何歳になっても食後のデザートというのは魅力的なもので。そんな今日も、この船のコックであるサンジがキッチンで甘い匂いを漂わせているのをダイニングのイスに腰を掛けて見ている訳なのだけれど。


「・・・サンジ、」
「  まだだっつってんだろ。」


「大人しく待っとけ。」 ブルックのように賑やかに待っている訳ではないつもりだったのだけれど、あまりに俺がそわそわしていたからか、サンジは隠すこともなく、盛大にため息を吐きながら俺にそんな言葉を放ってくる。そんな中、これでも大人しく待っていたつもりだった俺はと言うと、そんな言葉を聞いているのか聞いていないのか、彼の手元で綺麗に盛りつけられようとしているケーキを、その上からかけられようとしている溶かされたチョコレートを食い入るように見つめていて、


「  サンジ、味見しても・・・」
「・・・チョコレート溶かしただけなのに、味見も何もねェだろ。」


ゆるゆるとその甘い匂いのするボールへと手を伸ばしながら彼に訊ねようとすれば、言っている最中に言葉を遮られ、伸ばしていた手を叩かれてしまった。「スイーツに関してだけは、お前はルフィ並みの食欲だな、全く。」 なんて言われて、何と返して良いか分からなかったから、ありがとうと返答すれば、褒めてるんじゃねェよ、アホ。 なんて苦笑と共に言葉が返されてきた。


「・・・・ったく、ほら、、」
「っ! 良いのか?」
「さっさと口の中に入れねェと、固まっちまうぞ?」


けれど、何だかんだ言いながらも甘やかし上手である彼はそこにあったスプーンでそのチョコレートを掬って俺の口元へと持ってきてくれる訳で。子どものように分かり易く目を輝かせていたのだろう俺は、彼の了承らしいその言葉を聞いた途端、スプーンをサンジに持たせたままで、目の前のチョコレートへと口を大きく開いて、


「・・・美味しい、」
「当たり前だろ。」


ゆるゆると筋肉が緩まってくる頬を抑えきれずに、緩んだ顔を彼に晒したまま俺は脳内に浮かんできた言葉を素直にそのまま吐き出す。そうすれば、目の前でスプーンを持ったままのサンジも口の端を上げて嬉しそうな顔をしてくれた。もうなくなってしまったけれど、口の中に残っていたその甘い風味を堪能しながら、そんな彼の顔を見つつ、彼の手元で完成しつつあるそのデザートへと視線を移そうとした、そんな時、彼の顔が俺の方へと近づいてきているのにようやく気付いて、


「?? サンジ?どうし、っ!」


しかしそれに気が付いたのが2歩も3歩も遅かったらしい。言葉を全て言い終わる前に、彼の寄ってきた唇が俺のそれを塞いでしまっていて。短いけれど、決して浅いとは言い難いその寄せ方に、口の中に残っていたその甘い風味を全て奪い取られた気がした。


「・・・サンジ、」
「チョコレートが付いてたんでな?」
「・・・スプーンでもらったのに、付くわけないだろう。(しかも何で口の中なんだ。)」


しれっと紡がれたその言葉に、口内に残っていたそれを奪われた事に、若干眉間に皺を寄せながら彼に返事をするのだけれど、俺とは対照的に、彼の顔にはひどく楽しそうな笑みが浮かべられていて、


「 けど、甘ったるい味がしたぜ?」


「 それに、甘い匂いがここからしたんでな。」 俺の唇へと指先を触れさせて、続けざまにそんな言葉を放ってきたサンジは、器用にも、もう片方の手のみで人数分の盛りつけをしていた。さっさと両手で盛りつけてその美味しそうなデザートを食べさせてくれと言いたい限りだったのだけれど、それができないのは、  それをしないのは、


「  まだ、甘い匂いが漂ってくるが、」


「  拭き残しがあったか?」 なんてわざらしくそんな事を言って、再度唇を寄せてきたサンジに、俺が身を委ねてしまったからであって。(・・・俺もたいがい、彼に甘い訳で、)(自覚はあるんだが、どうも・・・な、)

チョコレートに溶かして

その口付けは、そのチョコレートのように溶かされるようなそれであって、



title by 赤小灰蝶 / チョコレートに溶かして