「(  ふう、)」


息を深く吐きながらソファへと腰を下ろす。1人では広すぎるそのリビングに「夫婦旅行してくるから、家の事はよろしくね!  母さんより。」 なんておかしな手紙をテーブルに置いて旅行へと出かけてしまった両親。まあ別に今に始まった事でもないし、半ば両親の仲の良さ、そして2人揃っての旅行好きには諦めている節があるから、それは良いとして・・・せめてもっと早くにそれを知らせてくれないだろうかといつも思う。


「(・・・それなら夕食の買い出ししておいたのに、)」


外に行くにも生憎の雪で寒さのあまり外にも出たくない俺は、冷蔵庫の中身を思い出しながら、軽食になりそうなものを考える。ああ、パスタがあったかも知れない、なんて思いながら、ひと息ついてキッチンへと立とうとしたそんな時、インターホンが部屋に鳴り響いたから誰だろうと思いながら玄関へと足を向けると、


ー?いないのか?」
「   シャンクス、さん?」
「なんだ、いるんじゃないか。」


「開けてくれるか?外は寒くて敵わん。」 ドア越しに聞こえてきたその声にすぐにピンと来た俺はその名前を紡ぐ。母さんがまた彼に旅行することを伝えたのだろうか、彼がここに来た理由を考えながらも寒いと言っている彼を早く部屋の中へと上げようとドアを開けた、そんな時、


「 ・・・なんて格好してるんですか。」


俺の視界に入る赤色は彼の髪の毛だけだったはずなのに、その色が今は全身を覆っていて。ついに目にまで疲れがと思い、目を擦ってもう一度彼の姿を見やるのだけれど、そこには間違いなく赤いその色が広がっていた。赤・・・なんて言い方をするとあれだけれど、つまり、目の前にいるその人は今日のイベント事である、サンタクロースの格好をしていて、


「近所の子どもにプレゼントを配ってたんだ。いやァ、それにしても雪が降るとは思わなかったな。」
「それで、そんな格好を?」


白く色づいているそのひげを頬から取り去りながらそう言葉を漏らすシャンクスさんに、ようやく俺はその格好の理由を理解する。それと同時に、今更ながらに今日がクリスマスだという事を再認識しながら、雪を取り払うのを手伝う。


「で、この家にその格好できた理由は何ですか?」
「ん?」


そうなのだ、彼がそんな格好をしている理由は分かったけれど、そのままの格好でこの家までくる理由ではない。彼の家から俺の家まで大して距離もないのだからここに来るにしても、そんな薄い服で来ることなんてしなくても一度家に帰ってここに来ればいい。なのに、目の前にいる彼はそれをしないまま、ここにサンタクロースの格好ままで来ていて。


「・・・風邪ひいたらどうするんですか?」
「何だ、心配してくれるのか?」
「当たり前でしょう?仕事に支障が来しますよ?」
「・・・心配するのはそこなのか?」


「俺の身体を心配してくれても、」 まるで子どものように唇を尖らせて拗ねる彼にサンタクロースがよく務まったな、なんて思いながら、「ふふ、もちろん、貴方の身体も心配していますよ?」なんて付け加えたように言葉を発すれば、それでも目の前にいるサンタクロースは嬉しそうに顔を緩ませていた。何だかんだ言いながらも俺も彼のそんな笑みに弱いから、そう言葉を付け加えたのだけれど、「風邪ひいたら看病よろしくな。」なんて言葉は聞かなかった事にしておく。(・・・色んな意味で風邪を移されそうだ。)


「この格好で来たのはな、にもプレゼントをやろうと思って来たからなんだ。」
「プレゼント?  でも、袋には何も入ってなさそうですけれど・・・っわ、 」


嬉しそう顔で放たれたその言葉に俺は彼の隣に置いてあった白い袋へと視線をやった。もう配り終えたのか、その袋はくしゃくしゃになって玄関に置かれていた。視線を彼から外したのがいけなかったのかも知れない、その袋を見ていると、途端に視界が変わっていて。気付いた時には後ろからは感じるはずのなかった壁の感触が背中から伝わってきて、先程よりも妙に距離の近くなったシャンクスさんの顔が俺の目の前に広がっていた。


「  しゃ、シャンクスさん?」
「クリスマスプレゼントに、」


「俺自身を上げに来たって言ったら、は困るか?」 シャンクスさんのそんな突飛な行動に慌てる俺に、そんな訊き方をしてくるシャンクスさん。サンタクロースはまず自分をプレゼントにとか言わない気が、なんて考えが浮かぶ事すらままならなくて、ゆるりと額に落とされる唇をそのまま受けていると、「 、」 なんてシャンクスさんは再度、返事を促すように俺の名前を呼んできて、


「  ずるい、ですよ、そんな訊き方。」


たぶん、いや絶対、彼は俺がそんな訊き方をすれば断れない事を知っているはずなのに、それでも俺に言葉に出して言わせようと俺の返事を求めている。浮かんでいるその笑みもその証拠の1つだ、いつもと変わらない、俺を安心させてくれるその笑みだけれど、けど、いつもよりも色が深まっているように俺には映っていた。途切れ途切れに紡いだその言葉に、シャンクスさんは少しだけ笑い声を漏らしながら、


「 じゃあ、俺にを、クリスマスプレゼントにくれるか?」


「クリスマスプレゼントは大人にはないなんて言葉はなしだぞ?」 なんて冗談めいた言葉を言いながら、俺の返事を待つシャンクスさん。そんな言葉を言われてしまえば、俺の中に選択肢なんて1つしか残っていない事くらい、シャンクスさんは分かっているだろうに、(ああでも、貴方がその言葉で喜んでくれるなら、)


「  貴方が、」
「ん?」
「シャンクスさんが、俺なんかがプレゼントで、  喜んでくれるのなら、」


精一杯のその言葉を言いながら、・・・恥ずかしさのあまり彼の肩口に顔を埋めながらだったけれど、何とかそう言葉を紡いで、彼の返事を待つ。そうすれば、壁についていた彼の手が、俺の腰へと回されるのが、感覚で伝わってきて、


「 最高のクリスマスプレゼントをもらって、嬉しくない訳がないだろう?」


「サンタに感謝しないとな?」 なんて耳元で囁いてくれるシャンクスさんに、俺は緩んでくる顔をまた肩に押さえながら、愛しい人の、その背中へと腕を伸ばしていったのだ。

暗闇に映える赤い色

サンタクロース自身がプレゼントなんて聞いた事もないけれど、
(たまにはそんな事もあって良いかもしれないなんて思うのは、)