「親父さん、」
「ん?どうした、?」
「昨日、懐かしい夢を見ました。」


揺らめく海に、それに反射する太陽の光、それから上に広がる青い空。あの日も、こんな心地の良い日だった。空と海は、同系色のそれらだったけれど、でも、同じ色は一つとしてなかった。その色が太陽の光も一緒に混ざり合って、きらきらと輝いていて、この色をずっと見ていたいと思った。


「懐かしい? グラララ、そんな顔をするくらいに嬉しい夢だったのか?」
「はい、とても幸せな、大事な夢でした。」


今こうして見る海も、あの日とは違う色をしているんだろう。けれど、そこに存在している事は、昔と全く変わりはない。今見ても、その色は綺麗で、俺の大好きなそれで、こうして側に立てるだけで幸せで。


「俺、あの時、子供だったから、つい、軽はずみで返事をしてしまった所もあるかも知れません、」
「グラララ!まァ、あの時のお前ェの様子だと、そうかも知れねェなァ?」
「う、 で、でも!今はっ、本当に貴方のっ、 親父さんのっ、!」


ゆるりと、俺の話を聞いてくれていた親父さんがそう言葉を紡いで、慌てて俺は言い返そうとする。子供の頃だから、まだ、親とか、息子とか、よく分かってなかったから、でも、海の側に、親父さんの側にこれからもずっと居られるのならと、首を縦に振ったのだけれど、でも、今は本当に、こうして貴方が俺の父親で、俺が貴方の息子で―、  そう、言葉を続けようと、したのだけれど、


「親父、さん?」


能力者である俺が海に沈み込んでしまうように、重力に引っ張られるように、俺の身体は親父さんの方へと寄せられていった。背中に感じる親父さんの手の温度に、前からかも伝わって来る親父さんの心地よいその体温に、俺は見上げて、親父さんのその瞳を見つめる事しかできなくて、


「まァ、が昔どう思ってたかは俺には分からねェが、」


あの日も、そうだった。ゆらゆらときらきらと揺れるその青色があって、それに似た、とても綺麗な親父さんの瞳が、俺の目を捉えていて、温かい、心地よい親父さんのその体温を身体いっぱいに感じながら、俺の大好きなその笑みを、俺へと向けてくれながら、


「昔も今も、お前が俺の愛しい息子である事には変わりはねェさ。」


「もちろん、 これからも、そうだぜ。」 そう言って、俺のすべてを抱きしめてくれる親父さんが、愛しい息子だと言ってくれる貴方が、俺は、(ああもう、俺が貴方に言おうとしていたのに、)

遙かな海に思いを寄せる

その一言だけですら、俺のすべては幸福に包み込まれて