「(今日はどこ行こうかな。)」


ぱたぱた、 廊下に響くのはそんな可愛らしい足音。大人しく部屋で待っていろと言われたはずの少年は、けれどやはりそうしているだけというのは好奇心旺盛な子供には無理な注文であったらしく、成長途中であるその足をせっせと動かして海軍本部の中を一人で散策していた。


「だれかに会えるかな・・・」


この場所へと来る回数は、父親の過保護もあってそれほど多くはないが、けれど回数が少なくともそれを感じさせない程にという名を知っている人がこの海軍本部には多くいた。海軍然り、七武海然り。それから、海へと出れば、一部の海賊達にも彼の名前は知られていたりする。


「もっと腕を振った方が良い。」
「 (あ、この声・・・!)」


そうなれば、彼らがの事を知っているように、も彼らの事を知っていくようになるわけで。それ程遠くない所から聞こえてきたその声は聞き覚えのあるそれだったらしい。はぴくん、と聞き耳を立てて、その声のする方へと先程よりも駆け足で歩を進めた。


「こう、でしょうか、 中将。」


ひょこっ、と大きな柱の側から外を覗けば、そこにはずらりと竹刀を持って構えている海兵達の姿。それから、その海兵達から視線をずらしてその先を見れば、海兵達の一番先頭に、彼らに指導をしているらしいの知っているその人物がの視界に入ってきた


「! (やっぱり、 モモンガさんだ!)」


部屋を出てからそれ程時間が経たないうちに、それも自分の大好きな人の1人であるその人に会う事ができたからか、は嬉しさを募らせる。その嬉しさのまま、その勢いでは彼に近寄っていこうと、足を出して彼の名前を紡ごうと口を開いて喉を震わせようとしたのだけれど、


「っ、(! でも、おしごとのじゃまに、)」


ふと浮かんできたそれに、名前を紡ごうとしたその口へとぱちん、と自分の両手を持って行く。そのおかげでの言葉は声になることなく、駆け出しそうになったその足もなんとか踏み留め、視線の先にいるその人物に気付かれずに済む。


「(あ、あぶなかった。)」


自分の方へと視線が向かってこない事に、はほっと肩を撫で下ろしてその場にしゃがみ込んだ。このまま諦めて散策を再開しようとも考えたけれど、久しぶりに会った大好きなその人に声をかけたくて、はその稽古が休憩に入るまで待っていようと、は折った膝を両腕を伸ばして抱える。

ここなら、邪魔する事なく稽古の様子が見られる。そう思いながら、腕を懸命に振る海兵と、指導しているその人を見ていると、冷たい風が少年の身体に吹き付けた。


「  っくしゅん!」
「・・・ん?  ?」
「 あ、(・・・見つかっちゃった。)」


その風の寒さに思わず出してしまったくしゃみに、風にその音が乗って届いてしまったのか、の会いたいと思っていたその人が気付いてしまった。くるりと向いたその目に、の目がばちっと合って、名前もしっかりとその口で紡がれてしまっては、立ち上がったは良いものの、もう隠れるには遅過ぎて。こちらに気付いてくれて嬉しさと、邪魔しないように、と決めたところであったのにと、何とも言えない顔をしながら、「え、えと、 その、」 と、言葉も思うように出ていかなかった。


「どうした、?」
「あ、ええと、おさんぽしてたら、モモンガさんを見つけて、・・・でも、おしごとのじゃまはしちゃだめで、」


「だから、きゅうけいまで、待っていようと思って・・・」 結局、仕事を中断させてしまった事に落ち込んでしまいながら、「・・・じゃましちゃって、ごめんなさい。」 とゆるりと自分の方へと歩み寄ってきてきれたモモンガへと顔を伏せてしまいながら謝る。慌てながら出した言葉はところどころ繋がってなかったけれど、意味が通じない事はなかったようで。そんなの様子に、口元を緩ませながら彼はゆるりとの頭へと手を伸ばした。


「 偉いな、。」
「へ?  わ、わわっ、」


わしゃわしゃと伸ばされたその手と聞こえてきたその声に、不思議そうな顔をしてくいっと首を上へと傾ける。それ同時に、との身体の2倍以上はあるような大きさの服がの身体へとふわり、と被せられる。ふわり、と言ってもにとってはずしり、とくるような重さで、ふらつきながらもなんとか踏み留まりながら、全身を覆ったその服へと視線を一度降ろして、それからまたその服の持ち主の方へと、先程よりも多くの疑問符を頭の上に浮かべながら見上げた。


「?? モモンガ、さん?」
「そろそろ休憩に入るところだ。  だから、」


「もう少しだけ、待てるか?」 元々、そろそろ休憩を取ろうと思っていたところだ。それを少しだけ速くしても何ら問題はない。そんな事を思いながら、視線を一緒になるようにと膝を折り、頭を撫でていた手はそのままに、その声をへと響かせる。その言葉に、疑問符が浮かんでいたの顔がみるみるうちに嬉しさのその色を乗せて輝き始めて、「はいっ!」と首をぶんぶんと縦に振りながら、は元気よく返事をした。


「そうか。なら、あと少し待っていてくれ。 少しの間だが、散歩でもするか。」
「はいっ。 あ、で、でも!このふくは・・・?」
「ん? ああ、稽古をしていたら暑くなってな。休憩になるまで持っていてくれるか?」
「はい、分かりました!」


嬉しそうに返事をするは身体を包むその温かさに、はっと気付いて被さっている服の端をきゅっと掴んでモモンガへと言葉を投げかけた。もちろん、彼から返ってきた言葉は、自分が暑いだけではなくて、先程吹き付けたその風にくしゃみをしていた彼の為を思ってのそれなのだけれど、その裏の意図に幼い少年は気付くこと無く、快くそれを受け入れて、笑みを浮かべながら大きく頷いた。


「すまんな。 では、行ってくる。」
「はい! あっ、おしごとがんばってください!」
「ふふ、  ああ。」


のそんな反応が微笑ましくて、思わず浮かんでしまう笑みをそのままに返事をして、ゆるりとその場に立ち上がる。それからゆっくりとまた稽古をしている場所へと戻っていくその姿に、は手を大きく振りながら、応援のその言葉をかけた。そんなの言葉に手を振ってくれる彼の大きな背中を見つめながら、再びゆっくりとその場へと座り込んだ。


「ふふ、  あったかい。」


全身を包んでくれるその心地よい温かさと、大好きなその人と散歩ができるその嬉しさを身体いっぱいに感じながら、はまたその顔にゆるゆると締まりのないその笑みを浮かべて、その服へと顔を埋めた。大好きなお散歩の時間まで、あと僅か。






大きな服に包まれて、

モモンガさんの服はとてもあたたかくて、ひなたぼっこしてる時みたいに気持ちよかったです!





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