「ほらっ!もっと飲めって!!」
「あ、はい。いただきます。」


俺に懸かっていた賞金がまた上がって、それを知った仲間のみんなが宴を開いてくれると言ってくれたから、今日の甲板はずいぶんと賑わいを見せていて。「せっかくの祝いだからな!」と言って俺の所へと入れ替わり立ち替わりと仲間が持ってきてくれる酒をまさか断るなんて事もできなくて、差し出されるそれを繰り返し飲んでいたら、


「(・・・酔ってしまった、)」


俺が酒に強い事をみんなが知っているからか、持ってきてくれる酒の度数が普段みんなが飲むそれよりも若干高いものであって。その所為か、それとも単に飲み過ぎたのか、すでに飛びかかっている理性を必死に掴んで引き戻しながら、そんな事を考える。これ以上飲んでしまえば、理性が吹き飛んでしまってどんな醜態を見せてしまうか分かったもんじゃないから、そろそろ酒から水に変えようと、するのだけれど、


飲んでるかっ!?ほら、これ祝い酒。」
「あ、ありがとうございます。」


嬉しい事に、次から次へとこうして俺を祝ってくれる言葉をかけてくれるから、中々変え時が見つからない。どうしたものか、とそれでも祝われて緩んできてしまう頬をそのままに、ゆるゆるとグラスの中を漂う酒を眺めていれば、ふと、風に乗って、俺の名前を呼ぶ声がして、



「   親父さん、」


その声が、俺が酔っている所為で聞こえた幻聴なのか、本当に親父さんが俺の名前を呼んでくれたのかは、残念な事に、今の頭の状態では判断できないけれど、でもその声が、妙に鮮明に聞こえてきたのは、確かであって。かちあったその瞳に引き寄せられるように、グラスを持ったまま、ふらふらと覚束ない足を親父さんの方へと俺は向けて、


「グラララ、酒に強ェお前が、ずいぶんと顔を赤くしてるじゃねェか。」
「みんなが、祝い酒って、言ってくれて、」


親父さんの所まで来たというのに、ついに酔いが口にまで来てしまったらしい。まるで言葉を覚えたての子どものように途切れ途切れになりながら親父さんにそう言葉を紡げば、どこから取り出したのか、親父さんは俺に水の入ったコップを差し出してくれて。


「 これでも飲んでろ、ちったァ楽になるだろ。」
「   ありがとうございます、」


コクリと、その水で喉を潤して火照り始めてしまった体を少しでも冷まそうとする。そんな事をしていれば、急に俺の頭へと親父さんの大きな手が置かれて、ゆるゆるとその手を動かして撫で始めてくれたから、心地よいその感覚に身を委ねつつも、親父さんの方へと顔を上げて、「  親父さん?」なんて疑問符を頭の上に浮かべながらそう声を出せば、


「普通、最初に親から祝うもんだがなァ? バカ息子共が先に騒ぎやがって、」
「え、 あの、 親父さん?」
「  俺からの祝い酒は、また今度してやる。」


「俺の愛しい息子だったら、しっかり祝われとけ。」 ゆるりと愛しい声で放たれたその言葉を、いつもよりも時間を掛けてしまいつつもそれでも何とか理解してくれた俺の脳内では、いつの間にやら、必死に繋ぎ止めていたはずの理性はどこかへ吹き飛んでいってしまったらしい。溢れ出てくるどうしようもないその愛しさを抑えることも出来ないまま、気付いた時には、俺は自ら親父さんの方へと体を預けてしまって、そのまま顔を親父さんの体へと擦り寄せてしまって、


「グラララ!相当酒が回ってるみてェだなァ?」
「  親父さん、」
「ん?」


けれど、そんな俺の行動をゆるりと受け入れて、背中へと手を伸ばしてくれる親父さん。酒を飲んでいる所為で、いつもよりも自分の体温が高く感じているはずだというのに、それでも、親父さんのその体温を心地よく、温かく感じてしまうのは、(ああもう、本当にどうしようもないくらいに、貴方の事を、俺は、)

絶えず浮かび上がる泡のように、

溢れるそれを抑える事なんて、不可能に近いのだ(抑える事すらも、してないのだけれど、)