*現代っぽいパラレル設定です。




現在の時刻は午前8時、休暇をもらっていて尚且つ昨夜12時を回ってから帰って来た私なら当然寝ている時間帯だ。 今日は午後まで寝ようと思っていた。最近しばらく休みをもらっていなかったし、起きてから何をしようか、と久しぶりの休みに笑みを浮かべながら夢の中へ入ろうとした。しかしその矢先に嫌な音がした。

ピンポーン

いきなり玄関の呼び鈴が鳴る。額に皺が寄りかける、いやもう寄っているのかも知れない。
こんな時に来る奴なんてロクな奴じゃないな、そう思った私は居留守を使う事にして再び深い眠りへ落ちていった。


**


ー、いるんだろ?」


俺の名前はシリウス・ブラック、ホグワーツの卒業生だ。あん時も楽しかったけど、今も就職して充実した毎日を送っているな。それはもう猫の手も借りたいぐらいに忙しいけど。

そんな俺は今、の家へと足を踏み入れていた。

とはホグワーツからの恋人で、いつも俺達の悪戯に加わって一緒に遊んでたんだ。本当に素晴らしい恋人だと自分でも思う。クールで賢くてやさしい女性で、俺からの愛をすべて、嬉しそうに受け取ってくれて、俺にも溢れんばかりの愛を捧げてくれる俺の(未来の)奥さん。

今日はそんなが休みだって言うからデートをしようと思って来たんだが、肝心のの声が聞こえてこない。


ー?どこにいるんだ?」


ダイニングやキッチンを探したけどやはりそこにはいなかった。はまだ寝ているのだろうか?こんな事なら驚かせようと連絡入れずに来る前に電話でも一本入れれば良かったか、なんて思いながら、 着てきたジャケットをソファに置いて寝室に向かう。


っ!デートしに・・・」


行こうぜ、と、寝室のドアを開けた瞬間、ベッドのところに膨らみが見えたから、俺は瞬時に顔に笑みを浮かべて、声を出しながら入っていった・・・ のは、良いのだけれど、次に俺の目に映ったのは気持ちよさそうに熟睡しているの姿で。


ー。俺だ、シリウスだぞ?」


肩を揺らしても反応がない。疲れてるんだろうな、昨日忙しそうにしてたからなあ。起きているとばかり踏んでいた俺は、 さて、どうするか、なんて考えながらの寝顔を覗き込む。今、起こしたら確実に怒られるから、起こすという選択肢はすぐに捨てる。


「(・・・ああ、そうか。)」


「(一緒に寝れば良いのか。)」 なんて、すぐに出てきたのはそんな答えだった。リビングに行って待っているなんて考えもその後に出てきたが、前者の方が良いに決まっている。 だって、カルラの隣で、カルラの体温を感じて時間を共に過ごせるんだから。

「お邪魔するぞ?」なんて本人は聞こえてないだろう小さな声で言ってを起こさないようにそっとベッドに入り込んで、その背中に手を伸ばした。 ―やっぱり、温かい。


「ん、」


少し声を出しては俺の存在に気付いたのか、それとも別の体温に感付いたのか、俺にゆるりとすり寄って来た。俺がそっと頭の下へと腕を通してさらに近づけば、 が嬉しそうに笑ったような気がして、それだけで俺の顔はどうしようもないくらいに緩んでいく。(まあ、寝顔を見てるだけでも同じことになるのだが。)


「 おやすみ、。」



**



奥の方から音が聞こえる。夢の中の産物かと思ったが、どうやら違うらしい。この機械音は着信音だろうか。目を瞑ったまま手探りで音の発信源を探す。ところで私の着信音ってこんな音だっただろうか。この音には何だか聞き覚えはあるのだけれど。
一向に止まないその音に観念して、ごそごそとまだ重たい瞼を下ろしたまま手探りでその音の元を見つけて、ボタンを押してそれに出た。


「Hello?」
「あ、やっぱりの家にいたんだね、シリウス。」
「ジェー、ムズ?」


電話から聞こえてきたのは私達の友人であるジェームズのそれだった。頭が働いていないがこの声音はジェームズに違いない。
・・・というか、今ジェームズは何を言ったのだろうか?私の部屋に誰が居るって?


「シリウスに少し聞きたいことがあって、代わって欲しいん・・・って?聞いてる?」


・・・シリウス?何故、彼の名前が出てくるのだろうか。ここは私の家なのだけれど。彼の話がいまいち理解できないままに、 横を向いて抱き枕へと腕を伸ばした。


「・・・シリウスって?」
「え、シリウスそこに居るんでしょ?今、君が持ってる携帯はシリウスの物だし。」
「 ・・・は?」
「いや、だからその携帯はシリウスのだって。」


そう言われて携帯の柄を見てみると、それは間違いなくシリウスの携帯だった。


「ほ、んとだ。シリウスの携帯・・・」
「そうそう、ついでに言うと君の近くにシリウスもいると思うよ、気付いてないだろうけど。」
「・・・」


ジェームズの口から出てきた言葉をすぐに飲み込むことができなくて、情けないような返事ばかりになってしまう。シリウスが近くに?・・・そう言えば、私のベッドに抱き枕なんてあっただろうか。いや、あったとしても私はこんなに大きな枕は買わない。


「と、いうことは・・・」
「ん、ー、」


腕を伸ばした抱き枕の天辺へと視線を挙げれば、そこにはシリウスの幸せそうな寝顔があった。


「シリウス・・・」
「あ、やっぱ近くにいたんだ。」


ジェームズの声が何となく聞こえたが頭に入ってこなかった。私が寝る前には確実にいなかった彼の姿。
何で、彼が私の寝室でで、私より気持ち良く熟睡してるんだろう。彼をじっと見つめ、それから頬を思いっきり引っ張った。 「 いてっ!」
自分の頬を押さえて、ばっと私の方を見る。あ、涙目になってる。


「何すんだよ!」
「それはこっちの台詞よ。何でシリウスがここにいるの。」


「しかも何で一緒に寝てるのよ。」と身体を横に向けたまま、自分の抓られた頬を押さえて、涙目になっているシリウスに言い返した。まったくいつのまに来たのやら。
私のそんな言葉に、シリウスは思いだしたように顔を上げると、「だって」なんて言いながら、私より大きなその身体で私に擦り寄ってきて。


「今日はイヴだぜ?と一緒にいたかったんだよ。明日も休みだし。」


首に顔を押しつけてくぐもった声で言われる。何で起こさなかったのか、と訊けば、「が気持ちよさそうに寝てるし、俺もと一緒に久しぶりに寝たかったから。」 と何とも可愛らしい答えが返ってきたから、ついシリウスの背中に腕を回してしまう。


っ。」
「何?シリウス。」


そうすれば、シリウスは私が素直に喜んだのだと思い、満面の笑みで額にキスを落としてきた。そんな顔をされると、今までの彼の行動に非があろうとどうにも許してしまう気持ちになってしまうのだから、私も仕方のない人間だ。 子どものようにはしゃぐシリウスは「今日は何する?あ、明日の事も考えないとな。」 と言いながら、さらに背中に回されている腕を強くされ、距離が近づいた。


「 あー、シリウスにー?」


「僕のこと忘れてるでしょう?」 そんな声が聞こえてきて、そういえばジェームズと電話してるんだったとようやく思い出す。枕元に放置してしまっていた通話中のシリウスの携帯を取って、それを耳に当てる。


「ごめんね、ジェームズ。忘れてた。」


私の口からジェームズという言葉が出てきた途端、不思議そうに、少し不満そうに私の様子を見ていたシリウスはあからさまにさらに顔を顰めた。


「まあ、仲睦まじいのは良いことだけどね。シリウスに代わってくれる?すぐ終わるから。」
「ええ、分かったわ。」


「はい、シリウス。ジェームズから。」 なんて分かっているだろう相手の名前を一応言ってから、シリウスに携帯を渡す。すると、それを奪い取るようにして耳に当てた。すぐに切らずにちゃんと用件は聞いてあげなさい。なんて意味を込めながら、変わらずに枕を買って出てくれているシリウスの腕をぽんぽん、とゆるく叩いた。


「おい!ジェームズ!何だよ、人が幸せに浸ってる時に!」
「ごめん、ごめん。すぐに済むから。この前言ってた仕事の事なんだけど、」
「ん?ああ、その話か。だったらあれを・・・」


仕事に関してだろう、それらしき用語が私の耳にも入ってくる。けれど、疲れている私にとってそれは子守歌にしか聞こえず、さらにシリウスの体温も相俟って、だんだんと微睡んでいってしまって。気付いた時にはもう瞼も降りてしまっていて、


「ありがとう、助かったよ。じゃあね、良いクリスマスを。」
「ああ、そっちもな。」


辛うじて聞こえる程度だがどうやら電話が終わったらしい。携帯を置いて、私の肩に腕が回される。 「ー、」と私の名前を呼んで甘えるように私を抱きしめ、額を合わせる。 けれど、私の身体には昨日の疲れがまだ溜まっていたらしく、限界に近いくらいに眠気が襲ってきていた。残念だけれど、今はシリウスの相手をしている余裕なんて全くなかった。とてつもなく、眠い。


、眠いのか?」
「うん、 ごめん、もう、ちょっとだけ、寝かせてくれる?」


そんな私の様子に気付いてくれたシリウスはその眠気を促すようにゆるりと私の頭を撫でた。返事の言葉すらもひどく辿々しい、もうほとんど意識は手放してしまっている。


「ああ、もちろん構わない。今日はゆっくりするか。」


「そのかわり明日は、一緒に出かけような?」そう優しい言葉をかけてくれながら、シリウスはもうすでに夢の中へと旅立とうとしている私の額へと唇を落として、


「おやすみ、良い夢を。」


「できれば、俺の夢であってほしいけどな?」なんて事を言いながら、私を強く腕の中へと抱き込んで一緒に夢へと旅立ってくれたのだ。

The previous day of holy night

神聖な夜の前日