甲板から海を眺めていれば・・・余程入りたそうに見ていたらしい。いつの間にか俺の隣に立っていたロビンに「これがあれば、あなたも入れるわよ?」 なんて言葉と一緒に少し大きな浮き輪を差し出されたのはついさっきの話だ。そしてそんな彼女の言葉に誘われて浮き輪と一緒に海の中へと飛び込んだのが、今の話なのだけれど・・・
「・・・あー、ルフィ?」
「ん?何だ、?海は冷たくて気持ちいいなァ!!」
「そう、だね。うん、海は冷たくて、気持ちいいんだけど、」
「??どうしたんだ?」
俺が若干戸惑いながら放ったその声に、不思議そうに返事をするルフィの声がひどく近くで聞こえてくる。その声からしてどうやら今の状況に全く違和感を持っていないらしい。彼も能力者だからもちろん浮き輪が必要で、だからその浮き輪の距離の分だけ離れて彼の声が聞こえてくるはずなのだけれど・・・まるで彼が俺に抱きついてくれている時と全く変わらないような距離で彼の声が響いてくるのは、
「・・・この浮き輪は、確か1人用だった気がするんだけれど、」
「違ったかな?」 甲板でルフィと俺を楽しそうに眺めていたロビンへと声を掛ければ、けれど俺の期待した答えは返ってこなくて、「そうだったかしら?」 なんて言葉が紡がれてしまう。2人にそんな反応をされてしまえば、この状況に違和感を持ってしまう俺の方がおかしいのだろうかと思えてきてしまって。この、ロビンがくれた浮き輪の中に俺とルフィの2人が入っている、そんな状況を、
「ルフィは苦しくないのかい?」
「ん?そんなことねェぞ?」
1人用とはいえ、若干大きくできているその浮き輪。けれどやっぱり2人で入るには窮屈で、ぴったりと2人の身体をくっつけてやっと腕が動かせる程度だった。その事に案じれば、けれどルフィは気にならないようで。浮き輪なら確かもう1つあったはずだからロビンに持ってくるように頼んでみようかとも提案したのだけれど、何故かその案も却下されてしまう。
「ルフィは海で遊びたいんだろう?」
「おう!そうだぞ!」
「なら、やっぱりもう1つ浮き輪を、」
「それは駄目だ!」
「俺はとこうしてるのが良いんだ!」 こうなったルフィを誰も止める事はできないし、それに俺だって、
「海も気持ちいいけど、とこうやってるのも気持ちいいんだ。」
「だから、浮き輪はいらねェ!」 彼にそんな言葉を言われてしまえば、止めようがなくなってしまう訳で。脳内にあった違和感はとっくに消え去り、彼の言葉に嬉しさばかりが溢れてきてしまうのが意識せずとも感じられた。
彼の一言でそうなってしまう自分にずいぶん現金だな、なんて思いながらも、それを思うだけで止めてしまって顔が緩んで行くのが事実で。そして、もう少しこのままでも良いかなんて思いながら、浮き輪の上に出していた手の片方をゆるりと彼の背中へと伸ばして、「ルフィ、」
「もう少し、こうしていても良いかな?」
なんて言葉を紡いでしまうんだ。(返ってくるその言葉を期待してしまいながら、)
青の展望
・・・ロビン、 どうしたの? あいつら、何で1つの浮き輪に窮屈そうに入ってんの? ふふ、ああやっているのが楽しいみたいよ? ・・・そうね、普通の答えを期待した私が馬鹿だったわ。 ・・・つうか、あいつらどうやってあの浮き輪から抜け出すつもりなんだ?
title by Lump / 青の展望(short)