「   ―よっと、」


潮風やら太陽から来る光やらが頬に当たる、とても気持ちの良い天候の中、けれどもうすばらくすると天候が悪くなるらしい事を聞いて、洗濯物を取り込もうと少しだけ自分よりも高いそのシーツやら、服やらに手を伸ばす。


「   、何やってんだい?」
「 あ、マルコさん。」


そんな事をしていれば、後ろから聞こえてきたのはマルコさんの声であって。「天候が悪くなるそうなので、」なんて足先を伸ばしながらマルコさんの言葉にそう返事をすると、何をやっているのか理解してくれたのだろう、マルコさんは俺へと近づいてきて、後ろからその洗濯物をひょいっと簡単に取ってくれた。


「  あ、ありがとうござい、 わっ、」


マルコさんからその服を受け取ろうとしたそんな時、突然に吹き荒れた潮風にシーツがあおられてしまったのだろう、俺やマルコさんに当たっていた太陽の光が唐突に遮られ、あるはずのない影が甲板へと落ちてくる。そこでようやく、俺はシーツの中へとマルコさん共々閉じこめられてしまった事に気付いて、


「 あ、 す、すぐに外しますね。」


別に初めてという訳でもないし、薄っぺらいそのシーツのみで遮られているだけだっていうのに、マルコさんと2人っきりだということに、何故か妙に意識がいってしまって、自分の顔に熱が集中していくのを感じた。若干吃りながらマルコさんにそう言って、そのシーツから抜け出そうと懸命に捲ろうとするのだけれど、焦れば焦るほどそれが中々上手く行ってくれない訳で。近くにマルコさんの熱を感じながらもそれを無理矢理意識から外そうとして失敗しつつも、やたらと大きく感じるシーツをさらに捲ろうと手を伸ばしていると、


「  っ、わ、」


ふわりと、けれど先程シーツを被った時とはまた違う、包まれた感覚に、俺は再度ふぬけた声を上げてしまった。その感覚の後、俺の身体から脳内へと伝わってくるその心地よさに、それから俺はマルコさんに抱きしめられているのだという事を同時に理解して、


「ま、マルコ、さん?」


シーツの時と同様、唐突なそれに俺は彼の名前を呼ぶだけで、離れないと、なんていう考えにすぐには辿り着けなかった。さらに、身体に広がるマルコさんのその体温が、その考えから、むしろ引き離している気がしてならなかった。「   、」 なんて俺の名前を紡ぐその声が上から響いて、上げたら駄目だと脳内で警報が鳴っている気がしたけれど、愛しいその声に誘われるようにして顔を上げてしまう訳で。


「  ん、」


俺の唇を塞いだそれがマルコさんの唇だと理解が至るのに、そんなに時間はいらなくて。けれど、されているその場所が、いつ誰が通り過ぎるか分からない甲板の上だという事に気が付くまでに、俺は相当な時間を要してしまった。啄むような、けれど決して浅いとは言い難い、マルコさんから降ってくるそれを、俺は慌ててマルコさんの胸元に手を押し当てて離れようとするのだけれど、


「ま、マルコさんっ、み、みんながっ、」


当然のように、マルコさんにそれを阻止されてしまって、再度抱きしめ直されてしまう。先程よりも急激に顔へと熱が集まるのを感じながら、息を切らしつつも何とか途切れ途切れに単語を伝える。また流れてくる彼のその温度に、まあ良いか、なんて感情が広がりつつあるのを必死に抑えながら、言葉を伝えているっていうのに、マルコさんは俺のその感情にすら気付いていたようで、


「大丈夫だよい、」
「な、何がどう大丈夫っ、!」


「シーツで覆われてんだ。誰にも見られやしねェよい。」 ゆるりと浮かばせるその笑みに、再び寄せられる唇に、どうやら俺は最後の箍を外してしまったらしい。再度了解を得るように俺の名前を呼んでくるその愛しい声に、「  少しの間、だけですよ?」 なんて言葉を紡ぎ出して、力の入っていたその手を緩めてしまうのだった。

分別をもった行動を心がけて

分かっては、いるのだけれど。(愛しいその人の言葉に、どうも俺は弱いらしい)



title by 赤小灰蝶 / 分別をもった行動を心がけて