「っ、一本っ!!」
「うおっ!!」
まあ特に急ぎの用もなく、この人の鍛錬に付き合えるのなら、と持たされた竹刀へと力を入れて構えて、剣術の稽古を始めてどれくらい経っただろうか。教わる度に楽しさを覚えていって集中していた所為か、いつの間にか結構な時間が経っていたらしく、周りには人だかりができてしまっていた。
「・・・お前、剣術習ってないとか嘘だろ。」
「い、いやそれは嘘じゃないですけど・・・」
「おおっ!おいっ、今があいつから一本取ったぞ!!」
「ー!そのまま脳天打っちまえー!!」
「おいっ、誰だ今あからさまに悪意のある言葉を放ったヤツはっ!!」
「うおっ、ばれたっ!!」
「、ちょっと待ってろ。」 俺ではなく、先程声を出した人だかりの方へと剣先を向けた先輩は、そう言葉を放つや否や、すぐに聞こえてきたのは「ギャーっ!!こっち来たっ!!」 なんて人だかりからの声で。俺の視界から消えた先輩は、どうやらその人だかりの方へと向かってしまったらしい。何時間も稽古していたというのに、その速さと体力はどこに残っていたんだろうと思いながら、楽しそうに追いかけっこをしている先輩達を見ていると、ビスタさんが俺の方へとやってくるのが見えて、
「、剣も使えたのか?今度、ぜひ俺とも手合わせ願いたいものだな。」
「え、あ、ありがとうございます。でも、俺、本当に今日が初めてで・・・」
「フフ、そうか。ああそうだ、。」
「はい?」
「オヤジが呼んでいたぞ。」 ビスタさんのその言葉に、俺はすぐさま身体を反応させて、持っていた竹刀をそのままに、身体を反転させた。「走って来るなとオヤジは言っていたが・・・ああ、もう遅いか。」なんてビスタさんの声を背中に受けながら、それでも、自分の足なのに、俺は速さを緩める事ができなくて。稽古をしていた先輩に心の中で謝りながらも、緩んだ顔を戻せないままに、俺を呼んでくれた人がいるであろうその場所へと、俺は足を急がせたのだ。
「親父、さんっ!!」
「グラララ!ビスタに急がせるなと伝えておいたはずだが、」
「ほら、少し落ち着け。」 何時間も稽古していた所為か、いつもよりも息を切らしながらたどり着いた大切なその場所。息を乱しながらもなんとかそう紡いで親父さんの元へと駆け寄れば、息を整えてくれるかのように親父さんが背中へと手を伸ばして擦ってくれて。
「ありがとう、ございます。 あれ、っ、」
親父さんへとお礼を言おう下に向けていた視線をくいっと上に向けて言葉を放てば、それと同時に何故だか視界がふわっと黒で覆われて、急激な変化に思わず足下がふらついてしまう。何とか踏みとどまろうとして足を踏ん張らせてみるものの、いつものように力が入らず、ぐらりと背中から落ちるようにして後ろに倒れそうに、
「・・・ったく、やっぱりか。」
「あ、親父、さん? っ、わわっ、す、みませんっ!」
踏ん張れない程に重心が傾いてしまい、もう受け身をとる事しかできなかったから、そうしようとしたのだけれど、その前に、背中に触れていた親父さんの手が、さらに力を入れて俺の身体ごと支えてくれて。その温かさを背中に感じ取ると同時に、ようやく視界に色が戻ってきて、親父さんに支えてもらっているという今の自分の状況を確認すると、俺は親父さんの手を煩わせないようにと、すぐに自分で立ち上がろうとするのだけれど、
「お、親父さん?あ、あのっ、」
「良いから、そのまま俺に支えられてろ。」
覚束ない足で、それでもなんとか立ち上がろうと足に力を入れようとするのだけれど、俺の背中を支えてくれるこの人が、それを許してはくれなくて。「さっきまで、剣術の稽古をしてたと聞いたんだが?」 申し訳なさから立ち上がろうとする俺を余所に、そのまま俺を自分の身体に凭れさせるように座らせながらそう言葉を紡いでる親父さん。
「? はい。あの、稽古に付き合ってくれと言われて、今までずっと・・・」
「・・・休まずに、か?」
「え、あ、はい。つい、俺も夢中になってしまって・・・あの、親父さん?」
「ん?どうした?」
何故だか自分の身体がいつもよりも重く、怠く感じられたから、親父さんの言葉に甘えて身体を親父さんの身体へと凭れさせつつ、親父さんの言葉に返答をしていく俺。けれど、何か親父さんは俺に用事があって呼んだのではないのか、という事を若干ぼーっとする脳内で今更ながらに思い出して、「俺に用があったんじゃないんですか?」と親父さんへと言葉を紡いでみれば、その大きな手のひらで、ぽんぽん、と頭を撫でられて、
「バカ息子が、炎天下の中、稽古をしてると聞いたもんだからなァ、」
「え、?」
「お前の事だ、稽古に夢中になりすぎて休憩も取らずに続けてるんじゃねェかと思ったんだが、」
「・・・う、それは、その・・・」
「グラララ! だから、ここに呼んだんだ。」
「??」
以前、親父さんに炎天下の中では熱中症になりやすいから休憩と水分補給はこまめにしろと、親父さんだけでなくてドクターにも言われていた事だから、その事を言われてしまうと、目線を下に泳がす事しかできなくて。けれど、続けて聞こえてきた親父さんの言葉を俺はいまいち意味を酌み取る事ができなくて、思わず顔を上げて首をかしげてしまう。
俺が休憩を取らなかったのと、親父さんが俺をここへ呼ぶ理由が、どう繋がるのだろう?少しの間考えてみたけれど、やっぱり答えは出てこなくて。そんな俺の顔を見て、親父さんはまた太陽を見た時のように、目を細めて笑ったかと思えば、「愛しい息子は、俺が呼べば、こうして来てくれるだろうと思ったからな、 それに、俺が目の前で休憩してくれと頼めば、」
「俺の息子は、休憩してくれるだろうと思ったんだが、」
「 違ったか?」 そうやって訊いてくる親父さんに、俺はただでさえ太陽の光で熱が籠もっていた頬へとさらに熱を込めてしまいながら、「・・・違い、ません。」なんて言葉を紡ぐ事しかできなくて。また、親父さんに要らない迷惑かけてしまった。そんな思いで頭をいっぱいにしていると、そんな俺の返答に、親父さんは少しの間笑った後、水の入った俺の手にちょうど収まるくらいの大きさのコップを手渡してくれて、
「グラララ! まあ、手の掛かる息子ほど、愛しいモンはねェとは言うが、」
「 あまり、親に心配をかけるモンじゃねェぞ?」 倒れでもしたら、それこそ俺の身が保たねェ。 聞こえてくる言葉は、俺に注意を促しているそれであるというのに、頭を撫でてくれる親父さんのその手が、身体に響いてくる親父さんのその声がとても心地よくて、暖かくて、 ひどく嬉しくて、くすぐったくて、 (ああ、どうしよう、)
「親父さん、 その、 あの・・・(また、ここに来ても、)」
「あァ、そうだ、。」
「は、はい、何、ですか?」
「またこうしてお前を呼ぶ時、ちゃんとここへ来てくれるか?」
「っ!!」
「あァ、その時は、急いでくるんじゃねェぞ?」
「 俺はいつまでも待ってるぜ?」 放たれたその言葉に、俺が親父さんへと思いっきり抱きつきにいった、それを親父さんがしっかりと受け止めてくれた、そんな快晴の下での、ある日の話で。
快晴の下で燦めく
ほら、水は飲んでおけ。 はいっ、あ、でも、これ、親父さんのじゃ・・・ グラララ!そんな小せェコップじゃ俺は飲めねェよ。 えっ、あ・・・そうか。 ・・・?でも、何で親父さんのところに、 お前の為に準備させたに決まってるだろ? っ!!
な、長ったらしくなってしまってすみませんっ!!し、しかしこれでもかという程愛は詰め込んだっ(それが一番要りません)
す、素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by ミナト様
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