本当にあの監獄なのだろうかと思わせるほど、今日もがやがやと賑やかであるLv.5.5番地。「も見てるだけじゃなくて、一緒にやりましょうよ、ほら!」 なんて言ってくれる人もいるのだけれど、生憎俺はそれにゆるゆると笑えているのかどうかさえも自分で分からないようなその笑みを浮かべる事しかできなくて・・・まあそれは、俺が酔っている事を示しているのだけれども。


「  いくら酒に強いからと言って、飲み過ぎだと思うが。」


そんな俺の隣に腰をかけて俺にそんな一言を放ってくるのは、ワインを片手に持っているイナズマさんその人であって。事実なのだけれど、こうもあっさりとその事実を突きつけられてしまい、俺の口からは「・・・断れなかったんです、」 なんて言い訳のようなそれしか紡ぎ出す事ができなくて。


「  君らしい理由だな。まあ、飲み過ぎな事に何ら変色はないが。」
「・・・(またあっさりとそんな事を、)」


俺が苦しんでいるのを楽しんでいるのか、そうでないのか、その色をうかがい知る事は出来なかったけれど、あからさまに言葉にはその色が含まれている気がしたのは俺が酔っているからとかそういう理由ではないと思う。けれど、言葉ではそんな事を言いながらも俺の背中に手を置いて、優しくその手を上下に動かしているのも、イナズマさんであって。


「  あっちに、イナズマさんが、好きそうなワインがありましたよ。」


「飲んできたら、どうですか?」 これ以上イナズマさんに迷惑をかけては、と舌足らずになりかけながらも何とかそう言葉を発して、彼を見上げてみれば、何故だか一瞬、さすってくれていた彼のその手がぴくりと止まった気がして、グラスに入ったそのワインがゆるりと揺れた気がして。何か変な事を言っただろうか、なんて頭にそんな事を過ぎらせている時、俺は何故だか浮遊感を覚えて。


「わっ、  あ、あれ??」
「・・・狙ってやっているのか?」
「はい? というか、この、かっこっ!!」


その浮遊感に、当然の事ながらおかしさを感じた俺は顔を左右に振って今の状態を慌てて確認しようとするのだけれど、すぐに俺の視界に広がったのはイナズマさんのその顔であって。何で彼の顔がこんなに近くの距離にあるのだろうか、なんてそんな疑問を思い浮かべる前に、彼のその言葉に返事をしようと震わせていた俺の唇が、何かに塞がれた、そんな感覚に全神経を奪われて、


「   いなずま、さん?」


未だに俺の視界をいっぱいにしている彼のその瞳、は見えないのだけれど、何故だか扇情的なそれが、映っているように見えて。俺が酔っていてそう見える所為なのか、そうでないのかは分からないけれど、とにかくそんな色を彼の瞳に見た気がして、というか今自分の身に何が起こったのかを把握していなくて、彼のその名を完全に舌足らずなそれで呼ぶ事しかできなかった。そんな俺を見たイナズマさんは口の端をゆるりと上げて、額に自分の唇を押しつけて、


「無理はさせないよう努力はするが、」


「私を煽り立てた代償は、相当大きいものだぞ。   、」 なんて訳の分からない言葉を放てば、俺の感じているこの浮遊感をそのままに、イナズマさんはスタスタと華麗に歩を進めていったのだ。(・・・それと同時に、俺の視界まで変わっているのは何故だろう?)

お姫様抱っこ

彼の言葉の意味を理解したのは、いつだっただろうか(・・・お、覚えてないなんて、まさかそんな、)