「・・・えーと、(これは、その、)」


相談したのは俺だけれど・・・自分で相談しておいてこんな事を言うのは気が引けるのだけれど、・・・でもこれは、相談する相手を間違えたかも知れないと思わざるを得なくて。食堂にいたサッチさんに相談していたはずなのに、いつの間にやら俺はコックさんと一緒に厨房へと立っていて、あれよあれよと言う間に、気が付いた時には俺の目の前には少し苦めのチョコレートを使ったスイーツが1つ出来上がっていた。


「はは、さすがだな。器用なだけある。初めてとは思えない出来だぞ?」
「あ、はい。ありがとうございます、?」
「おっ!!出来たのか? 1ついただくぜー。」


隣から聞こえてきたその言葉に一応返事をするのだけれど、未だにそれを自分で作ったとは思えなくて。というか、甘いお菓子を好んで食べないからこうして相談していたはずなのだけれど、なんて思いながら、一切れ手にとって美味しそうに食べてくれるサッチさんへと視線を合わす。そうすれば、サッチさんは笑顔のままで「美味ェぞこれ!!」と言ってくれたから、未だにこの状況の全てを把握しきれていない俺は、けれどつられて笑みを浮かべる。コックさんにも褒めるようにして頭を撫でられていれば、調理場のドアが開く音が俺達の耳へと響いてきて、


「  がここにいると聞いたんだが、」
「あ、マルコさん。」
「あァ、、  こんな所で何してんだよい、珍しい。」


「お前ェは食べる専門だと思ってたよい。」 クツクツと喉の奥で笑みを漏らしつつそう言葉を放って俺の方へと近づいてくるマルコさんの姿を俺は捉えて。人を大食いのように形容するその言葉に、自分ではそう思っていなかったけれど周りから見たらがっついているように見えたのだろうかと今更ながらに思って、恥ずかしさから少しだけ顔に熱を集中させていれば、何故だかマルコさんはひどく楽しそうに再度笑みを浮かべて俺の頭へと手を伸ばしてゆるりと撫でてきた。


「  で、こんな場で何してんだよい。」
「あ、あの、今日はバレンタインだとナースさんに聞いて、それで、そのサッチさんに相談を、」
「・・・相談するのは構わねェが、もっと相手は真剣に選べよい。」
「・・・マルコ、それ俺にひどくねェ?」
「お前ェは黙ってろい。」
「・・・はい。」


マルコさんの言葉に俺はそう言葉を紡いで。そう言えば、ナースさん達が「ふふ、の愛しい人には内緒で作ってみると良いかもしれないわよ?」 なんて助言をもらっていたんだっけ、と言った後に思い出したのだけれど、きっと隠そうとした所でマルコさんに隠し事なんてできるはずもないから、まあ良いかなんて思い直す。そんな事をしていれば、サッチさんと会話をしていたマルコさんが俺の目の前にあったそのお菓子に気付いて、それからまた、俺の方へとその瞳を移して、


、ナースには何て教えてもらった?」
「えと、好きな人とか、お世話になっている人にチョコレートを渡す日だと聞きました。」
「  それで、は誰に渡すんだよい?」


・・・本当に、この人はずるい訊き方をしてくる。本当に分からないんじゃなくて、分かっているのにあえて俺へとその言葉を、さらに言えば耳元で囁くようにして紡いでくるマルコさんを、俺は恨めしげに見上げるのだけれど、そんな事をした所で、この人が懲りるわけがない事を、悔しい事に俺は知っていて、(・・・知っていようが、知っていまいが、それに答えてしまう俺も俺なのだけれど、)


「  ま、それは俺の部屋で聞くとするよい。 それ、が作ったのかい?」
「あ、はい。 でも、コックさんに少し手伝ってもらった、 わっ!」


「 マ、マルコさん?」 続けざまに紡がれたマルコさんのその言葉に安心して良いのやら、危機感を覚えないといけないのやら、何だか妙な気持ちを抱きつつ、その言葉に返事をしていれば、急に身体を支配した浮遊感に俺は間の抜けた声をあげてしまって。気が付けば、逆さに広がるマルコさんの背中へと向けて自分の声を出していて、マルコさんの片腕が俺の背中へと伸ばされているのを感じて、


「安心しろよい、全部余すことなく食ってやるから。」


そんな言葉を放ったマルコさんの顔はとても、楽しそうに口角を上げていたらしいです。(・・・後からサッチさんとコックさんに教えてもらいました。)(・・・部屋に戻った時のマルコさんの顔と、たぶん同じだったんじゃないかと、)








Happy Valentine!!

美味いよい、なんて嬉しそうに放たれたその言葉が部屋に響くのは、(…喜んでくれているのは、嬉しいけれど)