「 何締まりのねェ顔してんだよい。」
久しぶりに一緒におつかいをしたことに嬉しさを感じながら歩いていれば、そう言葉を紡ぎ出したのは俺の隣にいる、マルコさんであって。俺の隣にマルコさんがいるなんて事は彼と一緒におつかいができると分かった時からすでに理解しているし、すべての意識をその事に持っていかれていたはずだというのに、俺はそんな彼の言葉に「へ?」なんてまた何とも情けない声で返事をしてしまって。
「何がそんな顔をさせてんだい?」
おつかいで買ったものが入った紙袋を腕に抱えているマルコさんはそんな俺の返答がおかしかったのか、笑みを浮かべながらその紙袋を抱えていない方の手を俺の顔へと伸ばしてきて、俺にそう言葉を返してきた。いつもなら、何の気無しに返答するその言葉だって、今日は何だか気恥ずかしく思えてしまって(だって考えていたすべとの事が貴方の事だったなんて、)(しかもそれがとてつもなく嬉しく思えてしまったなんて事・・・)
「 まァ、俺も人の事言えねェけどよい。」
「 え、?」
いつの間にかその場に立ち止まって、マルコさんの言葉に体中の熱が顔へと奪われながら、素直に親父さんのおつかいにこうして隣を歩いて貴方一緒にいることが嬉しくて、なんて答えてしまおうか、そんな事を頭の中で巡らせていれば、俺の言葉が喉を通る前にマルコさんからそんな言葉が放たれて。
「・・・あの、マルコさん?それって、あの、」
俺とこうして隣を歩いて一緒にいることが、 なんて訊こうとしたのだけれど、そんな自惚れのような言葉を紡ぎ出すのにはやはり結構な勇気が伴わないといけなくて。もし違っていたらどうしようとか、彼の事だからそんな事はありえないはずだとそれこそ自惚れに近いような思いを心の奥底で思いながらも、言い淀んでしまう。けれどマルコさんはそんな俺の思っている事をまるで見透かしているかのように、俺に欲しい言葉をくれて。
「の思ってる通りで合ってるよい。」
「嬉しくねェはずがないだろう?」 なんて愛しいその笑みを浮かべながらその愛おしすぎるそんな言葉を紡ぎ出すと同時に、言い淀んで微かに震わせていた俺の唇へと自らのそれを降らせてきてくれるのだ。(ああもう、マルコさんも、俺も)
***
オヤジのおつかいに出かけるに一緒に行っても構わないかと訊けば二つ返事で頷かれてこうしてオヤジのおつかいを終えて船へと歩を進めていたんだが、ふと隣を見てみれば、頬を緩みきらせた顔を何の気無しにそこら辺にいる奴等にもお構いなく晒しているの姿が目に入って。
「 何締まりのねェ顔してんだよい。」
思わず出てしまったそんな言葉に、は俺から出て来たそれに過剰に反応を示して何ともふぬけた声で返事をしてきた。そんな声がおかしく聞こえちまって思わず顔を緩めてしまいながら、「何がそんな顔をさせてんだい?」 と今度は別の言葉でへとその理由を聞き出そうとするんだが、そんな俺の言葉を理解すると共にの顔はそれに伴って赤くなっているように見えて。(これは、もしかしなくとも、)
「えーと、ですね、それは、その・・・」
言い淀みながらも俺にその理由を伝えようとしているを見て、ようやく俺はその締まりのねェ顔になってしまった理由を理解できたような気がして。だがそれは一種の自惚れになっちまうんじゃねェかと思ってしまうそんな理由だったモンだから、そしてこれ直接的に言っちまえばのその赤くなっている顔にさらに熱が集中しちまうんじゃねェかと思ったから少しばかり遠回りな言い方をすることにして(の赤らんだ顔を見ても良かったが、)(そんな顔を、見ず知らずの人間にまで見せる必要なんかねェと思ったんだよい)
「・・・あの、マルコさん?それって、あの、」
そんな俺の言葉に少し経ってから、はまた言い淀むような反応を見せてきて。自惚れかもしれねェなんて思っているんだろう、「う、えとですね、マルコさんも俺と、」 なんて言いかけてはまた最後の最後で言葉を飲み込んで、と俺に視線を合わせて下を向いてと一緒にそんな事を繰り返して。が最後まで言葉を紡ぎ出してくれるまで待っても良かったんだが、それよりも前に俺の思っている事が自惚れなんかじゃねェという事が分かってしまって、俺の理性の方が我慢できなくなっちまって。(自惚れなんかじゃねェなんて事、意識の奥底ではとっくに分かっていた事だったんだが、)(それでもこうやって分かりやすいくらいに行動に出されちまうと、)
「嬉しくねェはずがないだろう?」
喉を震わせてそんな言葉を吐きながらの唇へと自分のそれを落とせば、「 もう、マルコさん、」 なんて言葉ではそんな事を言いながらも、愛おしすぎる笑みを浮かべながら、その震わせた唇を今度はから俺へと寄せてきてくれるのだ(ったく、俺もも、)