足が布団から出てしまっていたのだろうか、何だか妙に冷たくなっている足の先をもぞもぞと布団へと再度入れる。肌に触れたその冷気から、何となくだけれど、まだ起きる時間ではないと思って、まだ覚醒し始めるにも至っていない意識を沈めたままにしておこうと、かぶっていた布団へとさらに深く潜り込んで夢の中へと落ちようとしたのだけれど、


「(・・・あ、 れ、)」


額から頬へと流れるように伝わってくるその心地よい感覚に、つい意識を持って行かれてしまう。心地よいなら、そのままそれに身を委ねて眠ってしまおうと思うのだけれど、不思議な事に、その感覚は心地よいのはそうなのだけれど、俺の睡眠を促すようなそれではなかった、 むしろ、俺に起きて欲しいと言わんばかりのようなそんな感覚が俺を襲ってくる。


「  ん、?」


寝ようとしていたはずなのに、起こそうとしてくるその不思議な感覚に何故だか俺は自ら擦り寄るようにして、近づいていってしまって。自分の行動に思わず疑問を抱きながらも、その心地よい感覚が額と頬だけでなくて、全身を包むように襲ってきたように感じられて、思わず頬を緩めてしまいながら、それに身を寄せていると、


「  これだから、無意識ってやつは困るよい。」
「 え、?」


その感覚の中を漂っていれば、ふとその感覚から聞こえてきたのは聞き覚えのある、いつも聞いている、愛しくてたまらない声で。不意に響いてきたその声に、思わず俺は間の抜けた声を出してしまいながらも、すぐに聞こえてきたその声は自分の夢の中で発せられたのだろうと思う事にして、夢の中でまで彼を登場させてしまった自分に恥ずかしさを覚えながらも、それでも響いてきたその声に笑みを浮かべさせてしまっていれば、再度、彼の声が聞こえてきて、


「  何だ、起きてるのかい?」
「  ・・・へ、?おき、て、る?」


響いてきたその声に、また情けない声をあげてしまって。起きて、る? 夢を見ているはずなのに、起きているって、どういう事だろう?俺は、夢の中で、また重ねて夢を見ていたのだろうか・・・?ああ駄目だ、全く思考が働かない。・・・でも、そういえば、俺を襲ってくる不思議なその感覚が、やけに研ぎ澄まされているような、


「 、」
「マ、ルコ、さん?」


呼ばれた自分の名前に、反射的にその声の主であるその人の名前を紡ぎながら、そのまま閉じているつもりだったその瞼をゆるりと開いて見ることにする。朝特有の差し込む光は俺の目には入る事はなかったけれど、その代わりに視界へと入ってきた、その色は、


「  ・・・夢、ですか?」
「 まだ寝ぼけてるのかい?」


「 それとも、本当に夢であって欲しかったのかい?」 くつくつと喉の奥で笑い声を漏らしながらそう言葉をかけてくるマルコさん。思考が低下していながらも、彼のそんなずるい言葉を何とか理解して、ゆるゆると俺の髪の毛を弄っているマルコさんへと「・・・そんな訳、ないじゃないですか、」 なんて言葉を紡いで、目の前にある彼の胸元へとさらに顔を、身体を寄せる。


「  いつも、それだけ素直だったらなァ?」
「・・・朝、限定です。」
「そうかい。そりゃ、残念だよい。」


「まァ、何時のでも、愛しいって事には変わりねェが。」 自分の胸元へと身を寄せていた俺をさらに引き寄せるようにして腰へとその腕を回したマルコさんはさらりとえらくとんでもない事を言いのけて。普段の俺であったら、顔を赤くするどころじゃすまないような言葉を紡いだ気がするけれど、タイミングが良いのか悪いのか、今の俺は、朝方の、しかも起き抜けの、思考が、理性が、一番働いていない時であって、(・・・マルコさん、まさか狙って、?)


「  マルコ、さん、」
「ん?何だよい、?」
「 ふふ、俺、大好きですよ、あなたのこと。」
「あァ、知ってるよい。」


そんな、恥ずかしい会話をしているという自覚はあるし、こんな会話をしたそんな朝の日は、あまりの恥ずかしさに赤く染まってしまった頬を沈ませるまで、ずっとベッドから出られないやらで、いつもより早く起きたはずなのに、いつもよりも遅く食堂に行く羽目になってしまうのだけれど、 でも、


「  愛してるよい、


分かっていてもやめられないのは、寝起きの俺にそんなずるい事をしてくる愛しい人の所為か、それとも、

一緒に寝る

「これだから、止められねェよい。」なんて楽しそうな笑みを浮かべるマルコさんを視界に入れながら、朝は始まるのだ。