「パパっ、おふろ、おふろに入ります!」
ぷくぷく、なんて音が浴室に響くのではないだろうかというくらいに、お湯の張っている湯船にはの立てた泡が浮かべられていた。先日、航海の途中に寄った街で買ったそれを使うのを楽しみにしていたらしいは、とても楽しそうな笑みを浮かべて自分のパジャマを抱えながら、ソファに座って新聞を見ていた父親へとそう声をかける。もちろん、そんな愛らしい笑みを自分へと向けている息子の声を、彼が受け入れないはずもなく、
「ふふ、パパっ、見て!ぷくぷく!」
「顔の前に持っていきすぎるな。目に入る。」
「はい!」
後ろにいる自分へと自分の手に持てるだけ持った泡を見せようと、後ろを振り向きながらその手を顔の辺りまで上げるを見やりながら、ミホークは見えた事を伝えるように息子の頭をゆるゆる撫でながらそう言葉を紡ぐ。そんな父親の言葉へと嬉しそうに返事をしながら、気持ちよさそうに頭を撫でられながら、再度その泡へと視線を向ける。
「ふふ、ぷくぷく。」
「また、あそこに寄るか。」
「ほんとうっ!?」
楽しそうに泡を見る息子を見て、ついそんな言葉を投げかけてしまうミホーク。けれどその言葉に嬉しそうに、可愛らしいその笑みを自分に向けてくれながら、「パパ、ありがとうですっ!」なんて言われるのだから、それを言われる度に、ひどく心地よい、愛しいそれらが身体を満たすのだから、つい、そんな言葉をかけてしまうのも仕方のない事だと、自分の中で結論づけていれば、
「あっ、パパ!明日はパパにけんをおしえてもらいたいです!」
「・・・自分の剣を使うのなら、見てやろう。」
シャボン玉を作るようにその泡へと息を吹きかけていたは、突然にそんな言葉をミホークへと紡ぎ出した。けれど、そんな言葉を放たれたのも、その言葉を受けて稽古をしたのも、初めてではなかったから、ミホークはのその言葉へと、けれど少し間を置いて、いつものように条件を出して言葉を返した。
「う、・・・パパのも、もってみたい、のに・・・」
もで、そんなミホークの言葉にいつものようにそんな言葉をぽつりと呟く。自分の身体の2倍はあるだろうミホークの持つその剣を、は稽古の際にいつも持とうとしていた。持ち上げる時にすら、ふらふらと身体をふらつかせているのだから、父親としてはそんな危ない物を持たせたくないというのが本音だ。
「自分の力に見合った剣を持つことが、力のつく一番の方法だ。」
実際、この方法が最良のそれである事は本当であるから、それを建前に使い、毎回のように父親は息子へとそう言い聞かせる。・・・言い聞かせようと、毎回試みているのだけれど、
「・・・でも、すこしでも、はやく、 パパみたいになりたい、 から、」
「すこしだけ、 だめですか?」 大好きな自分の親のようになりたいからと、ぽつりぽつりと、けれどしっかりとそんな言葉が自分へと届いてくるから、そうして、目を合わせるためにこちらへと身体ごと向けてきて、そんな言葉を紡ぐ息子へと、
「・・・少しだけなら、構わん。」
「っ!! パパっ!!」
その言葉に聞いた途端に、自分へと思い切り抱きついてくる彼が、ひどく愛しくて仕方がないから、自分が見ていれば問題ないだろうなんて、結局そんな結論に至って、毎回のように、それを許してしまうのだった。
ぷくぷく泡のバスタイム
そしてまた、自分の剣を持つ息子を心配する羽目になるのだけれど。