「ん?ああ、ゾロ。」
サニー号の船縁に腰を掛けて何処までも深く青いそれを覗き込んでいれば、横から聞こえてきたそんな声。首を回してみればそこにいたのはやっぱりゾロの姿があって、「能力者って自覚があンのかお前は。」 なんてしかめっ面をしてくる彼に一応持っているつもりだけどと返答すれば胡散臭そうにこちらを見る瞳だけが返ってきた。
「・・・分かってる奴はそんなに身を乗り出したりしねェ。」
「少しくらい、大丈夫だよ。」
太陽の光を反射して一片一片が違う色に見える度に俺はその輝きへと近づこうと身を乗り出した。「だから、そんなに乗り出しってと、」なんて横からまた忠告をされてしまうから、仕方なく仰け反ることを自重して胡座をかきながら彼の方へと視線を移した。
「そういえば、何か用があったんじゃないのかい?」
「 ああ、また手合わせ・・・」
「お、魚がいる。」
「最後まで話を聞け。」
「うん?何か言ったか、っ!?」
「っ、おい!!」
魚を見たいが為にまた仰け反るようにして身体を傾けると、どうやら胡座をかいていたのが悪かったらしく重心がずれてそのまま海へと身体が引きずり込まれていく。
やばい、
瞬時に思ったその感情を抱いたまま落ち込むのだと思っていた最中、けれど視界に入ってきたのは深海の色ではなくて緑色の何かであった。
「落とすかよっ!」
「っ!!」
そのまま腕を伸ばしてきて俺の胸ぐらを掴んだ緑頭の彼は一本背負いをするかのように俺を海に落ちる前に船へと放り投げた。覚悟していた衝撃の代わりに来たのは、芝生の上とはいえ叩きつけられたようなそれであったから思わず言葉にならない声を上げてしまう。それから漸く、俺は彼に助けられたのだという事を理解したのだけれど・・・
「礼は言うけれど、もうちょっとやり方ってものが・・・(腰が、)」
「だから人の忠告は聞けって言っただろうが。」
「(・・・君も人の話を聞いた方が、)」
放り投げられたと思っていたのだけれど、意外と彼の近くに引き上げられたらしく、船縁に凭れて座っているゾロに背中を預けている形になっていた。「アホだろお前。」 深いため息を吐きながらそう言ってくる彼に情けないやら申し訳ないやらで返す言葉を見つけられなかった、
「(助けてもらった後に、こんなことをするのはいただけない事だと分かっているのだけれど・・・)」
「・・・聞いてんのか。」
「うん、聞いているよ。魚は綺麗だった。」
「(どこが聞いてンだどこが。)」
それらも理由の1つなのだけれど、彼に言葉を返せなかったのは彼の体温に揺られているのがひどく心地よくて、うとうととしてしまったのが一番の理由だったりするわけで。(それは海に揺られているかのような心地良さであって、)
「(駄目だ、寝てしまう・・・)」
「、いい加減・・・」
「・・・」
「こ、こいつ、(・・・寝やがった。)」
ゾロがそう声を掛けた時、俺はもう既に今度は夢の中へと落ちていった後であった。
それからどうしたのかは全く覚えていないのだけれど、彼は俺をそのまま寝かせてくれていたようで。漸く目が覚めた時に視界に広がったそれは、また緑色をしていたのは言うまでもないことかも知れない。
睡魔から抗う術を持たず
夢の中で聞こえたそれも、夢の産物だったのだろうか。
title by 赤小灰蝶 / 睡魔から抗う術を持たず