ッ!!」


まだ日が昇り始めて間もないそんな時間に、いつもなら俺よりも先に起きているはずのない彼の声が俺の名を呼んでいるのを耳にした。夢の中で彼が俺を呼んでいるのかと思ったけれど、どうやらその声は、布団にくるまっている俺の身体を揺らしてくる彼の手の感触は、夢ではないらしいと俺の脳内が判断したようで。
ゆるゆると下ろしていた瞼をゆっくり開ければ、そこにはえらく目を輝かせてその顔に嬉しそうな笑みを浮かべていたルフィの顔に、最初に見るはずの天上よりも先に焦点が合った。


「   おはよう、ルフィ。」
「おう!それよりッ、早く起きろって!!」


視線がかちりと合った瞬間、俺の挨拶に軽く返事をしたルフィは俺の腕を引っ掴んで急かすようにぐいっと俺の身体を起こさせる。瞼を開けたは良いものの、まだ寝惚けている俺の身体はルフィのされるがままに動いて。とても楽しそうに目を輝かせて、「早く、早く!」と急かすルフィを横目に、何やら冷たい空気が自分の体へと直接伝わってきたのを感じた俺は、ルフィがそんな顔をしている理由が何となく想像できて、思わず苦笑を漏らす。


!」
「 ふふ、そんなに急がなくても逃げやしないよ。」


ゆるゆると立ち上がって、自分のロッカーからコートとマフラーを身に纏う。一応、手袋も持っていった方が良いだろうか、なんて考えながらポケットへとそれを入れていると、どうやら我らが船長の我慢にも限界が来たらしい。のんびりと準備をしている俺の手を勢いよく掴むと、「よし、行くぞ!」なんて言って、部屋の扉を思いきり開けて、


「見ろよ!!芝生が真っ白だ!!」
「 まさかこんなに、」


広がる一面の雪に思わず、息を呑んだ。降り始めた最中で、そんなに積もっていないだろうと思っていたのに、どうやら寝ている間にも降っていたらしい。ルフィの言葉のままに、目の前に広がるはずの緑色はどこにも見当たらなかった。


「うっひゃー!冷てェ!!」 


そんな視界に広がる雪へとルフィはすぐさま手で触れて、冷たいと言いながらも嬉しそうに手の跡を残しては雪を掴む事を繰り返す。雪の上を走って空からちらほらと降るそれらさえも捕まえようとする彼を見ているだけで、何だか自分の体温が上昇していく気がするのだから、本当におかしな話で、


「ほら、も一緒に遊ぶぞっ!」


未だにドアの側に佇んで、ルフィの楽しそうに笑みを浮かべている顔を見ながら降ってくる雪を眺めていれば、そのルフィからそんな声がかけられる。普段は寒いからと言ってこうして雪の降る日は甲板に出たりしないのだけれど、偶には良いかもしれない、なんて思いながら、彼の側へ行こうとしたのだけれど、


「 ルフィ、その距離でわざわざ手を伸ばさなくて、っ!!」
「うおっ!!」


既に彼は俺の返答の有無を関係なしに、遊ぶ事を決めていたらしい。俺の所まで伸びてきた手はコートをしっかりと掴むと、落ち着くべき場所に勢いよくその腕は戻っていった。そんな事をすれば、当然のように、彼の手に掴まれていたコートも、そしてそのコートを着込んでいた俺も、彼の元へと勢いよく向かっていく訳で。


「  ・・・ルフィ、」
「なっはっは!ちょっと勢いがありすぎたな!」


そして、手を伸ばしてきた彼自身もその力の度合いを判断していなかったようで、飛び込んできた俺を受け止めてくれたは良いが、その反動を押し殺しきれず、そのまま真っ白の芝生へと見事なダイブをかましてしまった。咄嗟に、位置だけは入れ替える事が出来て、薄着のルフィを雪の上へと突っ込ませてしまう事は避けられた。


「  ほら、マフラーだけでも着けた方が良い。風邪をひくかもしれないだろう?」
「にししっ、おうっ!!」


彼の言葉に呆れてため息をつくのだけれど、目の前で嬉しそうに笑みを浮かべられれば、何とも怒る気が失せてしまうのだから、俺も仕方のない人間で。俺の上に乗っかっている彼の首元へと、自分の巻いていたマフラーを取ってゆるりと巻く。「少しはましか?」 その言葉に、大きく頷いてくれたルフィ、そんな彼の反応を見て俺も笑みを浮かべていれば、けれど彼は俺の上から離れようとせず、むしろ先程よりも身を寄せてきて、「  ルフィ?」そんな彼の行動に、疑問符を浮かべながら彼の名前を口に出すと、


の巻いたマフラーもあったけェけど、」


「こうしてる方が、ずっとあったけェぞ!」 なんて少しだけ赤くなってしまっているその顔を俺の胸元へと擦り寄せながら、嬉しそうにそんな愛しい事を放ってくれるものだから、

雪上を転げ回る

雪の上、なんて事も忘れてしまいそうになりながら、彼の背中へと腕を伸ばしてしまうのだ。