白ひげ海賊団にも日課、というものはあるわけで。それは見張りだったり掃除だったりと様々だけど、そんな日課も交代制で行われる。これだけ人数も多かったら当たり前なんだろうけど、そんな交代制で行われるはずの日課の中にも、“ある光景を見かける”なんて少しおかしな、そしてこれは強制的なものではなくて、むしろ日課と“なりえてしまった”と言うべき日課が1つだけあった。


「 おらっ、マルコ!いい加減退けよっ。」
「退ける訳がねェだろい。そんな事したら、が起きちまうよい!」
「「「・・・・(始まった、)」」」


1番隊隊長であるマルコ隊長と、2番隊隊長であるエース隊長。この白ひげ海賊団ではそれはもう偉大な隊長の2人であって。彼らが戦闘しているところなんて片手で数えるくらいにしか見た事がないけれど、本当に、凄いとしか、形容ができなかった程だ。そんな偉大な、みんなの憧れでもある、そんな隊長達の今の姿と言ったら、まあうん、これもある意味、凄いとしか形容できなくて。


「エースこそ静かにしろよい!せっかく俺の膝で気持ちよさそうに寝てるを起こす気かい?(はっ)」
「(ブチッ) 良いか、マルコ。お前ェの膝でが寝てるのは偶々そこにお前ェの膝があったからだぞ!普段は俺の膝で寝てるんだっ!(はんっ)」


本当にあの偉大な隊長達の間で行われているのだろうかと疑われても言い逃れの出来ないようなそんな子どもがするような言い合い。けれどそんな言い合いに周りにいる仲間達は驚く顔を見せる事無く、むしろ呆れた様子で見慣れたそれで見物したり普通に横を通り過ぎたりしていた。入り立て頃にこの光景を見た時は驚きやらショックやらで開いた口が塞がらなかったけれど、今では俺も呆れながらその光景を見られるようになったのだから、人間の慣れというのは凄いものだと思う。

ああ、話がそれた。そんな見慣れた光景の中、2人の隊長がこんな低能な言い合いをして取り合っている人物は、2番隊に所属しているさんと言う人なんだけれど、今日はその当の本人はマルコさんの膝の上に頭を乗せて気持ちよさそうに寝ているようで。


「(ああ、だからあんなに声を小さくして言い合っているのか、)」


ひそひそとそれでいてマルコさんの方は足をぴくりとも動かさずエース隊長と言い合って、エース隊長は自分の片手をさんの額に置いて器用に優しいその手つきで撫でているのだから、凄いというのか何というのか。起こしたくない気持ちが同じなら言い合いなんてしなければ良いのになんて思うのだけれど、それができないからこうして言葉が飛び交っている訳で。


「  ジョズ隊長、」
「ん?どうした?」
「・・・あれはいつになったら終わるんでしょうか?」
「・・・俺にも分からない。」


隣で一緒にそんな3人を眺めていたジョズ隊長にそんな間抜けな質問をすれば、隊長から返ってきたのはある意味期待通りなその言葉。「 ですよねー。」 なんてまたふぬけた声でそう返す俺。あの2人がその言い合いを終えるのはいつだってさんから放たれる、その一言で。他の誰が同じ事を言ったって聞きやしない隊長2人がさんのその言葉には2人とも何とも速く反応を見せるのだから、俺はこんな人達が隊長で本当に良いのだろうかなんて思ってしまう時が偶にある。けれどそれで成り立つのが、この白ひげ海賊団なのだ。いつだって彼らを止めるのはさんのその一言か、


「   ん、」
「  、起こしちまったかい?エースがうるさかったかい?」
「なっ、マルコだって変わらねェだろうが!」


どうやらさんが目覚めたらしい、マルコさんの膝からゆるりと身体を起こしたさんはまだ眠たそうだった。頭上で飛び交う言い合いを気に止める事もなく、さんはゆっくりと立ち上がって、


「ん?、何処へ行くんだい?  っ!?」
「おっ、?何処へ行くっ!!?」


立ち上がったさんが、隊長2人のその言葉に返事を返すことなく今にも降りそうな瞼を擦りながら、何とかたどり着いたその先には、


「   おやじ、さん、」


我らがオヤジ殿がいるのであって。


「   、」


オヤジがゆるりとさんの名前を呼んで自分の膝を叩けば、さんの顔には嬉しそうなその笑みが浮かべられて。それからさんは、二度寝と言わんばかりにオヤジのその膝へとゆっくりと頭を乗せて、オヤジにゆるゆると頭を撫でられるのを幸せそうな笑みを浮かべながら受け入れて、それから口をゆっくりと開いて、


「  だいすき、です、  おやじさん、」


なんて舌足らずでひどく愛らしい声でそう言葉を紡ぎ出して、さんは夢の中へと旅立ったのだ。そんなオヤジとさんを眺めながら俺達も笑みを浮かべて、隊長2人はひどくショックを受けたような表情を浮かべて。    ああ、今日も平和な1日だ。

勝者だけが愛を得られる

これが、俺達の日課です



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