夜も遅く、月明かりだけを頼りに読書をしていた所為だろうか、もう少しで終わりという所だというのに、瞬きの回数が多くなり、視界も徐々にぼやけていくような感覚に陥ってしまう。
「・・・(まあ、もう少しで終わるし・・・うん、)」
つい読み耽ってしまう事は、褒められた事ではない事くらいは分かっているのだけれど、幾度となく繰り返してしまっていたので、俺はそのまま、目の疲れを気のせいだと思うことにして、癖のように読書を続けてしまっていた訳なのだけれど、
「 っ、 え、 へ??」
「・・・ったく、案の定だよい、お前ェは。」
さて、続きを読んでしまおう、そう思いながらページを捲ろうと指を本へと這わせれば、けれどその本が何故だか俺の手から離れてしまって、宙に浮いて。自分の視界に広がる理解の至らない光景に、思わず間の抜けた声を出してしまいながら、手を動かすことすらできず、その本を見ることしかできないでいれば、その本の後ろから、俺の上から降ってきたその声は、
「 ま、マルコさんっ?」
「ん?何だよい、?」
「俺が、どうしかしたのか?」 俺の動揺しているそんな声に、それはもう白々しそうに返事をしてくるマルコさん。集中し過ぎてマルコさんの気配に気づけなかった俺も俺だけれど、気配をわざわざ消して、しかも俺の読んでいた本を取っておいて、どうかしたのかはないでしょう・・・
そう言いかけた口へと、指を寄せて来て、塞いでしまったのも、今俺の目の前にいる、その人で。
「・・・夜更かしは、あまり褒められたモンじゃねェが?」
「う、いや、 その・・・」
「まァ、この新しく買った本を大事に抱えて部屋に入ってった姿を見た時から、大方予想はついてたよい。」
「それでも大目に見て、結構な時間をおいて、寝てそうな時間に来てみたんだが。」 ああ、それで、こんな遅い時間に、 マルコさんのそんな言葉につい納得してしまいそうになりながら、未だに唇に添えられている指をそのままに、言い訳じみた言葉しか脳内に浮かんで来なくて、そのまま身体までもじっと縮み込ませてしまう。夜更かしをしているという自覚は一応持っていたから、余計と言葉が思いつかない。
「 あの、 マルコ、さん、」
「何だよい?」
「その、 夜更かし、してしまって、 ごめんなさい。」
この夜更かしの所為で、眠気を持っているままに朝を迎えてマルコさんに迷惑をかけてしまっている回数も、数回なんてそんな少ない頻度でもないから、素直に謝ろうと、ゆるりと声を発する。マルコさんの片手に携えられている、途中止めになってしまった本に、未練がない訳ではなかったが、それでも、マルコさんに迷惑がかかってしまうのであれば、仕方ない。本は明日でも読める。
「・・・、」
「はい、 何です、っ!?」
自分にそう言い聞かせながら、「あの、もう、ちゃんと寝ますから。」 まるで叱られた子どもが言うような言葉を紡ぎ出せば、また、俺の上からマルコさんのその声が降ってきて、自分の視線を、頭を下げていた俺は、その声に反応して、ゆるりとそれらをマルコさんの方へと向けると、
「ま、マルコ、さん?」
俺の顔に、俺の瞼へと、 唇に寄せられた指のように、ゆるりと、そっと近づいて来たのは、マルコさんの、唇で。
柔らかなその感触が、瞬時に瞼から全身へと駆け巡って、代わりに熱が、集中的に顔へと戻ってくる。思わずそこに手をやって、慌ててしまいながら彼の名を紡いで、間近にあるマルコさんの顔を、咎めるようにして見たというのに、彼の、何故だか楽しそうな笑みは、再度瞼に落とされる唇は、止める意思が全くないように見えてしまうのだから、
「ほら、さっさと寝ろよい。」
「 瞼を下ろせば、自然と眠たくなってくる。」 だからって、こんな方法をとりますか、普通・・・ そう言葉を出せないのは、本当に眠たくなってきたというのもあるかも知れないけれど、きっと、俺が、彼のとってくれているその方法を、俺自身が、(・・・受け入れている俺も、何だかんだで、)