無人島だと思って上陸したその島は、親父さんの知り合いが1人だけで過ごしている島であったようで。海賊であるというのに、大歓迎を受けて島に上陸してそれから数日が経ったある日、俺はいつものようにその家へと出かけた。


「おじいさん、こんにちは。」
「おお、か。 また、あそこに行くのか?」
「はい。あの、お借りしても良いですか?」
「ははっ、なに、構わんよ。 可愛いの願いだ。」


「遠慮せず、寝ておいで。」 笑みを浮かべながら俺の言葉にそう快く頷いてくれたおじいさんへと、俺も笑顔を返しながら、家の隣にある、お気に入りのその場所へと足を向ける。そこで俺の視界へと入るのは、心地よい風を受けながらゆらゆらと揺れる昼寝用の、ハンモック。


「(今日も、気持ちよく眠れそう、)」


太陽が燦々と輝く中、けれどしっかりと木陰が作られているその場所に、俺はごろんと転がった。ふわりと海の匂いを乗せて吹いてくるそよ風に、ぽかぽかと俺の周りを温めてくれるそんな温度に、そんな事を思いながらゆるりと目を閉じれば、これも日課になってしまったように、すとんと意識が沈んでいった。


**


「  、」
「  ん、」
「 、」


何とか耳を通って響いてくる自分の名前を聞いて、自分が寝てしまったらしいということに気づいて。起きぬけの脳内が働くのを待つようにして、瞼を閉じたままにしていれば、「 風邪ひくよい。」 そうやってまた聞こえてきた声に、ふわりと吹いてきている風とは違ったものが髪に触れている感覚に、俺はゆるりと視界に色を映し出して、


「  おはよう、 ございます、」
「ああ、おはよう。」


「因みに、今は朝じゃねェが。」 そう言いながらも俺の言葉に挨拶をしてくれるマルコさん。それからくしゃりと俺の頭を一撫ですると、俺の降りるスペースを空けるようにして側に立つから、俺はそれに応じるようにして、身体を起こしてそこへと降りようとするのだけれど、


「  わっ、 う、」


ハンモックが揺れやすいようになっている所為か、それとも俺が寝ぼけているせいなのか、前の方へと体重をかけ過ぎてしまったようで、身体のバランスを見事に崩してしまい、ぐらりと揺れて、そのまま芝生の上へと顔から飛び込んでしまいかけたけれど、 来るべき衝撃が来ないのは、


「  ふふ、 マルコさん」
「・・・わざとやってるのかい?」


ぼふっと、何かと何かが当たる音はしたけれど、でもそれは俺の顔を芝生がぶつかった音ではなくて。目の前に広がるその色に、先程感じていた心地よい温度とはまた違う、先程よりも温かくて、俺の中へと浸透してくるその温度に、もっと求めるように擦り寄ってしまいながら、ゆるりと頬を緩めてしまう。
そんな俺に呆れるようにしてため息を吐きながら、そう言葉を漏らすマルコさん。そんな事を言いながらも、足の間に居座ってしまっている俺を抱きかかえるようにして、背中へと手を伸ばしてくれるのも、俺の愛しいマルコさんであって、


「  まあ、ちゃんとそれなりの見返りはもらうとするよい。」
「?? あの、  マルコさっ、」


マルコさんの言葉に否定も肯定もしないままに心地よいそれらにまた目を瞑ってしまっていれば、続けざまに放たれたその言葉に、いつもなら聞かない言葉だったから、つい意味を理解せずに聞き返してしまえば、その途中に、ゆるりと俺の口が塞がれてしまって、


「   ・・・マルコさん、」
「ん?何だよい、?」


その唇がようやく離れていって、俺はようやく恨めしげにその名前を紡ぐことができた。けれど当の本人は白々しい顔のまま、でもどこか楽しそうな笑みを浮かべたその顔で、俺の名前を紡ぐから・・・そんな顔を見てしまうと、(俺も結局、マルコさんに弱いから、)


「これで、顔に傷ができるのを防げンだ。安いモンだろい?」


「まあ、お前の寝顔で、それはチャラになってんだが。」 なんて耳元で囁いてくるマルコさんに、俺は彼の胸元に顔を埋める事しかできないのだ。(・・・顔が妙に熱いのは、この島が夏島の所為だ、うん。)

してやられる

いつもの毎日にも、少しの刺激は必要だとは思うけれど、(・・・マルコさんの場合、それが強すぎると思うのです。)