「あァ、それもだよい。後は・・・」
俺の前にいるのは、3年生で生徒会長と副会長をやっている先輩とマルコ先輩。それから俺の隣でそんな2人を後ろから見守っている人は会計をやっている俺の1つ上の先輩。因みに今いる場所はスーパーで、ただいま生徒会のみんなで買い出しをやっている最中です。
「・・・これ、最後にお酒とか入ってますよ。」
「どうせあいつが入れたんだろい。当然、買っていってはやらねェが。」
「まァ、買う云々の前に、俺たちはそもそも買えねェしな。」 俺たち生徒会を受け持っているシャンクス先生から受け取った買い出しメモを見ながら、思わず口に出すと、マルコ先輩から返ってきたそんな言葉。確かに俺たちは未成年だから買えないけど・・・たぶん、マルコ先輩と先輩なら、見た目的に買えると思ったから、先生もメモに付け加えたんじゃ・・・口には出さずにそんな事を思っていると、どうやらマルコ先輩も先生の意図を酌み取っていたらしい。こめかみに少しだけ青筋のようなモノがうっすらと浮かんでいるのを俺は見てしまった(うう、怖いよ。)
「あ、マルコ、夕食の買い物も済ませておかないか?」
「ん? あァ、そうするか。」
先輩はマルコ先輩へとそう声をかけると、生徒会の買い出しと分ける為にだろう、もう1つ別のカゴを持ってきて、再びマルコ先輩の隣を歩き始める。先輩のその言葉に、一瞬だけ違和感を持ってしまったけれど、すぐに俺はある記憶へとたどり着いて、会長のその言葉を聞き入れる。ああそうだ、先輩は夏休みの間、マルコ先輩の家に泊まってるんだった。夏休みに入ってすぐの、睡眠不足の所為で会長が倒れたあの、生徒会にとっては大事件であるあの記憶が蘇ってきた。普段はしっかりしているのに、自分の身体の事に関してだけは本当にこの人は無頓着だ。
「・・・野菜は、あったかな?」
「あァ、まだ買わなくていいよい。 ・・・確か、コーヒー豆が切れかかってたな。」
「分かった、取ってくるよ。銘柄はどうする?」
「お前の好きなやつで良いよい。」
「ふふ、了解。」
料理はできるのに、時間がもったいないと言って自分ではほとんど作らないし、終いには栄養補助食品にばかり頼るという暴挙に出るあの会長が、自ら野菜なんて言葉を紡いでくれた! なんて変な所で俺が感動していれば、「やっぱり、マルコ先輩の所に泊まらせて正解だったな。」 なんて隣にいた先輩も嬉しそうに微笑むから、たぶん、俺と同じ気持ちだったんだろう。
結局、この生徒会は何だかんだで一番先輩が大事なのだ。会長の側にいたマルコ先輩も会長の背中を嬉しそうな笑みを浮かべているのを俺はしっかりとこの目で捉える。そんな事を思いながら、笑みを浮かべている先輩2人につられて俺も笑みを浮かべていると、すぐに会長がカゴを携えて戻ってきた・・・のは、良いのだけれど、
「・・・、」
「ん?どうした、マルコ?」
「俺は、コーヒー豆を取ってくるかと思ってたんだが?」
「?? ちゃんとコーヒー豆を取ってきたよ?」
「・・・コーヒー豆の隣に置いてあるこれは何だって訊いてんだよい。」
「? コーヒー豆の隣って、・・・あ、」
カゴの中身を見ると、即座にマルコ先輩の顔がしかめられるのが俺の視界に入ってきた。そんなに苦手なコーヒー豆だったのだろうか、でもそれなら先輩がそんなものを取ってくるはずが、なんて思いながら、遠目からカゴの中身を見てみれば、そこには、マルコ先輩があれだけ飲食するなと忠告していた、栄養補助食品が、(・・・というか、先輩も、今気づいたような、)
「・・・すまない、いつもの癖で・・・スーパーに行くと、ついカゴに入れていたから、」
「ほォ?いつもの癖、ねェ?」
「・・・う、」
言い訳というか、何というか。先輩がマルコ先輩へと必死に弁明を試みようとするんだけど、墓穴を掘ってしまうだけに終わってしまって。身長は2人ともほとんど変わらないはずなのに、何故だか会長の方が、ずいぶんと低く見えてしまうのだから、おかしな話である。マルコ先輩のそれに、何故だか俺まで冷や汗をだらだらと流していると、隣にいた先輩が「やれやれ、まったくあの人は、」なんて言いながら、ため息をついていた。けれど、そのため息の後、すぐに先輩の顔に笑みが浮かべられたのを俺は見逃さなかった。それと同時に、マルコ先輩の方からも、声が聞こえて、
「 ・・・ほら、さっさと返して来い。」
「へ?」
「何だよい。まさか、買うつもりで取ってきたのか?」
「い、いや、それは違うが。」
「なら、返して来いよい。まだ買うモンが残ってんだ。」
そう言って、先輩の背中を押し出すマルコさんの顔に、先程送り出す時よりも、ずっと、嬉しそうな、幸せそうな、俺たちには見せないような、優しい笑みが浮かべられていたから、(あーあ、敵わないなあ、もう。)