ふとした瞬間、本当に何の事はない、いつも通り穏やかに航海をしている最中に、たまに俺の視界に入ってくるその背中に、抱きつきたくなってどうしようもない時がある。ウソップ達と何やら楽しそうに遊んでいる時、海軍や他の海賊達と戦っている時、朝、彼がいつの間にか俺の隣で寝ている時、・・・こうして考えると、何だかいつもそう思っているような、( ・・・我ながら、なんて恥ずかしい、)


「にししっ、珍しいなァ、がこうしてくるなんて、」


「どうかしたのか?」 けれど、そうやって羞恥心が沸き上がって来ようとも、彼のその背中へと手を伸ばしたくてどうしようもなくなってしまうのだ。その衝動がどうにも抑えられなくて、芝生で遊んでいた彼に抱きついてしまったのがつい先程の事で。


「すまない、遊んでいる所を邪魔してしまって、」
「ん?構わねェぞ!」


「俺もにこうされるの好きだからな!」 そう言って、腹部に伸ばされた俺の腕を自分の腕で包んでくれる。構図から言えば俺が彼を抱きしめているはずなのに、不思議なことに、こうして彼に触れられるといつだって彼に抱きしめられている感覚に陥ってしまうのだ。その心地よさに瞼を閉じて、俺は彼の首元に擦り寄った。


「ふふ、 ありがとう。」
「ししっ、あったけェなァ!」


嬉しそうにそう言うと、彼の背中がさらにぴったりと俺の身体へと密着して、その分また彼の体温が俺の中へと流れてくるのを感じた。俺の腕にすっぽりと入ってしまうその身体が、その背中が、どれだけ大きく、逞しいか、俺はよく知っている。この船に乗っている皆だってそうだ。俺達に何の躊躇もなく預けてくれるその背中が、どれだけ俺達にとって大切で、かけがえのない、


「? ウソップ、どうした?」
「ん?何だ、ウソップ?混ざりてェのか?」
「・・・いや、俺は遠慮する。」
「??」
「いやな、相変わらず、はルフィが大好きだよなーなんて思っただけだ。」


「見てるだけで、こっちまで腹がいっぱいになる。」 目の前で俺達の様子を見ていたウソップが呆れたような声音でそんな言葉を紡いだ。・・・やっぱり、そんなに分かりやすいくらいに顔が緩んでいたんだろうか、と思いながら、ルフィの腹部に持って行っていた手を自分の頬へと滑らせていると、「おー、ルフィに関しちゃ、の顔は緩みっぱなしだぞ。」 なんて、答えが返ってきて、思わず苦笑してしまった。(・・・こればっかりは、言われてもどうしようもないからなあ、) 

なんて、そんな事を思っていれば、 


「っ、 ル、フィ?」


その一瞬に、後ろから覗き込むようにして見ていた彼の顔が、俺の真ん前に来ていた。急な衝撃で芝生へと背中を倒してしまいながら何とかルフィを受け止める。不意の展開に驚いてしまって、彼の名前しか呼ぶことができなかったのだけれど、目の前に広がった彼の顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた事だけは分かって。そんな俺の声に、俺の背中へと伸ばした手をぎゅうっと強くした彼は、


「にししっ、やっぱり俺、こっちの方が好きだ!」


「こうすれば、の顔をよく見えるしな!」 俺の身体へと倒れ込んだルフィは嬉しそうに笑いながら、ぐりぐりと俺の首元へと顔を擦り寄せてきて。・・・本当に、我らが船長は。紡がれた言葉を理解した途端、温かいものが身体中を駆け巡って、自分でも呆れてしまう程に、俺の顔はウソップの言った通りになっていって、


は、どっちが好きだ?」


俺の方へとゆるりと顔を上げて視線を合わせてきたルフィからそんな問いが放たれる。その背中に引き寄せられるように彼の方へと手を伸ばしたはずなのに、彼にそうやって訊かれて考えてみれば、きっと普段の俺は、意識は全くしてないけれど、 「 ルフィが俺に触れてくれるなら、俺はどっちも嬉しいけれど、」


「 ふふ、そうだね、俺もこうして向き合う方が好きだよ。」


君の嬉しそうに笑うその顔が俺の視界にめいいっぱいに広がっていると、俺も嬉しくて仕方なくなってしまうから、

きらきら、きらきら、太陽の人

「にししっ!俺、の笑ってる顔、すっげェ好きだなァ。」 なんて、嬉しそうな色を乗せてルフィは言ってくれたのだ。



title by Lump / きらきら、きらきら、太陽の人(Middle)