ふと目が覚める。時計を見ると短針は2の辺りを指していた。寝過ぎたな、 なんて思いながらもぐっすりと寝たおかげでだるさもない。 隣でまだ眠りこけている彼のおかげかもしれない。下手な暖房器具よりもずっと彼の方が温まる。
「ありがと、来てくれて。」
そう言って額にキスをすると心なしかシリウスの顔が綻んだ気がした。その顔に自分のそれを緩めてしまいながら、 今日はいつもより頑張って料理しようかな、何を作ろう?と考えながらシリウスの背中に手を回す。
「クリスマスだし、クリームたっぷりのケーキも作らないとね。」
私も彼も苦手であるクリームたっぷりのケーキなんて冗談交じりでそんな言葉を呟いていると、もぞもぞとシリウスの身体が動いて私の方を向いたかと思うと、ゆるりと背中に手を伸ばされた。
「・・・・甘いのはだけで十分だ。」
「あら、起きていたの?」
「いや、さっき起きた。」
そう言って挨拶代わりに軽くキスをしてきた。今ではこうしてルーティーンのようにしてくれているけど、昔は照れてしてくれなかったなあ、なんて 思いだしてつい笑みを浮かべてしまいながら、私も彼のそれに口を重ねた。(ふふ、あの時もあの時で可愛らしかったけど。)
「いいじゃない?たまには甘ったるい物を食べてみても。」
「だから、だけで十分だって。俺はで満たされてるの。」
頬をすり寄せてきて甘えた声を出す。擦り寄せるだけなら可愛らしいなんて言葉で済むけど、首へとその顔を埋めて唇まで寄せてくるものだから私はすぐに彼の顔を両手で包んでそこから離した。 さすがに昼間からする体力はないから、「今はだめよ。」なんて子供をあやすように彼へと声をかける。
「・・・今からじゃ、だめか?」
彼も子どものように私に聞いてくる。シリウスの方が背が高いのに、まるで見上げられているようだ。そしてこれを無意識にやっているのだから、余計にタチが悪い。
「もちろん、私もシリウスで満たされたいけど、明日、ね?」
キスをして諭すように言う。するとシリウスはキスされたのが嬉しいのか、その言葉が嬉しかったのか、顔に笑みを浮かべながら(それはもう満面の笑みで)首筋に顔を下ろしてキスを1つ落とした。
「分かった、約束な!」
「ええ、約束ね。」
彼と話しているうちにようやく覚醒してきた私はベッドから降りて、バスルームへと向かおうとすると、シリウスに手を掴まれ前につんのめる。
「?何処行くんだよ」
「バスルームよ。こんな格好じゃ夕食の買い物に行けないでしょ?」
彼はコートを着ればそれで整う格好だが、私はと言うとパジャマのままなのでさすがにこれでは外に出られない。 そう言うと彼も立ち上がって「じゃあ、俺も準備するか。」と返してくる。
「?シリウスはコートを着れば良いだけでしょ?」
他に何の準備が?と言うと、彼はキッチンの方へ向かいながら話す。
「朝…じゃないか、昼食の準備。少しでも食っとかないと、夕食までもたねえだろ?」
冷蔵庫を開けて、「お、これがあるなら。」と言って昼食を作り始めた。こうやってシリウスはたまに頼りがいがある所を見せてくれる。なんて素晴らしい恋人なのだろうか。そう思うと、顔がどうしようもないくらいに緩んでしまう。
「そうね、私も着替えて手伝うわ。」
着る服を手にとってバスルームに向かう。シリウスはパンを切りながら「おお、」と返答する。どうやら、昼食はサンドウィッチらしい。
**
昼食を食べ終えて今私達は外に出ている。(昼食は美味しかったな、って褒めたら、思いっきり抱きつかれた。) 辺り一面、緑と赤の装飾が施されていて、ショッピングに来ている人達もクリスマスで浮き足立っている。 子どもが母親の服を引っ張って「これが良い!」とオモチャを指して言っているのを可愛いななんて思いつつ、笑顔で眺めていると、横から服を引っ張られる。そちらを向けば、少し紅潮している彼の顔。「、」
「どうしたの、シリウス?(ここにも大きな子どもが・・・)」
「あの、さ、手繋がねえ?」
そう言って自分の手を差し出してくるシリウス。普段人前でそういうことをしない私に気を遣って今まで言わなかったのだろう、遠慮がちに聞いてきた。手を繋ぐ行為が格別嫌いというわけでもないし、外で繋ぐことも構わないと思っているのだが、普段の私を見ているシリウスには嫌いに見えたのかもしれない。性格的には自分でもサバサバしていると思うし。 もちろん、シリウスとなら外で手を繋ぐくらい何ら支障はない。私だって恋人とは手を繋ぎたいと思うし、今が寒い時期なら尚更だ。
「ふふ、もちろん、喜んで。」
「っ!サンキュ!」
彼の手に自分の手を絡めて彼に笑い返す。「へへっ」と言って照れ笑いをするシリウス。そんな彼を見ていると、 可愛過ぎて抱きつきたい衝動にかられるが何とか自重する。子どものような反応に思わず笑いそうになる。
「さ、買い物行こうぜ!」
嬉しそうにワクワクという擬音がぴったりな声で私の手を引っ張っていく。
さて、夕食は2人で何を作ろうか?