「おーい!ー!こっちの飾りなくなったぞー!」
そんなお祭り事を聞いて我らが白ひげ海賊団が黙って聞いているだけ、なんて事はないわけで。親父さんのおつかいでいち早く街へと繰り出し、そして帰ってきた俺がそのクリスマス、という習慣を船に残っていたみんなに話すと、あっという間に宴の準備が始められたのだ。街に行って探索していたみんなは船に帰ってくる頃には箱いっぱいのクリスマスツリーの飾りを持っていたり、赤と白で彩られたサンタの格好をしいている人がいたりと、いつも以上に賑やかになっていた。
「ふふ、(みんな楽しそうだなあ。)」
甲板の上では大きなモミの木がきらきらと輝く装飾を身につけている最中で。みんなが持って帰ってきたオーナメントの量がとても多くて、ツリーもその分だけみんなと同じように賑やかになっていた。ツリーもそうなのだけれど、それを飾るみんながとても楽しそうに笑ってるから、何だかその様子を見るだけでも嬉しくなってきてしまって。自然と緩んでしまうその顔のまま、呼ばれた所にツリーの飾りを持っていっていると、
「 、」
響いてきたその声に俺はすぐさまそちらへと顔向けた。いくら周りが賑やかだろうが、俺の耳はその声をしっかりと聞き取れるらしい。そんな都合の良い聴覚に呆れてしまいながらも身体はやはり正直で、その人の瞳を捉えるとすぐに足が動いてしまうのだ。「 親父さんっ、」
「グラララ!そんなに急ぐとさっきみてェに躓くぞ。」
「転んで飾りをばらまいちまったら、怪我しちまうぞ?」 バタバタと忙しなく駆けてきた俺にそんな言葉をかけてくれながら親父さんは俺の事を迎え入れてくれた。躓いているところを見られていたのかと思うと恥ずかしい気もしたけれど、俺の頭に伸びてくるその手の温度を感じてしまえばそんな羞恥心も奥底に沈んでしまうのだから本当に呆れるものである。(・・・そうは言うものの、直そうともしないのだけれど。)
「ふふ、みんなすごく楽しそうに宴の準備をしてますね。」
「グラララ、そういうお前はちゃんと楽しんでるのか?」
「はい、みんなが楽しそうにしてるのを見るだけでも楽しくて、」
「グラララ!らしい答えだな。」
「まァ、そこがお前の長所でもあるがな。」 楽しめてるみてェでなによりだ。 なんて俺の事まで気にかけてくれた事が嬉しくて、親父さんの笑みを見ただけでもそうなってしまう顔が、さらにゆるゆると締まりのない顔になってしまって。隠そうにも隠せないそれをそのままに何か用があって俺を呼んだのだろう親父さんにその事を訊くと、
「あァ、クリスマスには親から子にプレゼントを贈る慣習があるらしいな。」
「あ、はい。俺が聞いたおじさんもそう言ってました。」
「グラララ、そうか。それで、は何が欲しいんだ?」
「・・・・え、あ、 お、俺、ですか?」
クリスマスの話からまさか俺自身のクリスマスプレゼントの事を訊かれるとは思っていなくて、つい戸惑うように声を出してしまった。いや、その話を街のおじさんから聞いた時考えなかった訳ではないのだ。もしプレゼントをもらえるのならと。
でも、そのプレゼントは親から子に、というものだ。つまりこの白ひげ海賊団で言えば、親父さんから、という事になる訳で・・・ああでも、親父さんはそこまで意図していてなくて、話題の1つとして挙げただけなのかも知れない。自分の思い上がりに思わず恥ずかしさを感じて親父さんに言うのを躊躇っていれば、
「グラララ、何だ、親から子に贈るモンだって聞いたから、俺もそれに習おうと思ったんだが、」
「!!」
「肝心の愛しい息子はそれに応えてくれねェのか?」 俺が考えていた事を見抜いたのだろうかと思わせるようなそんな言葉は親父さんの口から放たれたから、驚いて思わず腕に抱えていたオーナメントの入った箱へと向けていた視線を親父さんの方へと向けた。そんな俺の様子を見た親父さんはまるで俺の思い上がりではないと言ってくれるかのように、また優しく笑ってくれて。そんな親父さんの言葉に、ちゃんと応えようと慌てて俺は口を開いた。
「あ、あの!俺、考えなかった訳じゃなくて! クリスマスの宴で、少しの間でも親父さんと一緒に、親父さんの、 そば、に、」
「 ・・・いられたら、と、 思って、ました。」 言っている途中で、もしかしてとんでもなく図々しい事を親父さんに対して言っているんじゃないかと思えてきて、次第に声が小さく、ぎこちなくなってしまった。俺なんかがこんな楽しい日に親父さんの側にいる、なんてそんな事・・・呆れられてしまうだろうか、なんてそう思うとまた視線がオーナメントへと戻ってしまった。
「 グラララ、全くお前は、 」
「! え、あ、 おやじ、さん?」
けれど返ってきたその言葉は俺が予想していたものではなくて。頭を撫でられた感触に俺は反射的に顔をぱっと上へと向けた。「そんなモンで良いのか?」と、俺と目があった瞬間に放たれたそんな言葉に俺は「お、俺にはそれが一番っ、」 と慌てて言葉を紡ぎ出す。そう、図々しい事だと分かっていても、貴方と居ることが、俺にとっては一番、 そうやって言葉を紡ごうとした俺の声を優しく遮ったのは、「 グラララ、」
「 あァ、分かってるさ。」
「グラララ、これじゃどっちがもらってるんだか分からねェがな。」 その言葉が、頭に触れているその手の体温が、俺の身体へとじわりと浸透していくのが感じられて。その体温を感じられるだけでも俺は嬉しくてたまらない気持ちになるのだけれど、
「さて、愛しい息子の願いだ、喜んで叶えてやらねェとな。」
「さあ、早くその飾り付けを運んで俺のもとに戻ってこい。」 なんて言葉を俺の頬を撫でてくれながら親父さんがかけてくれるから、俺はまた転びそうになりながら急いでその箱を持って駆けだして行くのだ。(きっとさっきまで以上に素敵なクリスマスになりそうだと思ってしまう俺はやっぱり現金なんだろう。)