片手では持てないくらいに食べ物を詰め込んだ紙袋を両腕で抱え込んで軒下で一休み。今日はフルーツをたくさん買ったし、デザートは何にしよう?ああでも、クロコダイルさんは甘すぎるのは苦手だし、
・・・ああ、違った、今日の料理を考える事も大切だけれど、今は、この雨の中をどうやって帰るかを考える事が先決だった。さっきまで見えていた青色が、灰色の雲ですっかり隠れてしまっているその光景を仰ぎ見る。
「(・・・どうしよう)」
さっきまで晴れていたから、当然傘なんてものを持ってきているはずがなく。雲と雨の様子を見る限り、どうやら通り雨ではないらしい事は、残念ながらはっきりと窺えて。せめて雨の降りが弱まるまでは雨宿りを、なんて事も思ったけれど、それを待っていたらその分だけ夕食を作るのが遅くなってしまうし、・・・その分だけクロコダイルさんを待たせてしまう事になる。
「(・・・走って帰るか。)」
最後の考えを決め手に、俺は濡れながら帰る方を選び取って屋根の下から駆け出すことにした。雨で濡れた紙袋が破れないようにと慎重に抱え直しつつ、人混みの中を通っていく。思っていたよりも、雨足が強いらしい。もう既に髪がぺたりと顔に引っ付いてくるのを感じながらも、目線は紙袋に。詰め込んでしまった分、道に落ちてしまう確率が高くなってしまっていた。
「(おまけをもらったから一段と重たく、) うっ!!」
紙袋ばかりに夢中になりながら走っていると、どうやら俺は目の前にいた人に突進してしまったらしい。どんっ、とその人の胸元へとぶつかって鈍い音を立たせてしまいながら、よろけてしまった身体を何とか持ち直す。それからぶつかってしまった人へと謝ろうと俺よりも高いであろうその人の顔を見ようと上を向くと、
「す、すみませんっ、俺が前を向いていなかったか、・・・あ、え??」
「・・・てめェは、どうしてそうも案の上の行動パターンなんだ。」
「ク、ロコ、ダイル、さん?」
見上げれば、俺の視界に入ってきたのは、確かに、間違いなく、今俺が向かっている家にいるはずの、傘を差したその人の姿で。呆れた声でそう紡ぐクロコダイルさんの声を聞きながらも、何でここにクロコダイルさんが?という思いの方が強くて、そのクロコダイルさんの言葉はすーっと耳から耳へと通り抜けていった。
「クロコダイル、さん? どうして、ここに、うわっ!」
こんなザーザーと凄い勢いで雨が降っている日にクロコダイルさんが外に出るなんて。その姿が俺の目の前にあることをひどく驚きつつ、そう言葉を紡ぎ出そうとすると、その途中で、俺の背中へと、ずしりと、 ふわりと、何かが乗せられて、 (温かくて、心地よくて、 って、!!)
それが、いつも着ている、彼のコートだと分かるのに、そんなに時間は掛からなくて、
「・・・! え、あ、あのっ、クロコダイルさんっ、これ、クロコダイルさんのコートっ、」
視界に見えたその服の色と、心地よさから、すぐに背中から掛けられたそれが彼のコートだという事を理解して、濡れた俺の身体に被せたりなんかすればコートも濡れてしまうと、慌ててクロコダイルさんへとそう言葉を出しながら、返そうとするのだけれど、
「 帰るぞ。」
そんな俺の言葉に、案の定この人は聞く耳持たずで、
「さっさと歩かねェか。」 続けるようにして聞こえてきたその言葉に、俺は反射的に止まらせていた足を一歩一歩と前に動かし始めてしまった。先程とは違って、身体に雨が染みこんでいかないのは、クロコダイルさんが傘を持ってきていて、その人が俺の隣にいるからで。先程まで感じていた肌寒さが少し和らいだのは、背中から被せられたその服が俺の身体を包んでくれているからで。
「(・・・あ、 もしかして、)」
ふと浮かんできた自惚れのようなその考えに、すぐに頭を振ってそれを消そうとする。でも、いくら振っても、その考えが脳内から消えてくれなくて。それが消えないのは、自惚れでも、そう思うだけで俺が嬉しいと感じてしまっているからなのか、それとも、
「クロコダイルさん、」
「何だ。」
「 ありがとうございます。」
コートのお礼を言っていなかった事に気付いて、そのお礼を彼へと紡ぐ。その自惚れた考えをなしにしても、クロコダイルさんがこうして自分のコートを貸してくれたと言うだけで、俺にとってはひどく温かくて、嬉しいことであるのだ。(それに、自惚れでも良いや、なんて思ってしまうくらいには、俺はこの人の事を、)
「・・・無駄口叩いてねェでしっかり足動かさねェか。」
「 はいっ!」
放たれたその言葉に、いつもよりも声を弾ませてしまいながら返事をして、俺は軽快に足を一歩、一歩とクロコダイルさんの隣を進ませていった。紙袋の中身を落とさないように、この人のコートを濡らしてしまわないように気をつけながら。
重なるのは暖かさ
やっぱり、今日はとても良い日でした。
クロコダイルなのかどうか甚だ怪しい短編となってしまいましたが(えええ)、す、少しでも楽しんでいただけたらこれ幸いっ。
す、素敵なリクエストをありがとうございました!!
requested by ちょび様
title by Lump / 重なるのは暖かさ(short)
requested by ちょび様
title by Lump / 重なるのは暖かさ(short)