「 ふふ、良い天気ですね。」
何となく頭に浮かんだその言葉を出せば、「あァ、こうして散歩すんのには絶好の日だよい。」 なんてマルコさんから返ってくる。きっとその時の俺の顔といったら、もうひどい事になっていたんだろう。締めようにもそうする事が出来ない、緩みきったその顔をマルコさんへと向けながら、会話をぽつりぽつりとしていれば、「 、」
「何ですか?」
「 顔、緩ませすぎだよい。」
マルコさんが不意に立ち止まって俺の名を呼んだから、俺の足も自然と止まって彼の方へと顔が向いた。そうすれば、マルコさんは俺の頬へとその手を伸ばしきて指をそっと這わせたかと思えば、とても楽しそうな表情を浮かべながら、そんな言葉を放ってきて。言い返そうにも事実であったから反論する余地もなく、「・・・自覚はありますよ、」 なんて言葉しか吐き出す事しかできなかった。
「 もう、何ですか?」
くつくつと、笑みを漏らしながらも俺の方へと視線を絡ませたままのマルコさんは、ひどく優しい顔で、優しいその手つきで、俺の髪やら頬やらと滑らせてあそぶ事をするだけで、俺には何も言葉をかけてこなくて。居心地が悪い、なんて事は当然ないのだけれど、でも何だか、マルコさんに自分の顔の緩み具合を指摘された後だったからか、何だかじっと見られるのが気恥ずかしくなってしまって。
何秒経ったか、何分経ったかなんて判別できなかったけれど、マルコさんに視線を絡まされたままその笑みを見ていたのだけれど、結局俺の方が先に折れてしまって、赤くなってしまっているであろうその顔をマルコさんから目の前に海の方へと移動させた。それから誤魔化すように、「 潮風が気持ち良いですね。」 なんて言って海の方へと向かっていこうとしたのだけれど、
「 う、わっ、」
後ろから強く腕を引っ張られて、為す術もなく、ぶれていた焦点が漸く絞られたかと思った時には、目の前には白ひげ海賊団の印であるそのマークが俺の目の前に広がっていた。
「 ま、マルコ、さん?」
突然のそれに、俺は目を見開いて彼の名を呼ぶ事しかできなくて、けれどマルコさんは・・・今は彼の胸元しか見られないが、それすらも何だか楽しんでいるような気がしてならなかった。実際、俺は驚く事はしても反射的に彼から離れるなんて事をしなかったし、彼に抱きしめられていると理解した今でさえも、その心地よさから離れたくなくて、気が付けば彼の背中に腕を回そうとしている自分がいた事に、俺は人知れず深く息を吐いてしまった。(・・・これだから、無意識っていうやつは、)(それでも、離れたくないと思ってしまうのは、)
そんな事を脳内に巡らせながらマルコさんの言葉を待っていれば、ようやく彼は喉を震わせてくれた。それと同時に、耳元に彼の息が触れて、何だかくすぐったい気分になって、
「お前が海を好きなのは知ってるが、あまり遠くに行くなよい。」
「 俺自身がを助けにいけねェだろい?」 息が触れたその後に、今度は耳元で彼の心地よいその声が響いてきて。聞こえてきたその言葉に、案の定、俺の耳は、顔は、熱の集中攻撃にあってしまう訳で。けれどマルコさんはそれに追い打ちをかけるようにして続けざまに言葉を放つものだから、俺は彼の胸元へと熱にやられてしまったその顔をダイブさせるのだった。
「まァ、遠くになんて、行かせやしねェがな?」