彼らが発端となったあの出来事、あれからもう2年の月日が経った。そして今、ルフィ君達はとても嬉しそうにこの島を出航していったのだ、再会した仲間と共に。


「・・・レイリーさん、」


彼らがいるであろう方向へと足を向ければ最初にシャクヤクさんと出会って「レイさんをよろしくね。」なんて遠慮したい言葉をもらった。だけどやっぱり足はその先に向いてしまって、気付いた時には、座り込んで海を眺めているレイリーさんを俺は発見していたのだ。「ん、 ああ、か。」 俺が彼の名を呼ぶと、ゆるりとこちらへと首を向けてくれたが、すぐにその視線は海の方へと戻った。


「ルフィ君達、無事に出航しましたね。」
「・・・フフ、そうだな。」


彼の隣に行くことは何故か少し憚られたから、俺は少し後ろで、レイリーさんの背中を眺めながらそう言葉を紡いだ。俺にとってルフィ君達は友人だけれど、彼にとっては弟子であり、友人であったのだろう。・・・それから、彼の友人でありそして船長でもあったその人と、海賊王になると再び宣言をしていったルフィ君とが何かレイリーさんの中で重なるものがあったということも。だから、

だから、今放たれたその言葉には、嬉しそうな、けれど少し寂しそうな声音を含んでいたのだと思う。


「・・・年を取ると、涙もろくなるっていうのは本当みたいですね。」


それを知りながらも、けれど俺は少しからかうようなそんな言葉をかけるのだ。彼と同じ方向へと視線をやりながら、その視界の端に、彼の背中を捉えながら。そんな俺の言葉にレイリーさんは「フハハ、ひどい言われようだな、まったく。」なんて言いながら笑って、それから俺の方を見ることなく、自分の隣を叩いて俺にそこに座るようにと促してきた。


「・・・君にとっての友人で、私にとっての弟子が船出をしたんだ。」


「もう少し私に優しい言葉をかけても、罰は当たらんと思うんだがね。」 彼に指定された場所に腰を降ろした俺にそう言葉をかけてくるレイリーさん。俺だって、友人である彼らが船出した事に寂しさを感じていない訳ではないのだ。・・・けれど、再出航する時の彼らの嬉しそうな顔を見ているから、そして彼らならきっと偉大な事を成し遂げてくれると思っているから、俺は彼らの船出に対して、ひどく、


「そう言っているわりには、顔は嬉しそうですけど。」


膝を両腕で抱えながら、けれど彼の顔を見ないままに呟いた。彼の顔を見なくとも、そうであろう事が予想できたからだ。きっと、彼も俺と同じように嬉しそうな笑みを浮かべて海を眺めているのであろう事くらい、俺にだって、


「どんな言葉をかければ良かったんですか?」
「ん? フフ、何だ、私が言えば、そう言ってくれるのか?」
「聞いてみてるだけです。」


彼からの返事をもらう前に、俺は次の言葉を放った。そうすれば、彼が俺の方へと顔を向けたのを俺は視界の端で捉える。俺が彼の方を向かないのは、実のところ自分でも理由を見つけられていないのだけれど、たぶん彼の隣に自分から行けなかったのと同じ理由だと思う。そうしてしまえば、彼個人の領域にあまりにも深く踏み込みすぎるのではないかと、感じたから、「・・・フフ、そうだな、」


「君がこうして私の元へとやってきてくれたというだけで十分だという気がするな。」


「これ以上望んだら、罰が当たりそうだ。」・・・さっきと言ってる事が矛盾している事に彼は気付いているのだろうか。というか、その言い方だとまるで俺が冷たい人間のような言い方に聞こえる気がするのですが、そう突っかかろうと彼の方へ顔を向けたのだけれど、


「さて、?」
「・・・何です。」


向けたその先に見えた彼の顔が、とても優しくて、穏やかに笑っていたから、もう何も言えなくなってしまって、


「そろそろ帰るとしようか、祝い酒が飲みたくなってきた。」


紡がれたその言葉と、俺の目の前に差し出されたその手を俺はゆっくりと、それでも確実に受け入れてしまって、彼は笑みを浮かべたまま、そして俺の手に自分の手を絡めたまま、ゆるりと歩を進め始めたのだ。(・・・ずるい人だ、本当に、)

声と声で触れる

・・・今からシャクヤクさんの所に行くんですか?  ん?ああ、そのつもりだが。どうかしたのか?  いや、今から夜までいたら、さすがに迷惑になるんじゃないかと、  フフ、その心配はしなくても良いとは思うが・・・そうだな、なら、夜は君の家で飲み直すことにしようか。  ・・・は?え。ちょ、ちょっとレイリーさんっ!



title by Lump / 声と声で触れる(Short)