「フフフ!意外と早かったな鷹の目ェ!!」
「もう少し遅いと踏んでたんだが。フフ、なんだ、そんなに息子が心配だったのか?」 えらく楽しそうに浮かべられたその笑みはではなく、今とその男の方へと近づいてきた、の父親であるミホークへと向けられていた。けれど、その笑みに、その言葉にすら反応することなく、つかつかと早足で2人の方へと歩を進めたミホークは、その男の手から、瞬時にを取り、自分の腕の中へと抱き込む。それから、やはり彼の目はその男へと向かうことはなく、
「・・・部屋の中に居ろと、あれだけ言ったはずだぞ?」
「っ、ご、ごめんなさい・・・あのっ、パパに、早く会いたくて・・・それで、つい、」
「・・・かってに出ちゃって、パパとのやくそく守れなくて、ごめんなさい。」 ミホークのそんな言葉に、自分が悪いと自覚しているは、ぽつりぽつりと、けれどしっかりと声に出して謝った。父親の怒っている姿が怖いというよりも、悪い事をしてしまった自分は父親に愛想を尽かされてしまうのではないかという恐怖感から、は今にも涙で頬を濡らしてしまいそうになっていた。ぎゅう、と、離れないでと言わんばかりに自分の服を握りしめているのそんな姿を見て、さらに同じような言葉を続けるほど、彼が厳しい訳がなく、
「・・・ぱ、ぱ?」
「・・・次からは、気をつけろ。」
「っ、 はいっ。」
「パパ、ごめんなさいっ。」 の頭へと置かれたその大きな手がゆるゆると動かされながら、紡がれたのはそんな言葉で。父親のその優しいその声に、頭に触れるその手に、顔に浮かべられたその笑みに、ようやくは安心できたようで。泣き出しそうになっていた顔はどこへやら、たちまちその顔には嬉しそうな笑みが浮かべられ、その勢いのままに自分の父親へと思いっきり抱きついた。
「フッフッフ!感動の再会ってとこか?」
「まさか、鷹の目にこんな可愛げある息子がいたなんてなァ!」 ひどく楽しそうなその笑い声を廊下へと響かせながら、距離を縮めること無く、その場で2人の様子を眺めるその男。彼のそんな声に、親子が同時に反応して、ゆるりと顔を彼の方へと向けた。1人の視線は険しく、もう1人の視線は不思議そうなそれだった。
「・・・に何かしたのか。」
「フフ、いやァ?何もしてねェぜ?お前の所に連れて行こうかとも思ったが、息子に断られちまったからなァ。」
「・・・本当なのか?」
「?? はい。だって、知らない人にはついていっちゃいけないんでしょう?」
「だから、ここでお話してたの。」 部屋の外に出てしまった時点で、1つ約束を破ってしまっているのだけれど、しかしも全ての約束を守らない訳ではない。むしろ、こうして破る事が珍しいくらい、しっかりと父親との約束事は守る子だ。当たり前のように紡がれた息子の一言に、ずいぶんと、愛おしさを感じてしまったミホークは、目の前にいるその男を問いただす事はもう止めて、さっさとここを出てしまおうと考えた。
首根っこを掴まれていた所だったからとその男が出会ってそんなに時間も経っていたいはずだ。その男の言うとおり、幸いなことに、たぶんまだ何もされていなかったのだろう。それなら、何かされる前に立ち去った方が良い。ミホークはを抱え直して、何も言わず、その場を立ち去ろうとした・・・のだけれど、
「あ、パパっ! ちょっと、ちょこっとだけ、おろしてください。」
「・・・何故だ?」
「あのおにいちゃんに、ここでいっしょにパパをまってくれたお礼を言いたいです。」
「ちょこっとだけ、ついていったりしないから。」 あいつなどにがくれてやる礼などない。 本当は、そう言ってそのまま抱きかかえてその場を、何をしでかすか分からないその男からさっさと立ち去りたかったが、愛しい息子にそうお願いをされては、断るなんて事、父親である彼にできるはずもなく。
「・・・すぐに戻ってこい。」
「っ!ありがとうです、パパっ!!」
そうして、彼の腕から下ろされたは、父親へと嬉しそうな笑みを浮かべてそう言葉を紡ぐと、一定の距離を保って見ていたその男へと、すぐに、と父親から言われたそんな言葉を実行するかのように、パタパタと少し覚束ない足取りで駆けていった。
「あのっ、おにいちゃんっ!!」
「フフッ!鷹の目も、息子の頼みは断れねェのか? どうした、息子君?」
先程のように、首根っこを掴んで視線を同じ位置へとしようものなら、ただでさえ、今にも抜刀しそうになっている、背中にあるその太刀を本当にくらいかねない。そんな面倒事は避けるべく、その男はと視線を合わせるべく、その場にしゃがみ込んだ。
「さっきは、お話してくれてありがとうですっ!」
「フフ、いや、構わねェよ。俺も面白ェモンが見られたしなァ。 ところで息子君、君の名はか?」
「はい!ぼくはジュラキュール・って言います!」
しかし、やはり何もしないで返してしまうのも、何だか惜しい気がする。父親の慌てる顔を見てみたいというのもあるが、何より自分が、父親とはまるで似つかない、可愛げのあるこの息子を気に入ってしまったのだ。少しくらい、悪戯をしてやっても、自分に意識が向くようにしても、構わないだろう? その男の顔に浮かんでいた笑みが深くなったのを、ミホークは目敏く気づいた。
「あァ、そうか。なら、?」
「?? なんですか、おにいちゃん?」
「そうだな、今度会った時には、これに思う存分触れさせてやろう。」
「っ!ほんとうっ!?」
「フフ!嘘じゃねェぜ?になら、いくらでも触らせてやる。 ・・・だから、」
「・・・、そろそろ行く、っ!!!」
普段、人を見下ろす事に何も思わず、当たり前のようにしているその男が、何故と視線を合わせるためにしゃがみ込んだのだろうか。 すぐにでもを連れて立ち去りたい気持ちを抑えながら、けれど自分で思っていたよりもその抑えが利かず、自分の息子へと言葉を紡ごうとした、そんな時。ミホークの視界へと入り込んできたのは、と、自分の、愛しいその息子の額へと顔を寄せる、その男の姿で。
「・・・その命、余程捨てたいものと見える。」
ミホークの背中にある深い、黒色を持つその刀の光が、鞘から妖しく放たれ始めてしまったのは、その廊下に男の笑い声と、斬撃の音が轟いたのは、また後日談として語られる事になる。
猫じゃらしの誘惑
・・・、何を言われた。 いつでも、おれのとこにとびこんで来いって言われました!(わくわく!)