「   親父さん?」


いつものように大きな木箱の上に座って親父さんに酌を頼まれ、取り留めのない話をしながら酒を注いでいれば、親父さんの大きい手が俺の肩へと触れる。その触れる手がいつも撫でてくれる時の豪快さとは違った、優しいそれであったから俺は頭に疑問符を浮かべながら彼の瞳へと視線を向ける。


「 また、ドジを踏んだらしいじゃねェか。」
「う、」


親父さんは触れていた所、ちょうど怪我をした部分を軽く叩きながらそう言葉を紡ぎ出した。ドジを踏んだ、というのは他の海賊に負けたとかとかいう類ではなくて、賞金首の急襲に相手をするのも億劫だったから逃げていた時に箱に躓いてしまい、その間に一撃を食らってしまったという、本当に読んで字の如くなドジを踏んでしまったのだけれど。やはりその事は親父さんに伝わっていたらしく、「・・・すみません、」 と俺はただただ謝罪の言葉を述べることしか出来なかった。


「謝って欲しいわけじゃねェ。  痛むか?」
「いえ、かすっただけだったので・・・・あの、」


肩の傷をその指で何度もさすってくれながら俺に声を掛けてくれる親父さん。その行為にある種の安堵感を覚えると共に戸惑いを感じているのに親父さんは気付いたのだろう、恥ずかしいやら情けないやらで俺が視線を漂わせていれば、その視線を捉えさせたのは紛れもなく親父さんの瞳であって。


「親父、さん?」
「俺が息子の心配をするのは当然の事だろうが。」


「もちろん、お前も愛する俺の息子だ、 。」 その顔に笑みを浮かばせて、そんな言葉を放ってくれる親父さん。その声が、その言葉が、俺は彼の息子で良かったのだと、彼の息子以外考えられないと、その偉大な彼の手で撫でられながらそ事を思わせてくれるそんな親父さんの全て。それから俺は引き寄せられるように彼の胸へと勢いよく飛び込んでいくのだけれど、それすらも予測がついていたらしい親父さんは難なく俺を受け入れてくれ、背中をゆるりと撫でてくれて


「あんまり心配かけさせるんじゃねェぞ、バカ息子。」


愛する親父さんのそんな愛しい声で、心地よい声で放たれた言葉は、船へ、俺の中へと響き渡っていったのだ。

胸の奥に生まれた光の正体

その光は、紛れもなく親父さんへと捧げるそれであって



title by 赤小灰蝶 / 胸の奥に生まれた光の正