「おや、ここの通りに人なんて珍しい。」
その花に見入っていると、奥からゆっくりと出て来たのはここの店主であろうおばさん。「これはね、今日入った花なんだよ。」 俺がどの花を見ているのか分かったのか、その花の説明をしながら別の花を取って花束を作っている。けれど俺はその話を聞きながらも、また最初に見ていた花を視線へと入れて。そのピンクや白といった淡い色の花を見ていると、思い浮かぶのはの顔であって。
「 おばさん、」
「うん、何だい?」
「これ、花束にしてもらえるか?」
「ああ、お安い御用さ。」
白とピンクを基調にしてもらいその様子を側で見ていれば、気付いた時にはもうすでに立派な花束が出来ていて。近道をしているから帰る時間が遅れることはないだろうが、それにしても彼女は喜んでくれるだろうか。(その答えなんて、もう出ているのかも知れないが)
「はい、どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「ふふ、奥さんも喜ぶだろうよ。」
この花を抱えるの姿を想像してまた頬を緩ませる俺に、笑みを浮かべながら完成した花束を渡してくれるおばさん。寄り道をしたと怒られるだろうか、いやは寄り道をしたと言っても仕方のない人だと言って微笑むだろうな、学生の頃からそうだったし。けど寄り道した先に偶然見つけた花屋でに似合う花があったから、なんて言ってこれを差し出したら彼女はどんな顔をするだろうか。
「( 本当に俺は仕方がないな。)」
自分でもそう思ってしまうくらいに帰った時の彼女の反応を思う。それを考えるだけでも俺の心はひどく満たされていって、のことを思うだけでそれは溢れ出してきて。そんなことを考えていたらすぐに彼女の元へ行きたくなってしまったから、魔法を使ってしまおうか、なんて考える。(一刻も早く、の元に、)
「いや、それをしたらが怒るな。」
けれどすぐにその考えは頭から消えて、結局自分の足で帰ることにする。歩いて帰れる距離なのは分かっていたけれど、早くこの花束をに見せたくて、その時のの表情を早く見たくて。 でもその前に、
「(おかえり、って言ってもらうんだ、)」
気付いた時には俺の足は独りでに駆けだしていた。もちろん、先程買った花束は大切に腕に抱え込んで、だが。(早く、に会いたいんだ。)