「よし!!!」
「ん?どうかしたのかい? 朝食が足りなかったの・・・」
「森に遊びに行くぞ!!」


麦わら海賊団が「名も無き島」へとやってきて1週間、「なァ!次の島に行くまでここに居ても良いかっ?」なんて既にという名の青年を信用してしまっていた彼らの船長から発せられたそんな言葉によって、彼らはこの島の住人である彼の家に世話になっていた。




「へ? あ、わ、 ちょっ!」


朝食後、いつもより多くなった食器を1つ1つ丁寧洗っていたに、バタバタとキッチンへやってきて声をかけたのはルフィだった。突然の遊びの誘いに、もちろんそんな事を言われると思っていなかったは咄嗟にその言葉を理解できず、けれど声をかけて当の本人はといえば、そんなの様子をそっちのけでぐいぐいと彼の腕を引っ張ってキッチンからリビングへと連れ出していく。


「ほらっ、はやく行くぞ!」
「あ、いやっ、まだ洗ってない食器が、」


ルフィがの腕を掴んだまま、リビングを突っ切ってそのまま小口へと突き進もうとしていた時、ようやく先程のルフィの言葉を理解した。泡だらけの自分の腕をルフィとは反対方向に引っ張る事で何とか一時的に踏みとどまらせると、ルフィの方も「何だ?」とようやくの言葉を聞く気になったらしい。けれどそれも束の間で、の口から仕事の話が出てくると再度足を扉へと進ませようと動かし始めた。


「あァ、それなら俺に任せとけ。いつも世話になりっぱなしも悪ィしな、」
「よし、任せたぞサンジ!」
「いや、客人にそのような事をさせるわけにもいかなっ、わっ、」


途中で話に入ってきたサンジのそんな言葉と、「私も行ってみようかしら、」やら「いってらっしゃい。」なんてリビングで食後のコーヒーを楽しんでいた女性陣の言葉も相俟って、ルフィの足はさらに速さを増し、その彼に腕を掴まれていたも有無も言うことができないまま、いや正確には有無を言うことはできたがその有無は聞き入れられること無く、いつの間にか森の中へと遊びに行くことになっていた。




っ!これ、昼飯にできるかっ!?」
「ん? ああ、うん、これは食べられるものだから大丈夫だよ。」


「もう少し集めてくれるかい?あ、決して取りすぎないようにしてくれ。」家を出る時に少なからず渋ったものの、家を出て森へと入ってしまえば、は既に今の状況を受け入れ、探索を楽しんでしまっていた。木に登って果物を1つ見せてくるルフィへと返事をしながら、は同じ視線で歩いているウソップとチョッパー、ロビンの3人にも目を配らせる。


「長い間、海の中に沈んでいたとは思えない程の大きな木々ね。」
「ああ、俺も詳しくは読んでいないんだが、確かその事に関連する本があった気がする。」


この森は、えらく特殊な機能を持っているらしい。何十年間、何百年間と、沈んでいる期間の間、動物たちが生きていけるだけの酸素を蓄えるというものと、森全体に水が入り込まないように何かしらの膜を張る事が出来るというものなんだ。だから、ここの動物たちはこの島が海の中へと沈んでも陸と何ら変わることなく生活できている、らしい。


「えェっ!!こいつら、海の中で生活してたのかっ!?」
「ああ、そうみたいだ。本にもそう書いてあるし、この子達もそう言っていたから。」
「ん?言ってた?」


の言葉に彼の隣を歩いていたウソップがふと疑問を感じていると、ぴょん、と彼らの目の前に両手で抱えられる程の、小さな動物が現れた。それにいち早く気付いたのはで、一歩前へと足を進めその動物をゆるりと抱き上げた。


「どうした、こんな所で。」


訊ねたその声はひどく優しくて、その顔には笑みが浮かべられていた。首元を撫でてあやす姿はまるで親のようで、その動物も気持ちよさそうに眼を細めてに擦り寄り、ひどく懐いているようで。の声を聞いたその動物は、ある方向に一度視線をやってから、を再度見て可愛らしい声で鳴いた。


「ん、そうか。それじゃあ、少し進む方向を変えないとな。」
「おーい!ー!!こんくらいで良いか?」
「ん?ああ、ちょうど良い数だよ。一つ食べて見ると良い。あ、それから、方向を少し変えても良いかい?」


「この子が昨夜実ったばかりの果物を見つけたらしいんだ。」 そう言いながらはその動物をゆっくりと地面へと降ろした。案内してくれるか?と動物の頭を撫でながらがそういえば、肯定するかのようにその動物は嬉しそうに鳴く。

と動物にとってはいつもと変わりないそんな一連の動作に、木の上から見ていたルフィと同じ位置から見ていたウソップ達はひどく驚いていて。


は動物と話ができるのかっ!?」
「へェ!はチョッパーと同じ事できるのか!」
「ん? いや、君のように話せるって訳じゃない。ただ、何となくそう言っているような気がするだけだよ。」
「いや、それでも十分すげェよ。他の動物とも話せるのか?」
「ああ、何となく、なら。この子達とも結構長い付き合いだからね。」 


「彼らと共存したいと望んでいたら、自然と言いたいことが分かるようになったんだ。」 そう嬉しそうに言葉を紡ぐにつられるようにウソップ達も笑みを浮かべる。そんな和やかな雰囲気の中、ふと、に撫でられていた動物へと視線をやったロビンがぽつりと零した。


「・・・その子って、ライオンの子供かしら?」
「ん?ああ、そうだよ。確か、生まれて5ヶ月ほどは経つかと思う。」
「これがライオン!?はー、大人のライオンとは全く違うのな。」


後ろにいたロビンの言葉にが振り向きながら返事をすると、ウソップが驚きながらライオンの子を見やった。「こいつが、あの凶暴そうなライオンになー。」なんて暢気そうに放ったウソップの横で、またぽつりと、ロビンが言葉を放った。


「ライオンの子がここにいるって事は、親も近くにいると思うんだけど。」
「・・・へ??」


がさがさ、 ロビンがそんな言葉を紡いだ途端、達の先の方から木々が何かと擦れた音が聞こえてきた。ロビンの言葉を聞いた後だからか、ビクゥ!と必要以上に身体を震え上がらせて真ん中にいたロビンの後ろへと隠れるようにして移動したウソップとチョッパー。一方、はと言うと、その音にすら驚かずにその音源の方へとすたすたと歩いて行く。


「お、おいっ、!ど、どうすんだよっ!!」
「どうするって、朝の挨拶をしないと。」
「あ、朝の挨拶ってそんな悠長な事言ってる場合かっ!!」


「ライオンだぞっ、ライオンっ!!」慌てながらを止めようとする2人に、けれどは笑いながら何ともないと、返事をする。木の上にいたルフィも枝に足を引っかけてぶら下がるようにして、達の会話を楽しそうな顔をしながら聞きにきた。


「いや、そんなに怖いものでもないよ。慣れれば可愛く見えてくる。」
「へェ!可愛いのか!」
「ああ、可愛いよ。」
てめェは黙ってろルフィ!!つ、つーか慣れとかそういう問題じゃねェだろっ!」
「そ、そうだぞっ、っ!も、もし襲われたりなんかしたらっ、」
「ああ、確かに襲い掛かってくる時もあるが、あれも慣れたら受け止められるよ。」


「い、いやだからっ!!」一向に進めている足を止めようとしないへとさらに声をかけて、なんとか逃げるように説得しようとしていたそんな時、


「「ギャー!!!出たァー!!!!」」


よりもはるかに大きい身体をもった動物が、へと大きな声で吠えながら襲い掛かってきたのである。

森の中での大冒険

3つの声が森の中へと大きく響いたそんな朝は彼にとっては初めてで。

designed by SPICA