「それで、さつきはその夫婦のどっちと付き合ってるの?」
「だ、だから!そんなんじゃないって!」


「幼馴染みなの、幼馴染み!」友人に小突かれながら言われたその一言に慌てて否定する。友人達はもう面白がってそれを訊いてくるけれど、知らない人達には毎回のように間違われてしまう。自分にはもう決まった人がいるというのに! なんて、そんな事を思っていれば、メールの受信を知らせる音が響いた。


「ん? 青峰君からだ。」
「ほら、言ったそばから。」
「違うって!」
「何て書いてあるの?」
「ええとね、・・・「が部活にくる」って。」
「・・・ほんと、いつも一緒だね。」


「見てるこっちが羨ましくなっちゃうよね。」 たった一言のメールであったけれど、友人にまで届くくらいに十分に2人の仲の良さが伝わってくるその一言。さつきにはその一言でどういう経緯でこのメールが来たかも分かってしまうから、顔は苦笑の混じったそれになる。

青峰のバスケをしている姿を見るのが大好きなのに、迷惑になるからと部活には行きたがらない。それを押し切るようにこうしてメールをしたのだろう、もちろん、隣ではがまだ行くのを拒んでいるままで。そうして、を部活に来させるのだ、彼の我が儘で来たのではなくて、自分が無理矢理連れてきたんだという理由を作ってやって。


「(まったく、普段そんなことしないくせに。)」


意識してか、無意識か、他の人達にはたまにしか見せないそれを、そうやって彼にだけ普段から見せるのだ。昔からそうだった。まるでそうする事が当たり前のように何気なくするものだから、側で見ていた少女にとってそれは自分には何か形のないどうあがいても入り込めないものに感じて悔しくもあり、羨ましくもあった。 ・・・けれど、彼らと一緒に長い時間を過ごしていると、その思いは次第に薄れていって、


「 そうだね、羨ましいかもね。」
「・・・さつき、言ってる事と顔が全く一致してない事、分かってる?」


「すごい嬉しそうな顔してるけど。」彼らのそんな姿を見るだけで、顔が緩んでしまうようになったのだ。どんな事があっても変わらないものだってあると彼らが証明してくれているようで。もちろん、高校になってそれは彼らの関係だけではないと他のバスケ好きの友人達が教えてくれたけれど、さつきにとってそれの最たるものは、やっぱり、ずっと近くで見てきた、


「それで、何て送ったの?」
「んー?放課後になったら一緒に部活に来てって。ちょうど、買い出しに行かなきゃいけなかったし。」
「・・・そうやってくんを使えるの、さつきだけだよね。」
「つ、使うってそんな人聞きの悪い。」
「事実でしょ、あんなイケメン捕まえといて。」


「あー良いなあ、これが幼馴染み特権ってやつだよね。」聞き慣れた友人からの言葉。以前なら返すのを言い淀んでいたその言葉を、今は躊躇することなく紡ぐことができる。本人達にはその気がないのは分かっているけれど、たまに呆れるほどの仲を見せつけられて、まったく、なんて思うことがあるけれど、それでも顔に浮かんでくるのは笑みなのだから、「 ふふ、そうだね、」


「2人の幼馴染みで良かったって思うよ。」
Legato
微笑みながらそう言って、半分に割った卵焼きを口へと運んだのだ。


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