「(・・・これで、変じゃない、かな。)」


甲板へ向かう途中、マルコさんにも途中確認したけど、やっぱりおかしくないか不安になってしまうから、何度も服装を確認しながら、けれど足だけは止まらせる事なく前へ、前へと進める。親父さんの為の服装だけれど、その所為で親父さんを待たせる訳にも行かなかった。


「   お、親父さんっ!」
「グラララ!懲りねェな、お前も。」


「いくらでも待ってやると言っただろうが。」 甲板へ出るや否や、親父さんのその姿を目で捉えた瞬間、いつものように急かしていた足をさらに早くさせながら、親父さんの元へと駆けて行けば、親父さんは笑ってそう言葉を紡いでくれながら、呼吸を整えてくれるように俺の背中を優しく撫でてくれた。自分で整わせるよりもずっと効果がある気がしてならないそんな親父さんの優しさを受けながら、俺は親父さんへと顔を上げて、先程から気になって仕方がなかったその言葉を再度紡いだ。


「あ、あの、親父さん、」
「ん?どうした、?」
「その、  俺の服装、 変、じゃないですか?」


親父さんと一緒に街を歩くのだから、せめて服装だけでも恥ずかしくないようにしたかった。・・・それに、せっかく親父さんと歩くのだからと、綺麗な色をした、俺にとっては大切過ぎてあまり使うことができなかった、親父さんからもらったそのネクタイを身に着けていたから、そのネクタイをくれた俺の大好きなその人に、変じゃない、大丈夫だと言ってもらいたくて。


「グラララ!それで、そんなに服を気にしながらこっちに駆けてきてたのか?」
「・・・親父さんと一緒に出かけるのに、変な格好では行きたくなくて。」


俺なんかで釣り合う事ができるのだろうか、とずっと思っていたのと、やっぱり親父さんからもらったのに汚してしまうのはもったいないと思ってしまったので、着ける回数が極端に少なかった俺にはもったいないくらいのそのネクタイ。俺のそんな言葉の後、少しの間沈黙が流れたから、やっぱり似合わなかっただろうかと思い始めた、そんな時、

親父さんの手が、そのネクタイにゆるりと伸びてきて、


「え、 あっ、え、お、親父、さんっ??」
「じっとしてろ、ネクタイがまた曲がっちまう。」


伸びてきた親父さんの手に慌てていると、そんな声をもらってしまい、けれどそんな声に身体だけは反射的に反応して動きが自分でもおかしなくらいにぴたっと止まる。けれど、親父さんの行動に驚いた事が収まった訳ではなくて。(親父さんが、俺のネクタイをやってくれてる・・・!!)


「あ、あの、親父さん、」
「グラララ、お前ェ、ネクタイまだちゃんと結べねェのか?」
「・・・すみません、その、まだ慣れなくて、」
「慣れるためにこのネクタイを俺は贈ったつもりだったんだが、」
「・・・う。」


返されたそんな言葉に、俺は言葉を詰まらせてしまう。ネクタイは、というか服はそもそも身に着けるものだ。それをもらって身に着けないのは失礼にあたるし、自分の好みではないから身に着けていないというふうに取られかねない。・・・でも、俺は本当に、親父さんからもらったそのネクタイが、


「・・・あの、親父さんからせっかくもらったネクタイを、汚してしまう事を考えると、もったいなくて、」
「グラララ、まァ、はよく転ぶからなァ。 だが、ネクタイは身に着けるモンだぞ?」


それに、俺はよく転ぶから尚更服を汚してしまう確率が高くなってしまう。それを考えるとますますネクタイを着ける事が躊躇われて、結局、それ程着ける回数がないまま、今に至る訳なのだけれど。

「  俺も、お前が俺の贈ったネクタイをしているのを見ると嬉しくなる。」 俺がそんな事を思いながら口にすれば、そんな事もすでに親父さんにはお見通しだったらしく、返ってきたのは俺の心を簡単に揺るがしてしまうそんな言葉で。(・・・いや、親父さんの言葉なら、俺はすぐに心が揺らいでしまうのだけれど。)


「ほら、できたぞ。」
「あ、ありがとうございますっ。」


ふと親父さんが終わりの合図を告げるのを聞いて、そういえば親父さんにネクタイを結んでもらっているんだったという事に気付いて、今更ながらに嬉しさやら恥ずかしさからあたふたと顔を赤らめてしまいながら、なんとかお礼を言うと、


「   ・・・それにな、、」
「わっ、 親父さん?」


そんな俺の頭を豪快に、でも優しく、撫でた親父さんは、続けるようにして口を開いて、その顔に笑みを浮かべてくれながら俺の顔を見たかと思えば、


「  俺が、お前に似合ねェようなもの贈ると思うか?」


「  似合ってるぜ、そのネクタイ。」 ひどく嬉しい形で、大好きなその声で、親父さんはいつも俺に欲しい言葉を何の躊躇いもなく普通に言ってくれるのだ(・・・本当に、敵わない。)

お出かけ準備

そんな親父さんの言葉に顔を緩ませて、嬉しさのあまりに抱きつきにいってしまうのは仕方のない事で、



な、長ったらしくなってしまってすみませんっ!じ、実はこの後のデート編を後編として作ろうとも思ったのですが、自重することにしました(当たり前だ) す、素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by ノエル様