「  ・・・というわけ、なんですけど、」


思い立ったが早々に、いつものように親父さんの元へと駆けていった俺は、ナースさんから教えてもらった事を親父さんに話した。けれど、やっぱり親父さんに言ってみたは良いものの、親父さんはチョコレートよりもお酒の方が良いのかも知れないなんて考えが今更ながらに浮かんできて。


「でも、親父さんは甘いものを好んで食べないから、その、俺、何を渡したら良いのか、」


愛しい人に贈る日であるのならば、もちろん俺は愛しくてたまらない親父さんに渡したくて。俺がチョコレートを渡すだけなら、それでも良いのかもしれないけれど、でもやっぱり、折角愛しい人に渡すのだから、親父さんがそれを喜んでくれるなら、俺はもっと嬉しいと感じると思うから、


「その、チョコレートよりも、親父さんが嬉しいと思うものを渡したくて、」


自分の脳内で考えていて、何考えてるんだ、なんて冷静に思うと、何だか妙に恥ずかしさを覚えてしまって顔に熱が集中していくのを感じたけれど、何とか親父さんへとその言葉を紡いだ。いらない、なんて言われたらどうしようと思っていたら、少しだけ小さい声になってしまったけれど、それでも親父さんへと伝わるように、しっかりとその声に力だけは入れて。そんな言葉を声に乗せて親父さんへと届ければ、「  、」なんて俺の名前を紡ぎ出した親父さんの声が、笑みを浮かべてくれているその顔が、


「グラララ!お前ェは本当にナースの奴等に可愛がられてるなァ!!」
「わっ、 親父、さん?」


急にその笑い声をあげたかと思えば、俺の頭へとその大きな手を乗せて、思いきりそこを撫でてくれる親父さん。笑い声と共に紡ぎ出されたその言葉の意図がいまいち分からなくて、頭の上に疑問符を浮かばせながら親父さんの方へと目だけを向ければ、けれど、親父さんがとても嬉しそうに笑っているのを見れば、理由が分からなくても単純な俺の脳内は、それだけで自分も嬉しく感じてしまうのだから、


「 今日の晩酌を一緒にしてくれねェか?」
「??もちろん、良いですけど、あの、 親父さっ!」
「あァ、それで良いんだ。 」


「それが、俺の一番嬉しいと思うモンだからなァ。」 もしかして、それがチョコレートの、でもそれはいつも俺がしている事と変わらないんじゃ、 なんて考えながら親父さんへと言葉を紡ごうとすれば、けれどその前に親父さんの方へと引き寄せられて、そんな言葉を放たれる。俺の脳内へと響いてきたその声を、その言葉を噛み締める度に、愛おしさが融けて溢れ出てくるのを俺は案の定、抑える事ができなくて、(ああもう、これじゃあどっちがもらってるんだか、)


「  親父さん、」
「グラララ、どうした?」


溢れ出してくるものが少しでも伝わったらと、擦り寄るようにして自身から親父さんの胸元へと身体を預けた俺は、もう少し、融け出すそれを貴方へと伝える術を知っているから、(そうすれば、親父さんが喜んでくれるのだと、貴方自身が教えてくれたから、)








Happy Valentine!!

愛しいと、言葉も一緒に伝えれば、貴方の嬉しそうな笑みがいっぱいに響いてきて