そして、今日という今日も例外に漏れず宴会となっている訳だ。・・・さらに、すげえ、ほんっとにすげェ珍しいことに、酒飲み勝負をしたらオヤジの次くらいに強ェんじゃないかと言っても良いくらい、酒に強い、あのが、ぐでんぐでんに酔っていた。
「・・・あー、?もうそろそろ酒は止めといた方が良いと思うぞ。」
そして、そんな酔っているの隣にいるのが何故か俺になっていて。最初こそ、珍しいモンが見られたと楽観視していたけど、どんどん舌足らずになっていき、顔にも赤らみが増し、酔いが進行しているのが目に見えて分かってきたもんだから、ようやく、俺はに歯止めをかけようとなるべく優しく(がどんな酔い方をするか話からないからな。怒鳴って癇癪を起こされちゃかなわねェ)声をかけた。(・・・まあ、が癇癪を起こすなんて、オヤジの事を悪く言われた時以外、全くねェとは思うけどな。)
「う、や、 もうちょっと、のみたいです。」
「・・・いや、おまえ、「や、」じゃなくてだな、」
「これ、おいしいですよ?」
「言ったそばから飲むし・・・」
俺の言葉をちゃんと聞いていたのか、そうでないのか、酒飲みの常套句を放ったは言ったそばから再度酒で喉を潤しやがった。しかも、こいつの場合、飲んでる酒が元々度が高いモンばっかりなのも酔いを進行させている原因の1つなんだろう。美味しそうにこくりとまた呷った酒の瓶の方を見れば、案の定度数が高いやつだった。
「(・・・ったく、いつこんなになるまで飲んだんだ?)」
いつもなら酔いつぶれた奴らを部屋に連れてったりその場で眠っちまった奴らに毛布をかけたりと、甲斐甲斐しいまでに世話役を全うするあのが、今日はどうやら世話をされる方に回るようだ。まあ、いろんな奴から好かれているの事だ、こいつを世話すると立候補する奴なんていくらでもいるだろうから、それに関しては別に心配はしてない・・・それよりも、世話をする奴の理性が保つかどうかが心配だ(を任せたは良いものの、後から食われた、なんて事になって、ただならぬオーラを放ち出すであろう隊長達に殺されるのは勘弁願いたい。)
「ったく、普段はオヤジみたいに強ェくせして。」
「ん、? ・・・親父、さん、」
「ん?どうした、って、おい、っ!?」
ぽつりと独り言のように吐き出したその言葉をどうやらは聞いていたらしい。俺が呟いたその名を繰り返したかと思えば、ふらふらと立ち上がって、俺の制止を聞かずにある方向へと進んでいった。
周りにぶつかりながら進むをもちろん放っておけるはずがなく、慌てるように俺も立ち上がってを追いかけて・・・いたんだが、
「(・・・どこに向かって歩いてるのかと思えば、)」
その途中で前方にその人の影を見つけた俺は、がちゃんと目的を持って歩いていたんだという事と、の目的の人が俺たちの親だという事が分かって、安堵の息を吐き出しながら、側にあったイスへと腰をどさっと降ろした。目の前では、えらく嬉しそうに笑みを浮かべたがようやく目的地へと到着したようで。
「ふふ、 親父、さん。」
舌足らずな言葉のままでオヤジを呼びながら、はオヤジへと自発的に、大胆に、抱きついた。普段なら自分から勢いのままに抱きつくなんて事、ほとんどしねえのに、だ。酒の力ってのはやっぱすげえよな、なんて妙なところで感心しながら見ていれば、オヤジの、どこか嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。
「グララララ!が酔うたァ珍しいじゃねェか!」
「親父さんから、もらったお酒が、おいしくて。」
「グラララ、気に入ってもらえたのは結構な事だが、あれは1度に大量に飲むモンじゃねえぞ?」
・・・どうやら、が酔った原因を作ったのはオヤジだったようで。オヤジからもらった酒なら、そりゃは大量に飲むわな。なんて一人納得してしまいながら、オヤジがの上気している頬をゆるりと撫でるのを眺めた。
「ふふ、 すみません、つい、」
まるで謝る気がないような、むしろ嬉しそうな声色ではオヤジに言葉を放った。撫でるその手に猫のように擦り寄るは、それはもうえらく緩みきった顔をしていた。オヤジもオヤジで、普段の酔う姿を見られない所為か、心なしか今の状況を楽しんでいるように見えた。
「親父さんの、手、 冷たくて、気持ち良いです。」
「グラララ、それはお前が酔って、体温が上がっちまってる所為じゃないか?」
「今は、そうかも知れません、 けど、」
「でも、親父さんの手は、いつだって気持ち良いんです。優しくて、俺の、大好きな、」酔っていて、舌足らずなそれであるはずなのに、聞こえてきたその言葉はひどく鮮明で、1つ1つの言葉がはっきりと響いてきて。
そう言葉を紡いだはというと、オヤジに体を預けて、さっきと変わらず、ひどく嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべていて。・・・ほんと、はオヤジが大好きだよな。なんて思いながら、あいつが浮かべた笑みに思わずつられて笑みを零していれば、
「おれ、 おやじさんが、だいすき、です、」
なんて、今度はひどく途切れ途切れで今にも眠ってしまいそうな声が聞こえてきて。ったく、肝心な所であいつは、なんて思いながらも、どこかあいつらしい、なんて思ってしまう自分もいた。そして、たぶん、あいつの中にあった睡眠欲を駆り立てたのは酒の効果だけじゃなくて、
「グラララ、俺だってそう思ってるぜ?」
「お前は、愛しくて仕方がねェ、俺の息子だ。」 なんてひどく穏やかで心地よい低温の声が、俺の耳に、そしてきっと眠りかけで意識に霞がかかっているであろうの耳にも、響いてきたのだ。
優しい声で眠りにつかせて
酔ったの世話役は、我らがオヤジ殿でした(ほんっと、贅沢なやつだよな。)
title by Lump / 優しい声で眠りにつかせて