「 あの、・・・親父さん?」
物理的なものを渡して、伝えれば良いのだろうか、なんて自分の指にはまっているそれに手を這わす。アクセサリーとかそんなものに興味がない俺が唯一肌身離さず身に付けているそれは、他の誰でもない、親父さんからのものであった。もらったその日の事を鮮明に脳内に思い浮かべる事が出来るけれど、顔が緩むのを抑えようとしても無理だったのを、いつも親父さんの口から紡ぎ出されるその言葉と同じくらい嬉しくて、色んなものが溢れ出てきたのを、今でも覚えている。
「 やっぱり、だめ、ですか?」
でも、何だか親父さん本人にそれを言うのも何だか恥ずかしくて、仲間のみんなに訊いてみようと話しかけたのだけれど、「親父に直接それを言ってこい。」 なんて俺の話を聞いてくれた後にそう言ってくるだけで。それができないからこうして聞いているのに、と顔をしかめるのだけれど、「大丈夫だ。親父は拒みなんてしねえさ。」 何の根拠があるのか、自信に満ちあふれた笑みを浮かべながらそう言って俺の背中を押し出した。
「 わっ、」
結局、俺は勇気を振り絞って親父さんに直接訊く事にした。溢れてくるそれを、親父さんに伝えたくて、でもその方法が分からなくて、親父さんからもらった指輪みたいに、何か渡したらもっと伝えられるかと思って。 ぽつぽつと何だか言葉と言葉が繋がっていないようにも思えたけれど、伝える術すら分かっていない今の俺にはそれが精一杯だった。
ようやく言い終えて、親父さんからの言葉を待つ間、何となく親父さんではなく甲板の方へと視線を落としていたのだけれど、親父さんから反応が返ってこなくて。困らせたい訳ではなかったのに、困らせてしまったのだろうか、そんな不安が頭を過ぎって思わず顔を上げるだけれど、親父さんはそんな顔をしていなくて。それでも、声を発してはくれなかったから、やっぱり駄目だったのだろうかとそれを思わず声に出してしまっていると、そんなすぐ後に、親父さんは俺の頭を撫でてきて、その手で俺を自分の方へと引き寄せてくれて、
「伝わってねェことなんて、あるわけねェだろ。」
「 親父、さん?」
「愛しい息子の愛は、十分すぎるくらいに伝わってるぜ?」
「っ、」
「だから、これからも今まで通りに伝えてくれりゃあそれで良い。」
「そうしてくれるか、?」 分かっていてそう言っているのだろう、笑みを浮かべた親父さんはいつの間にか親父さんの方へと腕を伸ばしていた俺に、そう言葉を紡いできて。そんな言葉を聞かされて、その直後にそう訊かれてしまえば、俺の答えるべき返事なんて、
「 親父さん、」
「ん?」
「 愛してます。」
「グラララ! あァ、それが一番良い。」 響いてくるその声に、親父さんがそれで良いと言っているんだからそれで良いか、散々先程まで悩んでいたはずの俺は結局のところ、そう思ってしまう訳で。彼の一言だけで、俺は、 自分の単純さに苦笑を漏らしながらも、続けざまに返ってきた親父さんの言葉に、俺はまた溢れ出てくるそれを抑えきれないまま、親父さんに身を委ねるのだった。
誰よりもあなたが
これだから、貴方にはすべてにおいて敵わないのだ
title by 鴉の鉤爪 / 誰よりもあなたが(ざっくばらんで雑多なお題(日本語))