「・・・(パパ、まだかな。)」


海軍本部の、とある部屋。そこで、自分と同じくらいのクッションを抱きかかえながら、ちょこんとソファに座っている少年が1人。父親の言いつけを守って、どうやらこの部屋に留まっているらしかった。けれど、窓に広がる珍しい風景、1つドアをくぐればそこにはまだ自分の知らない場所がいっぱいに広がっている事を知っている子供にとって、ある1つの空間に居座る事なんて、たとえそれが父親の言いつけであったとしても、到底我慢できるものではなかった。


「・・・ちょっとだけ、なら、」


この部屋に居たという少年も、やはり例外では無かった。まだ好奇心旺盛なその少年は、誰にも聞き取られないようにと小さな声でそう呟くと、クッションを側に置いて、そのソファからぴょんっと勢いよく飛び降りた。



「わあ、  (おおきいなあ!)」


にとって知らないものばかりのその廊下は、歩いているだけでも楽しいものだった。幸か不幸か、にとっては幸いなことに、そこには海兵の姿も、父親であるミホークの姿もなく、廊下のど真ん中を歩いても誰にも気づかれることなく、思うがままに目の前に広がるその廊下を進んでいけた。


「ふふっ、 (パパも、これ見てたのかな?)」


きょろきょろと周りを見回しながら、見たことのないものを見ては感嘆の声を上げては、始終笑みを浮かべている。けれど、その笑顔が、急にふっと消えた。何を考えるにおいても、自分の頭の中に出てくる父親の存在を、その父親があの部屋で待っていろと言っていた事を無視できるほど、この子供は器用ではなかった。


「パパ、 (・・・パパをむかえにいったら、パパはおこっちゃうかな。)」


一応、道が分からなくならないようにと真っ直ぐに進んでいたらしい。まだ自分の居た部屋が視界の端へと入っているその場所でふと立ち止まったは、その部屋とまだまだ続いている廊下とを見比べて、どうしようかと小さな頭の中で考える。今戻れば、部屋から出ていた事は父親に知られること無いだろう。けれど、戻ってしまえば、また同じ風景をじっと見つめていなければならない。でももし、もし、このままこの道を進んで、待っているよりも早く、自分の大好きな父親に出会えたら?


「・・・よし、 (パパに、はやく会いたい。)」


の足は、来た道ではなく、まだ見ぬ新しいその道へと踏み出していった。どうやら、選び取ったのは後者の方だったようだ。とてとてと、大人の一歩の半分にも満たないそんな歩幅で、それでも父親に早く会いたいとなりに足を早く動かす。けれど、やはり周りにある見知らぬ物にも目がいってしまうようで、ちゃんと前を向いていなかったのそんな小さな身体に、どんっ、と、何かがぶつかった。


「わっ、!」
「ン?」

がぶつかったのは、どうやら人であったらしい。その衝撃の所為で廊下の床に尻餅をついてしまったは、痛さもあったけれど、でも自分からぶつかっていた事をしっかりと認識していたから、ふらふらと覚束ない足をなんとか立たせて、ぶつかった人物の顔を見ることなく、すぐに頭を下げた。


「あ、あのっ、 ごめんなさいっ。 ぼくが、まえを見てなかったから、」


怒られてしまうだろうか、やっぱり父親の言いつけ通りに部屋に居れば良かったと、 自分のやってしまった事に対してひどく後悔の念を抱きながら、は怒られない事を祈って、頭を下げたまま、涙が出そうになるのを必死にこらえた。けれど、の耳に響いてきたその声は、 首根っこを掴まれて持ち上げられる時に触れたその手は、が思っていたものとは、全く違った、それだった、


「フッフッフ! お前、もしかして鷹の目の息子じゃねェか?」






小さな猫と、ふわふわ揺れる猫じゃらし

・・・もふもふが、いっぱい???





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