「・・・う、ん、」


肌に感じるはずのない寒気を感じ、ぼんやりとしながらもゆるりと瞼を上げる。じわりじわりと焦点の合っていく視界に、俺の身体からえらく綺麗に剥がされた布団が俺の隣に置いてあるのを見て、俺は予定していた起床時間よりも少々早すぎる時間を指している時計を一度見やってから、仕方なくゆるゆると身体を起こした。(・・・今日は、生徒会の仕事は休みだって言ったはずなのに、)


「  ・・・母さん、今日は学校に行かなくても良い日だって、言った・・・」
「お前の親ならもう出かけに行ったよい。それにしても、相変わらず遅ェ目覚めだな。」


俺の布団を俺から引きはがしてまでも起こしてくれた人物・・・母さんへと、俺はまだ眠たい目を擦りながら小言を漏らした、つもりだったのに・・・何故か返ってきたのは、俺の母さんとは比べものにならない程に低い、ここでは聞こえないはずの、けれど聞き慣れた、その声であって。そんな幻聴かと、まだ夢を見ているのかと疑ってしまうくらいの気持ちを抱えながら俺はその目をかっ開いて、なんとか言葉を絞り出した。


「・・・え、 は、? え、な、何で、マルコ、が、??」
「借りたノートを返したら、俺はそのまま帰るつもりだったんだが、」


「昼飯すらも食わずに睡眠に没頭する阿呆息子を世話してやってくれと、親直々に頼まれちまったんだよい。」 母さんが出したのであろうコーヒーを飲みつつ、淡々とそう言葉を放ったマルコは、驚いている俺へと視線を向けること無いままに読書を続けていた。そんなマルコの口から出た言葉に、俺はようやく、今日の自分の寝床の布団の状況に、いるはずのないマルコが俺の家にいるこの状況をなんとか理解し始めて、(・・・というか、)


「・・・母さんは、一体息子を何だと思っているんだろう(・・・しかも何故俺の友人に息子を任せるんだ。)」
「普段の行いの所為だろい。自業自得だよい。」
「う、」


理解をしていくにつれて、ため息が深くなっていっている気がするし、母さんもいくら昔からの付き合いだからとマルコに任せるなんて迷惑になるだろうとか、母さんに押しつけられたのかも知れないけれど、そのまま居残るマルコもマルコじゃないかとか、色々今の状況に突っ込みたい気もする・・・けれど、そんな事をしても今の状況が変わるわけもなく。

そんな俺の思いを分かった上でやっているのか、マルコは俺の言葉をピシャリとはねつけてくる始末で。けれど、言い返す事のできない事実であったから、俺は言葉を詰まらせる事しかできなかった訳だけれど、そんな俺に、ようやく視線を合わせてくれたマルコが、少し呆れたようなそんな色が見えたりしたが、それでも俺の方へと笑みを浮かべて、


「・・・ったく、お前ェは仕方のねェ奴だよい。」
「?マルコ?」


「まァ、任された仕事はしっかり全うするよい。」 俺へと近づいて来たマルコは、寝癖であらぬ方向にはねている髪をゆるゆると撫でながらそんな言葉を放つと、読んでいた本をテーブルに置いて、キッチンの方へと向かった。


「ほら、ぼやけてねェで、さっさと着替えて手伝えよい。」


どうやら母さんに言われた仕事やらを・・・昼食を作ってくれるらしい。再度、俺の方へと視線を合わせて紡いだそんなマルコの言葉に、俺は何だか妙な心地よさを感じながら、それでもしっかりと彼へと返事をしつつ、身なりを整えるために自分の部屋へと戻るための歩を進め始めた。・・・さて、今日の予定が少々おかしくなってしまったが(予定よりも、楽しくはなりそう、だけれど。)

任された仕事はしっかりと

リビングへと舞い戻れば、奥の方からしてきた香ばしいその匂いに、ついゆるりを笑みを浮かべてしまって。