「ん?何かね、?」
俺の上に覆い被さるという状態を自らが作っておきながら、俺の言葉に白々しく返事をしてくるレイリーさん。いつものように余裕のあるその笑みを浮かべて俺を見ているレイリーさんは、その笑みが物語っているように本当に余裕なのかどうかは俺には分からないが、とりあえず、この体勢から逃してはくれないのだろう事だけは、嫌にでも理解した。
「何かね、じゃないです。というか、俺が訊きたいんですが。」
「何だ、私はてっきり、もう理解しているものだと思ったのだが。」
「 違ったのかね?」 俺の白々しい言葉に、レイリーさんは言い逃れも何もできないような直球を投げてきて。俺が理解しているからこそ、その笑みを浮かべたままでそう言い放ってくる彼は、ここで俺が押し黙るという選択をしない事すらも分かっていたのかもしれない。
「さて、どうでしょうね。少なくとも、俺の脳内では理解するなと危険しん、っ、」
言いたい事を言い終わる前に俺の言葉が途切れてしまったのは、目の前にいたレイリーさんが俺の唇へと自分のそれを重ねてきた所為だ。間から漏れる吐息に、耳に響いてくる妙に艶めかしく聞こえてくるその音に、悲しい事に俺の身体は熱を帯びてきてしまった。(ああもう、)
「ん、 ふ、」
隙間から難なく俺の咥内へと入ってきたレイリーさんの舌に、俺は抵抗する術もなく侵食されていって。ざらりとしたその感覚が俺の神経をくすぐって、ぴくん、と恥ずかしいくらいに身体へと反応が伝わっていってしまう。つい、出てしまう自分のそれではないだろうと思ってしまいたくなるような、そんな情けない声すらも抑えきれないでいれば、漸く、レイリーさんの唇が俺のそこから離れていくのを感じた。
「 、人の話、は、最後まで、聞くもの、でしょう?」
息も絶え絶えになりながらも何とか憎まれ口だけは叩く俺。そんな俺に対して、レイリーさんはというと、先程よりも俺と身体も顔も近づけたまま、先程よりも妖艶めいた笑みを零していた。何も言わないまま、少しの沈黙が部屋を支配したかと思っていれば、細くも大きなその手を、どちらのそれで濡れているのか分からない俺の唇へと伸ばしてきて、触れて、
「焦らすのは好きだが、」
「焦らされるのは、あまり得意にしておらんことくらい、君も知っているだろう?」 ・・・知るか、そんなもの。 そう言いたくなるような言葉を俺の耳元で紡いだレイリーさんは、やはり俺の返事を聞く気はなかったようで。俺が喉を震わせて音へと変える前に、俺の唇へと触れさせていた指で一撫でしたかと思えば、そのまま再度深く入り込んできた。
「(・・・貴方って人は、本当に、)」
・・・最終的に行き着く先は、過程はどうであれ同じであるわけだが、憎まれ口なり、何なりと、何だかんだ言いながらも、結局は俺もレイリーさんから降ってくるそれをすべて受け止めているのだから、彼と同じ仕方のない人間であって。けれどそんな自分を棚に上げて、そんな事を思いながら、俺は彼の首の後ろへと自分の腕を伸ばしたのだった。
夜に濡れる口唇
そんな俺の行動に、笑みを深めた彼の顔を薄く開いた瞳の先に見た気がした
title by Seventh Heaven / 夜に濡れる口唇