「ああ、ありがとう。」
店の人からもらった物を抱えて、ゆるゆると足を進める。本当に大きな出来事があった後だからか、今のこのゆっくりと時間が流れていくのがひどく落ち着くように感じながら、貸してもらっている家への帰路へと着く。
「ん?何であんな人だかり、・・・っ!?」
ルフィはまだ寝てるんだろうな、なんて考えながら戻ってみれば、何だかえらく家の周りが騒がしい。何だろうと目を凝らしてみれば、見えたのは海軍のマークであって。もう追っ手が来てしまったのだろうかと慎重にそこへ駆け寄ってみたのだけれど、おかしな事に、彼らには攻撃性がまったく感じられなくて。無駄に攻撃をしかけて見つかるよりは、と、遠回りをして家の入り口へと近づくと、俺の名前を呼んできたのは、
「 おおっ!!じゃないかっ!? 久しぶりじゃなー!!」
「なっ、 え、 が、ガープ、さん?」
ルフィと一緒に俺の視界へ入ってきたのは、間違いようもない、ルフィの祖父である彼、ガープさんであって。俺の姿を確認した途端、ガープさんの顔に嬉しそうなその笑みが浮かべられたのが見えたけれど、俺はそれ以前に、何でここにガープさんがいるのかという事に頭がいっぱいになっていた。
「、ルフィのおじいさんの事知ってたの?」
「あ、ああ、昔から俺にも良くしてくれていた人だけれど・・・でも、何で、ガープさんがここに?」
「ワシはちょっと付きそいでな! それより、元気にしとるか!?」
「はい、おかげさまで。・・・ガープさんも相変わらずお元気そうですね。」
「わっはっは!!当然じゃ!も元気で何よりじゃな!!」
「ふふ、ガープさん って、わっ!・・・る、ルフィ?」
誰の付き添いなのかは気になったけれど、それよりも久しぶりにこうしてガープさんに会えた事が嬉しくて、次第に緩んできていた頬をそのままにガープさんと会話を続けていれば、後ろから結構な勢いでの衝撃が来た。前につんのめりそうになるのを何とか抑えて後ろを振り返れば、そこにはガープさんから視線を外さずに、俺にしがみついているルフィの姿があって。その姿を見たら、何だかまた彼が少年の頃の事を思い出して、俺はすぐさまガープさんの方へと再度視線を戻した。
「・・・ガープさん、またルフィに何をしたんですか?」
「ん??あァ、少し愛ある説教をじゃな!ったく、海賊になんぞなりおって!」
「だ、だから、俺は海賊になりてェって言ってただろ!!」
「黙っとれ!!それにじいちゃんにまたそんな口の聞き方をっ!!」
「ギャーっ!!」
「ああもう、ほら、ガープさん落ち着いてください、ね?」
「「「・・・(は落ち着きすぎじゃないのか?)」」」
ガープさんが俺を飛び越えてルフィをまた説教しに行こうとしたから慌ててそれを止めに入る。ルフィにそうして説教をする光景も、それを止めに入るのも、昔と変わらないそれらに懐かしさを感じながら、再び俺を後ろから抱きしめてくるルフィの頭をそっと撫でる。(たぶん、もう既に何発かくらっているんだろうな)(ガープさんのあれは痛いから・・・)
「だいたい、まで海賊になんぞなりおって・・・ワシが無理矢理にでも連れて行くべきじゃったかな。」
「 ふふ、すみません。」
大きな手が俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。少しだけ顔をしかめてガープさんがそう言ってきて、俺はその心地よさに笑みを零しながら一応謝罪の言葉を声へと乗せた。本当に昔からこの家族には、それはもう色々な意味で楽しませてもらったな、なんて、その思い出が目の前でまた繰り広げられる事になるのを、ルフィが俺の前へと出て言葉を放つまで、俺は全く予測をつけていなかった。
「 それは駄目だ!は俺のだぞっ!!」
「・・・ルフィ?(これは、また・・・?)」
「やかましい!はワシの可愛い子じゃ!!お前になんぞやらんっ!!」
「い、いや、ガープさんも、何を張り合って、」
「じ、じいちゃんの子どもじゃねェだろ!それに、は俺のモンだっ!いくらじいちゃんでも、渡さねェからな!!」
「(・・・どちらも何だかおかしな言葉が入ってる気がするんですが、)」
俺の目の前で続くその言い合いは、どうやら俺の意見を通してはくれないようで。俺の言葉にかぶって放たれるその言葉の応酬に、助けを求めようと仲間の方を見やるのだけれど、俺の視線があった彼らは首を横に振ったり、頑張れとこちらに応援をしたりと、・・・案の定、俺を助ける気は内らしかった。(・・・いや、気持ちは分からなくもないけれど、)(それにしたって、みんながみんな・・・)
「俺の方がを好きだっ!!」
「何言っておるんじゃ!ワシの方が愛しとるに決まっておるじゃろっ!」
「俺だっ!」
「ワシじゃっ!!」
「・・・2人とも、お願いですから、1回落ち着いて、ね?」
だいたい、ガープさんの部下達も何で止めに入ってこないんだ?一応、上司を止めるのも部下の役目じゃ・・・?なんて思い立ち、今度は海兵の人達へと目をやるのだけれど、おかしな事に、彼らはすぐさま俺から視線を外してしまった。(・・・この、)
「は俺が好きなんだっ!なァ、!!」
「ワシを好きに決まっておるじゃろ!のう、!!」
「・・・いや、あの、どちらも、好きです、けれど・・・」
「ホラ見ろ!は俺を好きだって言ってんじゃねェか!」
「ホレ見ィ!はワシを好きだと言っておろう!」
「(・・・俺にどうしろと?)」
恐れながらも俺のために言ってくれているルフィに付くべきか、それとも昔から俺にいつも笑みを浮かべて良くしてくれていたガープさんに付くべきか、けれど、どちらかに付いた所でこれに決着がつくとも到底思えなくて。
「・・・(2人とも、頑固だから・・・)(本当、どうしよう、)」
俺が途方にくれている最中、迷っていてこの家へと戻るのが遅くなったゾロがまさかこの言い合いを止めてくれるきっかけを作ってくれるなんて、夢にも思っていなかったのだ。
その一発を引き当てろ
ゾロの迷子癖を心底有り難いと思った、そんな瞬間だった(ほんと、助かった)
title by 赤小灰蝶 / その一発を引き当てろ