「(近道をしようとした俺が悪いんだけど・・・いやでも、)」
「ヒヒッ、お前みたいな整った顔の奴は高く売れるからナァ?」
どうやら賞金稼ぎではなく人攫い屋だったらしく、まあ俺にしてみればどちらも迷惑な事には変わりないのでどちらでも良いのだけれど、それにしたって舐め回すような視線は止めていただけないものかと思う。そしてついでにそこをさっさと退いてくれると嬉しいのだけれど。
「大人しく捕まってくれればお前も怪我しないで済むし、その方が俺達に入ってくる額も上がって好都合なんだけどナァ?」
「・・・生憎、捕まる気はない。そして怪我をするつもりもない。」
「ヒャハハッ!!言ってくれるじゃねーか! 野郎ども、やっちまいなっ!!!」
「了解、ボスッ!!」
奴らの長らしい奴が開始の声を放つと前後左右から攻撃を仕掛けようと俺のいる中心へと下品な笑いを浮かべて走ってくる人攫い達。どうやら戦う以外に道は残ってないらしく、俺は片手に持っている親父さんに任された物を見てため息を吐いた。親父さんを待たせたくなかったから近道をしたっていうのに、目の前にいるこいつらの所為で結局待たせてしまう形になってしまった事にふつふつと怒りを感じて来た俺は気付いた時には周りに寄ってきた奴らを思いきり蹴り上げていた。
「ガフッ!?」
「 っ、おい!?」
「 あー、(やってしまった・・・)」
あれだけ感情に流されるなとマルコさんにもエース隊長にも言われていたのに、親父さんが絡んでしまうとどうも俺は感情が隠しきれないらしい。晩酌をしている時に親父さんにそれを話すと「おれのためなんて、結構なことじゃねェか!!」なんて嬉しそうに言って頭を撫でてくれたのはつい最近のことだったりするのだけれど(俺の顔も壊滅的に緩んでいたんじゃないかと思う。) まあ、手を(足を?)出してしまったからには全員を始末しないとこういう輩は妙に粘着質の所があるからもうどうしようもないのだけれど。・・・しかしそれにしたって、
「(1人にこんなに多くなくても・・・というか長があれだけ弱そうなのにどうやって集めたんだ。)」
類は友を呼ぶと言うけれど、あの類だろうか。そんな事を考えながらも足だけは動かして数だけは無駄に多い人攫い屋達を蹴り飛ばしていく。途中から倒した人数さえも数えるのが面倒になってとりあえず目の前にいる輩達から長の方へと近づいていっていると、別の方向から人攫い屋の潰れた声が聞こえた。(誰か、いるのか?)
「ったく、お前さんは相変わらず期待を裏切らねェ奴だよい。」
「 え、 ま、マルコさんっ!!」
振り向いたその先には少し不機嫌そうな顔をした我が白ひげ海賊団の一番隊長であるマルコさんの姿。彼の通ってきた道にはすでに倒れている奴らばかりでその事にもそうだけれど、何でここにマルコさんがいるのかという驚きの方が勝っていて。マルコさんにもそれが伝わったのか、相変わらず眉間に皺を寄せたまま、俺の真ん前にゆっくりと歩を進めてきた。
「オヤジのおつかいを頼まれたにしちゃ帰りが遅すぎるだろい。」
「近道して何かに巻き込まれてンのかと思って来てみりゃあ、案の定ってわけだい。」 なんて再度深いため息を吐きながら俺の顔を見てくるマルコさん。どうやら思考までもマルコさんにはお見通しだったようで、マルコさんをここまで来させてしまった事に申し訳なさを感じて「・・・すみません、」 と自分でも分かるような沈んだ声で謝罪の言葉を述べると、彼は顔を下に向けている俺の頭に手を置いてわしゃわしゃとそれでも優しく撫でてくれたのだ。
「俺が勝手に迎えに来たんだから、気にすることねェよい。」
「 でも、」
マルコさんはそう言ってくれるけれどそれでも何だか申し訳なくてさらに言葉を続けようと顔を上げれば、そこに近づいてきたのは他の誰でもない、彼の顔であって。それ以上言葉を出す事が出来なかったのも、マルコさんの唇が俺のそれへと落ちてきたからであって。
「愛しい奴の身を心配することは当然の事じゃねェのかい?」
「さっさと始末して、船へ帰るぞい。」 耳元で囁かれたその言葉に、思わず手を自分の耳に押し当ててマルコさんに再度視線を移せば、至極楽しそうに笑みを浮かべたマルコさんはそう言いながら既に人攫い屋の長の方へと歩き出していて。そんなマルコさんの背中を見つめながら、ああ、やっぱりこの人には敵わない、なんてことを再確認して、片手に持っていた親父さんに頼まれた物をしっかりと握りしめて、愛しい彼の、マルコさんの背中を追いかけたのである。
経験に基づいた行動の間違い
残念だな、相手が悪すぎだい。こいつを攫いたきゃ、まず俺を倒してからにしろい。 ま、マルコさん。(そ、そんな恥ずかしいこと、) お、俺達退散しますから、ど、どどうぞご自由に・・・(こいつら強すぎだし・・・・なんか相手しづれェ!!)
title by 赤小灰蝶 / 経験に基づいた行動の間違い