「あー、つっかれた・・・」
ガラッと勢いよく生徒会室の扉を開ける俺。夏休みでもこの部屋はよく使うからと言って先生達がエアコンを付けてくれたから、俺の身体にはひんやりと冷たい空気が伝わってくる。(あー気持ちいい。)
「ふふ、お疲れ様。大丈夫か?」
「会長、心配しなくても良いですよ。こいつが暑さに弱いだけです。」
「あー!先輩ひっでえ言いぐさ!」
へなへなとソファに座り込む俺に、その部屋に居てパソコンへと向かっていた会長が氷の入ったお茶を差し出してくれた。「ありがとうございます!」と頬を緩めながらお礼を言うと、会長も笑いながら「どういたしまして。」なんて返してくれる。あー、先輩の顔見てるだけでも癒される。
「シャンクス先生の用事は確か荷物運びだったな。」
「ええ、あの人も人使いが荒い。準備室の整理整頓をしてくれだなんて、」
「本当ですよー、俺なんか、先生の私物を車に運ばされました。」
「・・・それは、本当にお疲れだったね。」
「先生には、今度俺から言っておくよ。」 苦笑を浮かべてそういう先輩の顔をふと、俺は眺めた。昨日の今日で、やっぱり疲れはとれてないんだろう、会長の肌は何だかいつもよりもいっそう青白く見える気がする。そんな事を考えていると、そういえば、なんて頭にふと、
「そういえば、会長、よくマルコ先輩が今日仕事する事を許してくれましたね。」
「え、?・・・あ、ああ、そうだね。」
「(・・・ん?)」
昨日の帰り際、「そんな急ぎも仕事もねェだろ、明日は休めよい、良いな?」 なんて強制半分でマルコ先輩に忠告を受けていた事を思い出して、そう言葉を先輩に呟けば、何だか、少しだけ慌てたような声で返事が聞こえてきた。その声に、その少しばかり泳いだ瞳に気付いたのは、案の定俺だけではなかったようで。
「・・・会長、まさか、マルコ先輩に何の連絡もなしに来たんですか。」
「・・・い、いや、その・・・マルコも、疲れているかと思って、」
「黙って来たんですね。」
「・・・う、 はい。」
「(・・・どっちが先輩なんだ。)」
訊ねる、というよりは確認をとるといった口調で会長に言い寄る先輩。誤魔化しきれないとすぐに感じ取ったのか、申し訳なさそうに真実を告げる会長は、母親に怒られる少年のような姿に見えてしまって、思わず、俺も深く息を吐き出してしまう。そんな事をしていると、タイミングが良いのか悪いのか、会長の方ではなく、先輩の方の携帯の着信音が生徒会室に響き渡った。相手はというと、先輩の様子から、言うまでもなく、
「おはようございます、マルコ先輩。」
「うっ、やっぱりマルコなのか・・・」
「はい、会長はここにいますよ。そちらに行かせましょうか?・・・ああ、こちらに来る途中ですか。」
「え、」
「(・・・うわあ、会長、怒られるぞ・・・)」
「はい、分かりました。会長はここに居るように言い聞かせますので。はい、では、また後ほど。」
ぱちん、と携帯を閉めた先輩に、「・・・少しは味方してくれたって、」なんてまるで子供のように、ぽつりと言葉を紡いだ会長。けれど、先輩は容赦なく「昨日の今日で仕事した会長が悪いんです。自業自得ですよ。」なんて言い切るものだから、会長はゆるゆると力なく俺の隣へと腰を降ろしてきて。
「・・・どうしよう、」
「知りません。」
そんな会長の言葉と、きっぱりと言い切った先輩の言葉が、コップに入った氷にカラン、という音と共に生徒会室へと響き渡った(・・・エアコンの温度、ちょっと上げとこうかな。)