「ああ、その格好のまま、あの岩の真ん中を撃ってみろ。」
「はい、・・・っ!」
カモメが気持ちよさそうに飛んでいるそんな空の下、同じ空中へと1つの大きな衝撃音が鳴り響いた。その衝撃音の刹那、数メートル離れた岩の真ん中から少し外れたその場所に銃弾がめり込む。少し狙いとずれたその痕を見ながら、俺は一息ついて構えていた銃をゆっくりと下ろした。
「・・・やっぱり、長くなると難しいですね。」
「反動でのズレが大きくなってしまいます。」 岩を見ていたその目を後ろで教えてくれている副船長へと向けながら、自分の拙さに苦笑を漏らしてしまいつつそう言葉を紡ぐ。そうすれば、俺のそんな心を理解してくれたのか、副船長が俺の頭へと自分の手を伸ばしてきて、ゆるゆるとそこを撫でてくれながら、口を開いた。
「最初から上手い奴なんてそうそういねえさ。」
「それでもお前は良く出来てる方だ。」 もしかしたらお世辞なのかも知れないと思ったけれど、ゆるりと紡がれるそんな言葉がそれでもやっぱり嬉しくて。つい顔を緩めてしまいながら、ありがとうございますと声を弾ませてしまいつつ、言葉を返した。
「 そろそろ休憩するか。」
「え、 あ、はい。」
くしゃりと軽く最後に一撫でされた後、紡がれたその言葉。まだ数発しか撃っていないのにと少し驚きつつも、副船長が言うんだから、きっと何かあるんだろうと思ってその言葉に少し間をおいて返事をする。その間の所為か、何なのか、1つだけ分かる事は、やっぱり副船長は俺の心が読めるんじゃないだろうかという事だけで、頭に伸ばされていた手を、そのまま俺の利き手の方の肩へと滑らせた。そんな副船長の行動に、俺は情けないくらい大きく体をびくりと震わせてしまって。
「この前負った怪我、まだ完治はしてないだろ。」
「う、・・・え、えと、その・・・はい。」
「日常生活には問題ない程度に回復してるみたいだが、無理をしようとすると痛みが走る。」
「隠したつもりだろうが、若干顔が引き攣ってたぞ。」 俺のそんな分かりやすい反応にか、それともそれよりも前からなのか、副船長は訊ねるようなそれではなくて、確信したようなその声色で俺に言葉を投げかけてくるものだから、俺は誤魔化そうとしたものの、結局その返事に肯定の意の言葉を紡ぐ事しかできなくて。
「急に銃を習いたいと言い出したのも、それが理由か?」
「・・・はい。」
続けるようにして放たれたその言葉にも、言い逃れもできそうになかったから、俺は躊躇いながらもゆっくりと首を縦に振ってしまう。肩に受けてしまったその傷は、銃によってやられてしまった傷だった。普段なら避けられるそれであったけれど、大人数に子供を守らないといけない状況にと、少しばかり不利な状況が重なって負ってしまったその傷。
けれど、そんな状況だから、というのは唯の言い訳に過ぎない事くらい、自分でも分かっていた。だから、相手が遠距離攻撃の武器を持っていたならそれに対抗できるような術を自分自身の身体だけでなくて、もっと多くの術を身に着けようと思ったのだ。そうすれば、あの状況も1人で乗り切れたかも知れない。そうすれば、みんなに、船長に、副船長に、迷惑を掛けないで済んだかも知れない。
・・・俺にもっと力があったら、そんな状況でも1人で乗り切れる程の強さがあったら。
「・・・どんな理由かと思えば、」
「?あの、副船長? わっ!!」
自分の不甲斐なさの、そんな情けない理由をぽつりぽつりと副船長へと告げる。こういうのは日々の積み重ねだから、早ければ早いほうが良い。それに、副船長達の負担がそれで少しでも減るのなら、「そう思ったら、居ても立ってもいられなくて・・・」 そう言葉を紡げば、俺に言葉を返した、というよりは独り言のように紡がれた副船長のそんな言葉が聞き取れなくて、息を少しだけ深く吐き出した副船長へと身体を近づければ、それと同時に背中を押されるような感覚が走った。
「う、 あ、え、あれ、・・・ふく、せんちょう?」
どうやら副船長に引き寄せられたらしいと言うことに、副船長の胸元へと顔がぶつかってしばらくしてからようやく気付いて。俺の頭に副船長の顔が乗っているから顔を上げようにも上げられず、そのままの格好で言葉を紡ぐ。すると、背中に伸びていた副船長の、その大きな手が俺の後頭部へと上がってきて、ふわりと俺の頭を撫でてくれて、
「強くなることは良いことだが、あまり1人で無理をしようとするな。」
「・・・で、でも、おれは、」
「お前は1人じゃない。たまには、仲間を守る事を俺達にさせてくれても罰は当たらねえと思うが?」
「!・・・はい、」
「 それにお前を守る事を、誰も迷惑だなんて負担だなんて思ってねえ。 俺も、お頭も。」
「っ、 ・・・は、い、」
「お前は十分強い。銃や剣も使えるようになれば、大概の戦闘でお前は1人でやっていける。・・・でもな、」
流れてくる言葉が、俺が気にしていた1つ1つへと響いてくる。副船長のその声が温かくて、心地よくて、 ひどく嬉しくて。言葉を出そうにも詰まってしまう喉で、なんとか返事だけでもと震わせる。相変わらず見ることのできなかった副船長のその顔は微笑んでくれているのだろうか、なんて声色だけで判断していたけれど、「 、」
「ああいう時くらい、俺達に背中を預けろ。」
「っ、はいっ!」
その顔に笑みが浮かんでいたのを確認できたのは、その一瞬だけだった。それは、俺が再度、副船長の温かくて広いその胸元へと飛び込んで、顔を埋めさせてしまったのが、原因なのだけれど。
本当は俺だけに背を預けて欲しいと言いたいところなんだが、
ぼそっと耳元で囁かれたその言葉に、俺は赤くなった顔をさらにその胸元に埋める事しかできなかった。
わ、私も副船長大好きなのですが、な、何せ口調がっ!!え、似非すぎるベックマンですみませんっ。し、しかし書いておる本人は非常に楽しくっ(強制終了) も、もっとベックマン夢が世に広がる事を祈って!
素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by ちょび様
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