雪でも降るんじゃないだろうか、なんて思わせるようなその気温に、俺はひどく参りながら部屋にある掘りごたつの中でトランプを握っていた。我らが船長の一声で始まったそのカードゲームはどうやら強制参加のようで、俺の隣には渋々ながらもトランプを持っているゾロの姿が視界に入る。
「オウ!、お前ェの番だぞ!」
「あ、ああ、俺の番だったか。うーん、・・・じゃあ、これにするかな。」
こたつの中へと突っ込みたい、悴んでしまったその手を、もう一方の隣に座っていたフランキーに呼ばれて、ゆるゆるとカードへと伸ばした。これだけ人数も居れば、1人分の枚数こそ少なくなるが、それがペアになる確率も低くなる。今回、一番抜けするのは誰だろうか、なんて考えながら自分の手札を見ていれば、いつの間にか俺の身体はこたつから来る温かさだけでは物足りなくなってしまっていたらしく、
「 おい、。」
「んー、・・・少しだけ、」
何かに誘われるようにして、ゾロとの間に冷たい空気が入らないように身を寄せる。さすがにそれに気付かない彼ではなかったから、俺の名前を呼ぶのだけれど、その心地よさに縋ってしまったが最後、そこから離れろなんて事を言われてもなかなか身体は言う事を聞いてくれない。
「鍛え方が足りねェから、んなひょろい身体になんだよ。」
「・・・ゾロの鍛錬量と比べないで欲しいな。」
そんな言い合いをしながらも、決して無理矢理離そうとはしない彼に、思わず顔が緩んできてしまって。背中にある毛布とは違った、その人肌からくる温かさに軽い睡魔に襲われていれば、向かい側のルフィがあげた大きな声で下ろしそうになった瞼をゆるりと開く。ルフィを見やれば、ひどくしょんぼりとした顔をしながら隣にいたサンジに手札を差し出していた。(ふふ、ジョーカーをひいてしまったのかな。)
「(あと2枚、か。)」
ルフィの反応に思わず笑みを零しながら自分の手札を見やる。手にあるのは後2枚。中々それらに揃うカードをひけていないのだけれど、そろそろ来ても良い頃のはず。1抜けすれば、そのゲームが終わるまでは彼の膝を借りて猫のように丸くなっている事もできる。そんな彼の意志を無視した考えを脳内で膨らませていれば、フランキーからまた声がかかって何を考える訳でもなく左端のカードをするりと抜き取る。
「 お?」
「ん??何だ、?ババでも取ったのか!?」
「・・・そりゃてめェが持ってんだろ。」
「っ!!?サンジ、お前ェエスパーかッ!?」
「お前ェの反応が分かり易過ぎるんだよアホ!」
「俺、1抜け。」
ルフィとサンジが若干言い合い・・・というか、宴会芸のようなそれの間で、俺は一言そう放ってキングのペアをこたつへと置く。そして持っている1枚は隣にいるゾロへと移る事になる訳で。笑顔のままで、俺の声に反応したみんなへと視線を移せば、
「何だよー、またが1抜けか?」
「ヨホホ!運がお強いですね、さん!」
「えェ!?もう抜けたのか!俺、まだ5枚も残ってんのに!」
「・・・てめェは残り過ぎだ。」
方々から飛んでくるその声を聞きながら、俺は隣にいるゾロに挟んでいたそのカードを手渡す。隣から舌打ちのような音が聞こえてきた気がしなくもないけれど、今の俺はその音すら曖昧になるほど、ある考えが脳内をぐるぐると回っていた。「ほら、2抜けは誰になるかな?」 ババ抜きを再開させるような言葉を紡ぎ出しながら、俺はすぐ側にある、彼のその膝の方へと、
「な、・・・おい、。」
「ふふ、俺は少し休憩できるからね。」
「その間は、ここで暖を取る事にするよ。」 かぶっていた毛布をさらに深くかぶり直して、彼の了解のないままに、その膝へと頭を乗せて目を瞑る。少しだけ、彼は驚いたような声を出して、咎めるように俺の名前を呼んだのだけれど、結局のところ、彼は俺を甘やかしてくれる事を知っているから、(甘えてしまう俺も、俺だけど。)
「 、」
「ん?何だい、ゾロ?」
襲ってきたその心地よさに分かり易いくらいに上機嫌になりながら、彼の声に返事をする。毎日こんな日が続いても困るけれど、たまにはこうやって寒い日に人肌へと甘えて過ごすのも良いかもしれない、なんて思いながら彼の言葉を待っていれば、耳元で囁かれた、彼の返事は、
「 今日の夜は、覚悟してろよ?」
「こたつなんて比じゃねェくらいに、温めてやるからな?」 通常よりも、少しばかり低い声で、紡がれたそれは、俺の頬をひどく上気させる言葉であったのだった(・・・耳まで舐められた気がするんだが、)
ジョーカーは妖しく哂う
見上げた彼の顔は、分かり易いくらいに口の端が上げられていて、
title by Seventh Heaven / ジョーカーは妖しく哂う(企画/戦場に花束を)